「340話」
「とりあえず飯食いますか。新しい施設できたんでそこお勧めですよ」
「新しい施設ですか……? 行ってみましょう。皆もそれで良いか?」※意訳
腹が減ってはなんとやら。
空腹を抱えた俺たちは腹を満たすべく新たに出来た施設である茶店へと向かった。
こう、全員が胴着姿だと雰囲気とあっている気がするね。
道場帰りの門下生が帰り道に買い食いするみたいな……まあ実際その通りなんだけど。
「おつかれー」
一軒の茶屋を丸ごと貸し切り、それでも入りきらなったものは軒先に縁台を並べ座り込む。
みんなの前に並ぶのは各々が好き勝手に買ってきた食い物や飲み物である。
蕎麦だったり、寿司だったり、揚げ物もあればどう見ても酒のつまみにしかならいのもあるが……いずれも共通していえるのはやたらと量が多い。みんな腹ペコなのだ。
「ん……それ酒では……どこで売ってました?」
蕎麦を一口、そしてぐいっとお猪口をあおったお義父さんをみて、お義兄さんさんがそうたずねる。
ちなみにお義兄さんが手に持つのはお茶であり、酒ではない。
「いや、そこの蕎麦屋でな。酒はないか? と尋ねてみたのよ。これだけ酒のつまみがあるのに、飲めぬのは酷というものではとな」
「なるほど……では私も貰ってきますか」
そういうとすっと立ち上がり、蕎麦屋のほうへと向かうお義兄さん。
お酒を飲んでいるところ見たことなかったけれど、お酒好きなんだろうか。
……そういや遥さんもお酒かっぱかぱ飲んでたな。一家そろって酒飲みなんだろうか。
てか、蕎麦って酒のつまみになるんだね……実際おいしそうに飲んでるから合うんだろうけど。
「どれ、婿殿も一杯……」
おっと、じっとお義父さんの手元を見ていたらお猪口をすっと差し出されてしまった。
……どうしよう。一応まだ未成年なんだよな俺。
勧められたからには飲んだほうがいい気もするけれど……まじどうしよう。
「っと、そういえばまだ未成年だったな」
どうするか悩んでいたら、未成年だったことを思いだしてくれたようで、そういうとお猪口に入っていたら酒をくっと飲み干す。
てか、俺が未成年って話が聞こえたのか、周りの人らがぎょっとした表情でこちらを見てくるんだけど。
どういう意味だ……?
まあいいけどさー。
「はい、なので今はお茶で我慢です」
「飲めるようになるのを楽しみにしているぞ」
にっと笑みを浮かべるお義父さんに俺も笑みを浮かべてかえす。
これはあれだな! もう遥さんとのことは認めてくれたと考えていいよねっ?
あとは気合でお義父さん酔いつぶせば完璧じゃろ。うっしゃうっしゃ。
「焼き鳥も貰ってきましたので皆さんもよければ」
一人こっそり気合入れていると、酒を取りにいってたお義兄さんが戻ってきた。
ついでにつまみも追加してきたようで、直径1mぐらいありそうな器に山盛りになった焼き鳥をごとりと縁台におく。
……いや、多すぎじゃね? まあ周りの人が一斉に群がってきたから食いきれるとは思うけど。
それよりもだ。
「ずいぶん渋いの選んだな」
「うまそうだったので」
俺が聞く前にお義父さんが先に聞いたけれど、お義兄さんが持ってきたお酒はあれだ。映画とかでたまに見る瓢箪にお酒入ったやつだ。
……うん、実際喉を鳴らして瓢箪から酒を直飲みする姿はとても美味しそうに見える。
酒を飲まない俺からみてもそうなのだから、普段から酒を飲む人からみたら余計美味しそうに見えるだろう。
その証拠にみんな焼き鳥片手に酒を調達しに行き……大量の酒を抱えて戻ってきた。
……ちょっと多すぎる気がしなくもない。一人当たり一升ぐらいないかこれ。お義父さんの徳利も妙にでかいしさ。
大丈夫? 全員刀持ってるし、べろんべろんになって刃傷沙汰とか洒落にならんぞ?
「……」
飲み食い始めてから1時間ぐらい経っただろうか。
あれだけあった焼き鳥は全てなくなり、お替りしてきた焼き鳥もすでに残り半分をきった。
そしてなにより空になった酒瓶やらの数が尋常じゃない。
一人当たり一升どころじゃない量飲んでる気がする。なのに誰一人酔いつぶれていない。
アルコールはレベル補正貫通するはずなのになあ……なにこれぇ。
「ちょっとご飯もらってきます」
みんな酔いつぶれたらしっかりご飯食べようと思ってたんだけど、一向につぶれる気配がないのでさっさと食べることにした。
おかずは……焼き鳥だな。
豚串、もも、ぼんじり、つくねにレバーなどなど、ご飯にタレをかけて、海苔をちらして焼き鳥を乗せれば焼き鳥丼が完成完成する。お手軽でおいしいやつだ。
たぶんほかにも食いたいって人が出てくるだろうから、複数用意してもらって……あとは串外すように蓋も貰っておこう。
「あ、焼き鳥どんいいなー……え、いいの?」
「実は何個か頼んであるんで」
「ありがとー!」
蓋で押さえて焼き鳥を串から外していると、遥さんが食いついてきたのでスッと丼をわたす。
あとは自分の分を用意して……いや、みなさんそろってこっち見ても困るんですが。ご飯はそんなに用意してないんだよっ。
「いまは24階ですね」
「私はもうすぐ20階かなー」
結局全員が焼き鳥丼を食うことになり、食い終わったところで食後の茶を飲んでいるとダンジョンの到達階層の話になった。
俺と遥さんの到達階層を聞いてみんな唖然としてたよ。
まあ、世界的に見てもトップレベルで深いところ潜ってるから当然っちゃ当然だけどなっ。
ぐふふ。
んで、俺と遥さんは置いといて。
ほかの人たちはどのあたりの階層で活動しているのかなーと聞いてみると、5~10階と意外な答えが返ってきた。
あんだけ斬り合うの大好きなんだし、てっきりダンジョン攻略もバリバリ進んでいるかと思ったらそうではなかった。
「最初は良いんだが、数をこなすのがきつすぎてなあ」
「レベル上げはまだましだが、カードやらは本当出なくて心が折れる」
「なるほどねえ!!」
なんでじゃろな。と話を聞いていくと数をこなすのがきついという答えが大半だった。
……まあ、うん。きついよね。
カードのために周回するとゲロ吐きそうなぐらいきっついし。その気持ちはとてもわかる。
「こう、強い敵と戦うのは問題ないんだ……」
「楽しいしな」
「うんうん!!」
よくダンジョン攻略を辞めちゃう人の理由になっている、敵と戦って怪我したり云々は問題になってないようだ。
その辺りは斬り合うのが好きなだけあって、さすがだね。
「何度も挑戦してやっと勝てるレベルの敵が出てきて、倒せたらレアアイテム貰えるとかだと良いんだけど」
「ゲームのユニークモンスターみたいのかな!!?」
「いれば嬉しいけれどそんな敵いないしな……」
「……さっきから何こっそり会話に混ざってるんですか。アマツさん」
なんかさっきから声でかい人おるなーと思ってたんだよ。
アマツじゃないんだし……って思ってたら、まさかの本人だった。
何しにきたんだろ。
暇なのかな?
ハセストの焼き鳥弁当おいしい('ω')でも昔からみると大分値上がりしちゃってるので、ちょっと手が出し難く……。




