376話
おやすみほちい(っ´ω`c)
「さってさって気合入れていきますかね」
潜る前にダメージを受けたが、久しぶりのダンジョンだ。
アマツのげろ不味素材でパワーアップしているし、実に楽しみである。
ああ、レベルも上がったからカードのほうもちょっと変わっていたりする。
今まで使っていなかったシーサーペントのカードを追加でいれてあるよ。
龍化した時の見た目は……あんまり変わっていないなあ。ちょっと甲殻に艶感が出たぐらい? クロにいたっては本当に毛艶がよくなっただけだ。
液体操作自体は結構使える効果なので、次の階層次第で活躍してくれると思う。
もし液体が存在していなくても自身の体液や、なんなら敵の体液だって使おうと思えば使える……クロの場合はどうすんだろうな。吐き出した濡れ毛玉を敵にぶつけたり? 精神的なダメージはでかそうだ。
「あの顔色の悪いおっさんはもう出てこない訳だけど……次も人型なんだろうかね」
心折れちゃったしね。
仮に復活していたとしても、毛玉シュートでもっかい心がぽっきりいきそう。
おっさん以外はぶち切れそう。
んま、冗談はおいといて。
おっさん並みの相手が出てくるのは間違いない……一人? 一匹? ならレベル上がったのとアマツ素材のおかげで何とかなりそうな気がするけれど、複数相手にすると相当きっついだろうなあ。
カグツチの効果全開で戦えば勝てるとは思うが、繰り返しの戦闘は……正直しんどい。
……とりあえず先に進んでから考えるか。
「城……というかなんというか」
警戒しながら階段を下りていく。
進んだ先に待ち構えていたのは、巨大な城の内部……というか、城の中に城がある? 見える範囲だといくつかの建物が入り組んだ多層構造に感じる。
縦方向にも伸びているので、かなり迷子になりそうな予感がするぞ。
「豆でも撒いてくかあ……っ」
豆なんて持ってないけどな。
でも何かしら目印になるものがないと、本格的に迷子になりそうな予感がする……と、どうしたもんかなあと思っていたら、自分たちがいる地点から少し行ったところにある曲がり角。その先から何かが近づいてくるような気がした。
というか視界に何かがちらちらと映りこんでいる……アマツの素材効果かこれ。
何にしろここはダンジョンの中で、俺たちに近づいてくるものがいる……つまりは敵だ。
出会い頭に斬りかかろう。そう心に決めた俺は手でクロに合図を送り、なるべく気配を殺しながら曲がり角へと近づいていった。
クロは眠そうに欠伸をしながら俺の後をついてきた……もうちょっと気合いれてこうぜっ。
「む」
……てっきりさ、俺はおっさん2号が現れんじゃないかなーってなんとなく思っていたんだ。
前回はやたらと顔色悪かったから、今度は異常に血色の良いてかてかしているおっさんとかそんなの。
曲がり角からひょこっと上半身だけのぞかせるように姿を現したのは、かなり可愛い……いや、どっちかというと美人かな?
とにかく容姿の整った女性だった。
それに出てきた際のポーズとか表情がなんというかすっげえあざとい感じのやつ。
こう、名前呼ばれて振り向いたらおまたせ(⋈◍>◡<◍)。✧♡って語尾にハートつけてきそうなの。
「ぶぎっ」
その敵意のない現れ方をみて、普通の人ならきっと手を止めていただろうなとは思う。
でも初めての階層でしょっぱなのエンカウントだったこともあって、俺はそいつの顔面に戸惑うことなく半ば右手と融合した武器を思いっきり叩きつけていた。とりあえず倒してから考えれば良いかなって。
てかこいつくっそ硬いな。
めきょってめり込んではいるけど、切断できていない……おっさんだったら真っ二つになっていたはずなんだが。
「土蜘蛛」
通常攻撃がだめならこいつの出番だ。
いつの間にか背後に回ったクロが、敵の膝裏を斬りつける。
切断はされなかったが、ガクリと膝を付き動きが止まったところに俺は土蜘蛛を全力で振るった。
「あぎっ!?」
敵は避けようとした……が、おっさんほど動きは早くなく、左胸あたりから先を大きくえぐることが出来た。
おっさんが速さ重視だとしたら、こいつは防御よりなのかな?
左腕は胸と一緒にえぐりとった。
俺は残った右腕を踏み砕き。止めを刺そうと腕を振りかぶったところで……視界の端に何かがみえた。
反射的にそれに向かい切りつけると、何かが四散していくのが分かった。
敵はそれを見て驚き固まっているようだった。
おそらくあれはおっさんが放った不可避の一撃……あれに類するものだったのだろう。
食らっていればかなりのダメージを受けていたはずだ。
げろ不味かったけれど素材をくれたアマツには感謝しなければいけないな。げろ不味かったけど。
とりあえず敵が再起動する前に……斬り付けるのがダメなら突き刺せば良いと。切っ先をぐさっとやった上で衝撃波を乱れうちする。
「……やったか?」
原型がなくなった状態でフラグを立ててみるが……敵が復活する様子はない。
不意打ちできたこともあり、初戦は無傷で勝利を収めることができたようだ。
幸先は良いが、次からは敵も油断していないだろう。
逆に不意打ちを受けないようより注意して先に進まねば。




