「363話」
とりあえず悪化はしておりませぬ(´・ω・`)
「で、どうしたので? アマツさんがダンジョン外に出るなんて珍しい」
「一つやることがあったんだけど、焦ってたせいで忘れちゃってね!」
粗茶ですが……と粉の量ミスって大分濃くなった珈琲をさしだすと、アマツさんは躊躇することなく飲み干した。
そしていつも通りやたらと高いテンションで我が家を訪ねた理由を話すが……いや、なんかいつもと若干様子が違うな?
よくみたら目の下にクマが出来ているし、やたらと目がギラギラしているし……相当お疲れのようだ。
さっきから視界の端にちらちらとこちらの様子を伺う生首×2がうつっているが、アマツさんの心労を考えるに箱か何かにしまっておいた方が良いかも知れない。
近付く素振りをみせたらそうするとしよう。
で、それはさておき。
「やること……嫌な予感がするんですが、気のせいですか?」
「はははっはぁ!!」
妙なテンションに嫌な予感が増していく。
ダンジョン関連のことだとは思うけれど……なんだろうなあ。
生首引き取るの忘れていたよ! とかだったら嬉しいけれど、それはまず無いだろうし。
「さて、島津くんとクロにはこの中から一つすきなアイテムを選んでほしい」
なんだろうなあと考えていると、テーブルの上に大量のアイテムが並べられていく……どこから出したとかは考えないでおこう。
出てきたアイテムは様々だ。武具だったり、何かの服やアクセサリー……あとは宝飾された箱など。中にはぱっと見で何なのか分からないものもある。
「ん……あ、もしかしてドロップするはずだったアイテムとかです?」
もしかすると次の階層以降は敵を倒すことで素材ではなく、こういった宝箱の中身みたいなものを入手できるのだろうか。
……そういやここしばらく宝箱を見かけていないが、色々あって聞くの忘れていた。
「……良く考えたらあいつ倒しても素材剥ぐ訳にも」
「そう! ドロップ予定のアイテムだよ!! ……本来であれば、だけど」
剥ぐ訳にもいかないし、宝箱とか落とすようになるんですかね? そういえば最近宝箱を見かけていませんが……と聞こうとしたら、途中で思いっきり遮られた。
そして急に表情をなくしたアマツさんをみて、聞き直すタイミングも逃してしまった。
がっでむ。
「……本来なら彼のコレクションの中からランダムで初回撃破時は確定でドロップ。それ以降は極低確率でドロップすることになっていたのだけど……ちょっとこれ以上島津くん達の相手をさせると本当に再起不能になりそうでねえ」
「おぉ、わりとえぐ……くはないか?」
俺たちに出会うたびに切り刻まれて、コレクションまで持っていかれるとか可哀そうに。
切り刻むのやめないけどさ。
「ま、そこはどうにかするよ……それで、今回は彼の不正に気付かなかった詫びも含めて、好きなのを一つ選んでね!! 彼のだけじゃなくて、こっそり私のも混ぜておいたからよおっぉぉおおっっく選ぶんだよ!!」
「なるほど。そういうことならありがたく頂きます」
アマツさんってば太っ腹ぁ!
てかこれアマツさんの混ざってるって結構やばくないか? はたして人の身で受け取っても良いものなのかどうか……外したらアマツさんいじけそうだし、あてたら生首に今以上に粘着されそうな予感がしなくもない。
いろんな意味で当てても外しても微妙な気持ちになりそうな予感がしてきたぞっ。
……まあ、無難にぱっとみ良さそうなの選んどきゃいいか。目印ついている訳でもないだろうし、どれがアマツさんのなのかとか選ぼうとして選べれるわけもなく。
逆に言えば避けようとして避けられるわけもなく……ひどい。
「…………なんかコレクションっていうだけあって、なんか良さそうなのありますね。良く分からないのもいっぱいですが」
「そうだろう? そうだろうとも!」
なんで嬉しそうなんですかね……。
「…………」
てか、あったよ。アマツさんの。
ご丁寧に本人のレリーフ彫ってある箱があったよ。写真とかじゃないだけまだましだけどさ……絶対えらばんどこ。
箱は除外するとして、どれを選ぶか……無難に武具とかにするか、それともちょっと変わったものを選ぶか……?
箱から目を背けつつ、適当に手に取り眺めてると……ふと、妙に柔らかい物に手が触れた。
「ん、これ―――
妙につるりとして、湿った感触。
全体的に黄色く濁った白色をしていて、一部黒い部分がある血走った球体。
手の平で転がした拍子に目が合った。
―――っそおおいっ!!」
全力で生首方面に投げ捨てた。
びちゃりと濡れた音、それに「おうっ」という生首の声が聞こえた気がするがそんなものはどうでもよい。
明らかになまものが混ざっているんですが。
え、コレクションかい!? このなまものが??
「お、それを選ぶとはお目が高い!!」
「選んでねーよ!? なんで眼球が混ざってやがりますかこの野郎!!?」
これがコレクションとかあの男ろくでもねえな!
やっぱ切り刻んで焼き尽くして正解だったよ!
「それはね、なんと彼の眼球だよ!」
「頭おかしいんじゃねえのかなあ!?」
ちげえわ! あの男のコレクションじゃなかったわ!!
自分の眼球コレクションする奴なんか居ないだろうし、居てたまるかって話だし。
これ用意したの絶対アマツさんだよ! おかしい!
「落ち着いて! 用意したのにはちゃんと理由もあるんだよ!!」
「理由……?」
一体全体どんな理由があるというのだ。
仮にも知り合い? の眼球をプレゼントしようとか、そんな理由俺にはとてもじゃないが想像できない。
「ほら、今までの相手は全て素材が取れただろう? それなら彼からも素材とれないとおかしいじゃないか」
「確かにそうかも知れないけれど、まったく嬉しくないんですが!?? てか理由それだけかいっ!」
やべえ、やべえよ。
徹夜続きで頭おかしくなったんじゃないかこの人。
てかむしろこれ本当に本人? 生首が化けてたりしないよな??




