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家の猫がポーションとってきた。  作者: 熊ごろう


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「288話」

中村が葛篭に手を掛けた瞬間。

がばっと蓋が勝手に開き、中村の上半身を飲み込む。


そのまま葛篭は咀嚼するようにもごもごと動いていたが、急にびくりと身を震わせたかと思うと、ぐったりとしてそのまま動かなくなる。


よくみると葛篭の上面から刀の切っ先が飛び出ていた。

中村が中から突き刺して倒したようである。


ちょっと予想通り過ぎて助けにいくの失念してたわ。

たぶん北上さんもだろう。


「さて中身はーっと」


そして食われかけた中村はというと、何事もなかったように葛篭の中を漁り始める。

ちょっとこの反応は予想外だったなっ。


「おっ、防具じゃん……なんだろこれ。半纏?」


半纏って防具なのだろうか。

どっちかというとただの防寒具な気がするけど……そう思い、中村が葛篭から引っ張り出した半纏をみてみるが、どうも半纏とは違う気がする。


なんだっけ、武将とかが羽織ってるようなやつ。あれだよあれ。


「たぶん陣羽織……どこかでみたような気がする」


そうそう、それ。俺が言葉が思い浮かばずに無言でいたら、北上さんが正解を言ってくれたね。

意外というかなんというか、北上さんこの手の結構詳しいよね。俺たちが知らなさすぎな可能性もあるけど……ぼそっと最後に呟いた言葉を聞くに、実物も見た事あるってことなのかな。


「せっかくだから中村つけておけば?」


「ん、いいの? わりーな」


せっかく自身を犠牲にしてアイテム獲得したんだしね。

それに、どうも運が悪いのかなんなのかこのダンジョンでは中村が被弾することが多そうな気がするし、中村がつけておいたほうが良いだろう。


陣羽織は見た目はかなり立派だね。

色もちょっと派手だしわりと恰好良い……まあ、ひょっとこのお面で台無しになってるが。


その後も俺たちは順調に道を進み、ついに次の階層へと続く階段を見つけていた。

時間でいうと2時間経過したあたりかな? 術を覚えるのに手間取ったからこれだけ掛かったけれど、そうでなければ1階層あたり1時間もあればいけそうな気がする。慣れればもっと早いかもね。


「んじゃ、進もうか」


「おうよ」


「おー」


地図を確認するともうすべての部屋を回っていたようなので、軽く休憩をして次の階層へと進む。


ダンジョンの見た目が変わるかと思ったが、特に変わった様子は見られない。

何階層か毎に変わるタイプなのか、それともこのままか……まあ、進めば分かってくるだろう。


「なんだかんだで結構そろってきてるな」


そう話す中村の言葉に「そうだなー」と返す。

薬草、毒消し草、火柱の術の巻物と結構使えそうな消費アイテムも追加で入手しているし、それになにより装備が充実してきている。

ちなみに火柱の術は、名前の通り任意の場所に火柱を出す術だったよ。

火柱を出してのっぺらぼうを蹴り入れてみたら、ごりごりHPが削れていったので割と威力は高かった。

でも素早い相手にはあてるの難しそうな気がするし、デカ物の足元に発生させて使う感じかなー。きっと良い感じにHPを削ってくれることだろう。



「えーと、打刀一つの槍が一つ、胴丸が二つに、陣笠も二つだっけか。そろそろ島津用の武器もほしいよなあ」


「確かに」


中村が指折り数えたように、武器も防具もかなりの数を入手した。

武器が少なめのため俺はまだ素手だが、防具は一応全員一つはつけている。

ちなみに俺と北上さんが陣笠っていう頭防具で、クロと太郎が胴丸っていう鎧だね。


最初はクロと太郎が防具を装備できるか不安だったけど、いざ装備しようとしてみるとその体に合わせてサイズが自動で調整されたので問題はなかった。

あと自分で着なくても、勝手に装備されるタイプだったので手間も掛からなくて助かった。

こう、ひゅっと消えたと思ったら、次の瞬間にはクロと太郎の胴体に装着されてたんだよね。便利便利。



さて、それで2階層に来た訳だけど、最初の部屋に敵は見当たらなかった。

なので俺たちはなるべく慎重に廊下を進み、そして次の部屋へと出る。

そこもガランとした部屋で、敵もいないしアイテムなさそうだな……。


「おお! あれ、鎧だよな? すげー、武将とかがつけてる、やつ……じゃん?」


と思ったら、部屋のすみっこに鎧一式が、鎮座するように置いてあった……のかな?

中村が首を傾げているが、俺もちょっと疑問が浮かぶ。


「あれ、装備だと思う?」


「いやぁ。びっみょー……」


俺の質問に対して、言葉を濁す中村。

例のゲームをやった人なら知っているかもだが、こういう鎧を着た敵がいるんだよね。

鎧をみるに、袴? 部分はぺちゃっと地面に着いていて、中に何かあるようには見えないが……中身が骨とかだったら、あのようになっていてもおかしくはない。

それに鎧だけじゃなくて刀があるってのがねえ……おいてあるのは鎧の右手あたりだ。腰にさしている訳じゃないんだけど、やっぱ武器があると警戒するよね。


「なんかあったらフォローよろしくな」


さてどうするかなと考えていると、中村がそういって鎧に近づいていく。

今日の中村は積極的だなっ。骨はひろってやるぜ。



慎重に中村が近付いていっても鎧は何も反応を示さない。

もしかして本当に鎧だったのか? そんな考えが頭を過るが……中村の手が鎧に触れるかいなかといった瞬間、鎧が動いた。


右手で刀をつかんだかと思えば、逆手で抜いてそのまま中村に切りつけたのだ。



「わりい! 避けられんかった!」


切りつけられると同時に、鎧から距離をとる中村であったが、頭上を見れば中村のHPバーが残り半分を切っていた。

中村も警戒はしていたので、とっさに飛びのいたが……躱しきれなかったのだ。


警戒していなかったら、今の一撃で死亡判定が出ていた可能性もある。

まじで次の階層から敵強くなっとんな、おい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ローファンは余り読まないのですが、他小説が面白かったので読んでみたらとっても好みでした!更新お待ちしてます!
[良い点] 1時間で1階層はいいんだけど、町までどれだけあるんだろう? [気になる点] 階層でめっちゃ敵強くなるって事は、落とし穴系の罠にかかると一気にピンチになりそうね。 [一言] 土壁と火柱を併用…
[良い点] 良いですねー。 このダンジョン、おもいっきりゲーム、って感じでアマツダンジョンとはまた違う楽しさがありますね!
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