表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/374

「18話」

 ゲートを潜ると本当に1階へと着いていた。

 ……いや、疑ってた訳じゃないんだけどね、ほらちょっと不安がですね……っと、そんな事よりクロだっ。



「クロ! お待たせっ」


 視界にクロを捉えた俺は超テンション高い感じで声を掛ける。


 どうやらクロは水を飲んでいた最中だったらしく、舌をひょこっと出したまま固まっていた。

 あ、尻尾が狸になってる。



 ……いきなり俺が何も無い空間から出て来たもんでびっくりしたのだろう。


「驚かせてごめん。 5階?からここまで直に行き来できるようになったんだ」


 クロに謝って事情を説明するとやれやれって感じで水を飲むのを再開するクロ。


 ゆっくり飲むと良いよー……じゃなくてっ。


「それよりこれ! ポーションが手に入ったから飲んで飲んで」


 水飲んでる場合じゃないっ。

 早くクロにポーション飲ませないと!


 俺は急いでポーションの蓋を開け、飲み皿に入れてクロの前に出す……が、クロはなかなか飲もうとしない。



「クロー……」


 確かにこのポーションは食欲をそそらない色しているけど……てか何でこんなどぎつい紫色と緑色の液体してるんだって言うね。


 今度ダンジョンマスターに色変えた方が良いんじゃ?って言っておこう。



 てかクロお願いだから飲んでおくれ……っ。




「……の、飲んだ」



 俺の必死な感じが伝わったのだろう、クロはしょうがない……って感じで渋々ポーションを飲み始める。


 で、何とか一本飲みきるとじとーって感じでこっちを見つめるクロ。


 ……これは。



「……さっき水飲んだからもう水はいらない? なんとか頑張って飲んで……あとこれだけで良いから」



 たぶんだけど、さっき水飲んでもう満足しちゃったから、水分はもういらんって感じだなこれ。


 若返りの3年の奴はもう飲んだから、あとは病気治療のだけなんだけど……時間掛けても良いから飲んで貰うしかないか。




 その後クロは10分ぐらい掛けて病気治療のポーションを飲みきった。


 これで一安心……安心したら涙出て来たわ。

 あ゛ー……よかった。




 しばらくクロを撫でながらぼーっとしていると、段々と感情の波も収まってきた。

 てかすっごい眠い。



「もう1本あるけど、こいつは明日飲もうか」


 1年の奴がまだ残っているけれど、これは明日かな……クロもしばらくは水分取る気にならないだろうし。


 飲み皿に入れておいても良いけど、時間経過で効果切れたら困る。まあ、そんな説明なかったしそれは無いと思うけどね。たぶん。


 あとはー……クロのご飯を用意しておこう。


「その薬飲むとお腹空くようになるんだってさ、カリカリと……缶詰はこれとこれしかないか。 明日買わないと」


 カリカリは結構残っていたので、お皿に山盛りにしておく。

 缶詰は二つしか残ってなかった。こっちもお皿に乗っけてっと……今日はもう遅いから、明日お店がオープンしたら買いに行かないとだね。



 ……しかし眠い。


「……お休み、クロ」


 俺はクロにお休みの挨拶をすると倒れ込むように寝転んだ。

 すぐに眠気が強くなり、程なくして俺は意識を手放した。


 ……寝に入る直前に顔に触れたフワッとした感触、あれはきっとクロのだろう。


 その日、俺は久しぶりに悪夢に悩まされることなく熟睡する事が出来た。






 一体どれぐらい寝たのだろうか? 俺は頬に触れるむにっとした感触に目を覚ます。


「……んごっ」



 目を開ければ目の前に俺を見下ろすクロの姿があった。

 むにっとした感触はクロの肉球だったらしい。


「クロお早う……ん、なにご飯?」


 俺の言葉になーと鳴いて返すクロ。

 正解だったらしい、ご飯皿を見てみれば見事に全部空になっていた。


「うお、全部空だし……」


 そりゃ俺を起こすわけだ。


 丸2日は持つ量だったんだけどな、ここまで食欲増してるとは思わなかった……えっと、今の時間でやってるお店はっと……んんん?


「って12時過ぎてるしっ!?」


 半日寝てたってどういうことなの。

 俺、そんなに寝不足だったのか……っと、それよりもご飯買いに行かないと、まずはシャワー浴びないと。


「シャワー浴びて買ってくるね」


 そう言って俺が地上に戻ろうとするとクロは毛布の上に行き、ゴロリと横になる。

 その姿にもう違和感はなかった、半日しか経っていないとは言え、ひと月分ぐらいは若返っているはずだ……ポーションの効果はきっちり出ているようだ。


 効果が出ていると分かり、俺の足取りも自然と軽くなる。

 スキップしながら玄関戻ったら、お隣さんにばっちり目撃された。はずいわ。




「ん……我ながらひっどい顔してるなあ」


 シャワー浴びた時にまじまじと鏡を見てみたのだけど、隈が酷いことになってた。 半日寝たのにまだこれか……クロもポーションの効果が全て発揮されるまで3週間掛かるし、俺もしばらくは休もうかな。



 食料とか色々ダンジョンに持ち込んでしばらく引きこもってもいいし、ポータブル電源とか買っちゃうかなー。


 ま、それは追々考えよう。ってことでペットコーナーに着きましたよっと。


「さて、どれにするか……買えるだけ買っちゃうか」


 色んな種類あってどれ買うか迷うよね。

 この際だから買えるだけ買うことにした。クロの食欲もましましだから余ることも無いと思うからね。




「……俺のご飯どうしよ」


 自分の分忘れとりました。


 とりあえず冷蔵庫漁ろう。

 色々ぶっ込んどいた気がするし。



「あ、じいちゃんのタラコがある。 あとはご飯チンしておにぎりにでもするかな」


 冷凍庫に漁師の方のじいちゃんが送ってくれたタラコが入ってた。

 凍ってるけど、おにぎりにしちゃえばその内溶けるだろう。


 俺はおにぎりを手早く作るとクロの待つ休憩所へと急いで向かう。



「クロお待たせー」


 休憩所に入るとクロが出迎えてくれた。

 にゃーにゃーと何時もより鳴き声が激しいのでかなり腹ぺこらしい。


 俺はすぐに餌を皿に入れ、ついでに若返りのポーションを飲み皿に入れてあげる。 あ、1年のやつね。


「たんとお食べ。 あとこの薬も飲んでおいてね」


 そう言うとクロはすぐにご飯を食べ始める。

 ここ最近、クロがここまでご飯がっついて食べるのは見たことが無い、自分で獲物を捕っていたからと言うのもあるのだろうけど、やっぱ老化によるものも大きかったのだろうか……。


 クロがもりもりご飯を食べているのを見てるだけで幸せだ。

 本当にこのダンジョンが出来てくれて感謝しかない。




「タラコおにぎり美味しいなあ」


 おにぎり美味しいです。


「ん、お昼寝する?」


 クロはがっつりご飯食べたら眠くなったらしく、大きな欠伸をすると毛布の上でもぞもぞしだした。


「俺ちょっと用事済ませてくるね。 夕方には戻るから。ご飯は置いておくからお腹空いたら食べるんだよ」


 俺の方はちょっと用事……ダンジョンマスターのとこ行かないとだからね。 クロにそう伝えて部屋の隅にあるゲートへと向かった。






「やあ、いらっしゃい」


「お待たせしました」


 俺が来る事は分かっていたのだろう、ダンジョンマスター……アマツは椅子に腰掛けたまま手招きをしている。そのテーブルの上には恐らくお茶とお菓子であろう物が並んでいた。



「いやいや、どうせ暇だからね問題ないよ。 それよりクロだったかな、大分調子がもどったようだね」


 暇なんだ……そりゃ現状俺しか潜ってないし、その俺も休憩中だしやること無いのかも知れないね。

 てかクロの様子分かってるのか。これ1階の休憩所の様子を把握……と言うか覗いてた? かなり暇なのかも知れない。


「はい! おかげで大分良くなりました……本当にありがとうございます」


「いやなに、私はただこのダンジョンと言う場を用意しただけさ、ポーションを得ることが出来たのはひとえに君の頑張りによるものだよ」


 でもお礼を言われて悪い気はしないかな、と言って笑うアマツ。


「さて、君がここに来てくれたのは昨日の続きを聞きにってことでいいかな?」


 そう改めて切り出したアマツに対し、俺はこくりと頷いた。

 昨日はほとんど話を聞けてないからね、ちゃんと聞いておかないと……。



「よろしい。 では話そうじゃないか」


 アマツはにっこりと笑みを浮かべると、手を大きく広げ話し始める。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
たらこ食いたい
[一言] クロにゃんが復活した!! シリアスの峠を超えて嬉しいからこれはもうお気に入りです!!
[良い点] 老猫飼ってる身としては うん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ