「359話」
ちょっと短め
年明け早々風邪うつされたよっ
「生えるってどこから……?」
「どことは?」
怪異といっても様々な種類がいる。
それによっては大惨事となり兼ねないので生首へと聞いてみるが……分かっていないのか、それとも気にしてないのか、キョトンと首を傾げるばかりである。
てか器用に上下に重なるんじゃねえ……もう一つ重ねたら消えたりしないか……しないよなあ。
「側頭部から生えたりとか、目から生えたりとか、首の付け根から腕が生えて火星人みたいになるとか、さっきのアマツさんみたいになるとか、生えるといっても色々あるべ」
「だから君は私の事を何だと思ってるんだい……? まあ私としてはどうなろうが構わないのだけどねっと」
俺が何を聞きたいのか理解した生首は不満そうに頬を膨らませる。
だがたいした気にしてはいなかったのか、すぐに元の顔に戻るとその場でぴょんっと軽く跳ね……そして下段の生首と、粘土の塊をぶつけ合ったかのようにくっつき、やがてグネグネと蠢いて一つの塊へとなっていく。
肉塊は徐々に元の生首の姿へと戻っていき……そして腕が生えてきた。
首の断面から真下に2本。
「うわ」
「君、いま本気で攻撃しようとしなかったかね??」
ビジュアルが最悪過ぎるにも程があらあ。
ぱっと見だけでもやばいのに、それがヒタヒタとこっちに向かってくる様子なんざもうホラーでしかない。
そりゃいくら俺だって思わず斬り掛かっちゃうってもんですよ。俺は悪くねえ。
むしろ寸止めしただけ偉いと思うんだ。
「一応私も君の世話になっている訳だからねえ……良いだろう。希望はあるかい? 出来るだけ添うようにしようじゃないか」
とりあえず生首……? から距離を置き少し落ち着いたところで、生首はその場に腰を下ろすと……腰ないけどさ。てか座る動作がやべえよマジでやべえよ。
さっきから全身に鳥肌立ってるのがよく分かる。
希望に添う……? それならいっそのこと。
「ああ、野に放つのはやめておくれよ? そんなことされたら私はきっと……君に捨てられたと泣きながらご近所を練り歩くからね」
「まじで洒落ならんからやめてくれ」
頭の中読まれたか??
こいつの場合はまじでやりかねんからな……さてどうするべ。
対消滅はダメ、放逐もダメ、二つよりは一つになった方がまし……?
「せめてぱっと見は人と認識できる状態になってくれ、まじで頼む……」
無理に生首形状にしようとすると、表と裏どちらも顔がある……とかなりそうだし、もうね妥協するしかないと思うのですよ。
「つまりは……ああ、そうならそうとはっきり言えば良いのに。安心すると良いちゃんと胸はあだっ!?」
「この色呆け生首がよぉ……」
あんまアホなこと言い出すもんだから、思わず柄の部分でゴスッとやっちまった。
その手のことはアマツさんにやってくれ……滅茶苦茶嫌がられるだろうけど。
と、まあ色々あったその翌朝。
「あー、結構降ったなあ」
一晩降り続けた雪が膝丈まで積もり、俺は雪掻きに精を出していた。
クロ? ストーブの前で丸まってるよ。
生首は結局どうしたかって?
……解決策が出ず、とりあえずは生首二つのまま現状維持ってことになったよ。
一つにまとめて、前のアマツさん状態にも出来はしたんだけどさ、あれだとまあ一応は見た目が人っぽくなるんで……あまり遥さんに見せたくは無い状態になってしまう。
それなら増えた方がましとなったのだ。
いっそのこと中村に押し付けるってのもありかも知れんが……中村の家に置いとく訳にもいかんしな、難しいだろうなあ。
ま、今は考えてもしゃーない。
とりあえず雪掻き終わらせよっと。
「ブレスで溶けないかなあ……ん?」
庭一面をやるとなると結構な雪の量となる。
ブレスで一掃できたら楽なのになあ……と思いながらスコップをせっせと動かしていると、視界の端に何かが映る。
「……」
それはふよふよとした宙に浮かぶ半透明の人型であった。
何度か瞬きをしても消えることはなく、それは確実にこちらを視て、ゆっくりと近付いてきていた。
それが何なのかは分からない。
ただろくなもんじゃない予感はする。
ブレスを吐くか、それとも斬り掛かるか。
ダンジョンに逃げるならクロを抱えて行かないと、生首を投げ付けて時間稼ぎ出来ないか……?
「む?」
等と対応を考えていると、そいつはふと真横……家の方へと視線を向けたかと思うと、うわって感じで顔をしかめてどこかへと飛び去っていった。
「……何だったんだ、あれ?」
正体が何なのか気にはなるが……今すぐダンジョンに逃げ込んだ方が良いのは間違いない。
いつまた戻ってくるか分からんし、有害だった場合は不味いことになる。
無害だったらあとでごめん! って謝ろう。




