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レンギョウ  作者: 車田 朱里
1/1

虐待、二重人格、死別、その後に残る者は・・・

ようこそ、初めまして。

残虐で鬼畜、胸糞悪い毒親から生還したアラサー女です。

読んで頂けたら幸いですが、初めてなので改行、誤字多数あるかと思いますが頑張らせていただきます。

描きかけなので随時更新出来たらと思います。

よろしくお願いします。


 昔むかし、裕福な家庭がありました。

 父は土地やお金を沢山持っていて兄が三人、姉が二人、弟が二人、妹が一人おりました。

 少年は六番目に産まれ、生まれつきの茶髪に少し青みがかった薄暗い目の色をしていた。

 父からの体罰、罵詈雑言が始まるのにそぅ時間はかかりませんでした。

 兄達は戦争に行くのを大層嫌がりました。

 私は挽回のチャンスだと思い、戦場は自ら最前線を志願して何人も人を殺しました。

 昨日一緒に飯を食べたやつが横で打たれてても何も感じませんでした。

 何人、何十人殺しても、子供や女に手をかけても罪悪感はありませんでした。

 頭は宜しかったのでパニックになって戦いが疎かになるやつ、基本を忘れるやつ、失禁するやつに酷くため息が出た。

 邪魔だから早く死ね。とすら思った。

 階級が上がるのも拒否した。

 最前線、少年は早く死にたかったのに恵まれた体格と身体能力により死ななかった。

 涙は一滴も出ず、嘔吐すらした事も無かった。

 機械になったのでないかと錯覚するくらい無慈悲に人を殺す。

 心の中で何度も思った。

 「誰か殺してくれ」

 敵兵に捕まると日本語、英語、韓国語が喋れたお陰で対応はとても良かった。

 「あぁ、また生きながらえてしまう」心を過った。

 衣食住を保証され、敵軍の制服に身をまとい日本人として生きて行くことになった。

 「名前は橋本吾郎」馬鹿な上司が虐殺を繰り返す。

 笑いなが、ら高笑いし虐殺する姿に心底呆れた。

 弱い女子供や年寄りに命乞いをさせて殺すのを横で見ていて馬鹿も弱者なのも気の毒だと思ったくらいだ。

 兄達が戦死したと聞いても何とも思わなかった。

 姉が死んでも弟が死んでも父が死んでも何とも思わなかった。

 いや、嘘だ、少し笑った。

 弱かったからだ。

 罵詈雑言はどうした?家宝の名刀とやらで戦ったのか?

 「ざまあみろ」コレが最初に思った言葉だった。

 母が自殺したと聞いた時は少し動揺したが仕事に集中した。

 部屋に戻って涙が出た。

 「生きて帰りなさい。」いつも優しかった母。

 色が白くて働き者だった。

 母は前の日に敵兵に強姦されて自殺していたと聞いてそいつを殺した。

 拷問は長かったが俺は役にたつから殺されなかった。

 痛みや苦しみ、何とも思わない。

 全ての爪を剥がれ水責めにあおうと母を殺した奴を殺した奴を殺せただけで満足していた。このまま死んでいいと思った。

 なのに生きていた、使えるから上司が止めたのだ。余計なこと、心底憎んだ。


 戦争が終わってからは沢山の事をした。

 悪いこともいいことも。

 知り合った親父にウチに来いと言われて養子になった。

 名前は山崎幸四郎に変わった。

 義父がくれた名前は「幸が四方の神様が来るように」と細い体でニッコリ笑った。

 小さな体、細い手足、優しい義父はいつも縁側で太陽を眺めて、畑をして田んぼをして働き者だった。

 義母も優しくお人好し、こんな俺に夜通し着物を縫ってくれた、体を大事にしなさい。いつも気遣ってくれた。


 暫くは東京で働きながら金を送った。

 仕事で呼ばれた京都の小綺麗な料亭にはアメリカ人と日本人と汚い話を仲介する。

 次の日やたら男を怒鳴りつける背の高い女を見た。

 百合の花のようだ。

 思わず近寄って求婚した。

 女性は俺を投げ飛ばした。武道をしているのか起き上がると着物をタスキで結び臨戦態勢だった。

 珍しい赤髪を綺麗に結っていたが顔は鬼のようだった。

 「お嬢様!」

 声をかけられていた。

 一息着くとタスキを外し「悪かったわ」と行って手を差し出してくれた。

 「結婚しませんか?」

 座り込む俺から出た言葉は嘘にしか聞こえなかっただろう。

 彼女は笑っていたが彼女をお嬢と呼んだ奴らに殴られた。反撃、避ける等わざとしなかった。

 彼女にそんな自分を見せたくなかった。

 彼女はまた明日同じ時間に、と言って去っていった。

 聞けば名家の娘らしい。腕も口もたつ。

 人を殺した俺があんな人を幸せにできるわけが無い。

 涙が出た。

 戦争を自分を恨んだ。

 次の日彼女と沢山話をした。

 そして次の日、俺はボロの風呂敷に最小の荷物で彼女は上等なトランクを持って義父と義母の待つ家に鈍行列車を乗り継ぎ歩き義父に頭を下げた。

 3日後山の中に相応しくない高そうな自動車が止まり男が2人女が3人降りてきた。

 車の音がした時彼女は台所に走り出刃を竹に括りつけてきつく縛りタスキをかけ、まるで鬼のような顔だった。

 最初こそ物凄い剣幕で捲したてる向こうに対して嫁は高い上背で見下ろしていた。まるで白百合の様だった。

 「娘を返せ!」「こんな貧相な家、我が家に相応しくない!」この言葉に嫁は半歩下がると実の母親に向かって出刃を振り下ろした。咄嗟に庇ったが肩から出る血が母親の着物に飛ぶと「ヒッ!」と一声上げて「穢らわしい血が着いた!」とパニックになった。

しかし、嫁は俺の首元を掴むと母に「手当を」と静かな声で言うと出刃の着いた竹を器用に回し、ドン!と左足を前に出し体制を低くした。そして一言。「次は外さない、首をはねる」

 嫁になった女は大層恐ろしかった。細い身体の義父はオロオロしながらも止めに入った。

 「娘にそんな事させらん!」父は首根っこを捕まれポイっとまるで猫の様になげられた。親父が少し気の毒だった。

 手当を終えた母は何度も繕ったボロの着物で頭を下げた。

 どうか穏便に話し合いを、嫁は止まり母を立ち上がらせると膝の砂を払い、実親に「入れ」と言った。

 気に入らないことは我が家が貧しい事、親が貧相な事、血の繋がりがない事、そして俺が外人な事。

 つまり全て。

 嫁は深くため息を着いて話し始めた。

 「帰れ、ここはお義父さんとお義母さん、幸四郎さん、そして私の家だ。お前達に何ができる。今度この人達を、私の家族を侮辱したら一族全員殺す。跡取りなら居るだろう、私を上背の高い何の才能もないと言っていただろう?」

 「日を改めましょう」そぅ言ったのは妹か姉か分からないがその答えに母親は酷く項垂れて、物凄い強く襖を閉めて出ていった。玄関を1歩出ると嫁は母親に塩を頭からかけてニッコリわらっていた。

 物凄い嫁を貰ってしまった。

 ものすごい早さで畑を耕し山に上がれば獲物をとらえやせ細った義両親に休息を与え、俺の根性を叩き直した。

 子宝にも恵まれました。

 私にと嫁を半分にしたような長女は幼いころいじめにあいました。

 目の色、髪の色、肌の色、優秀で頭も効率もとても良かった。しかし嫁に似たのでしょう、やり返し返り討ちにし、こちらが謝罪するまでの怪我を負わせた。

 次女は姉と違い黒髪に黒目、少々頭の出来は宜しくありませんでしたが可愛く笑う優しい子でした。

 そして長男が生まれました。

 戦争が来ないこと願いました。この頃妻は病を患い子宮を取りました。

 久しぶりに泣いた妻を見ました。

 女で無くなってしまった、あなたの子を産んであげられない。

 妻は背もですが心も大きな人でした。

 子供ならもぅ居るんだろう?

 「沢山産んであなたの寂しさを埋めてあげたかった」

 言葉が出ませんでした。

 自分の臓器より俺の心配をしていた。

 生涯彼女を守ろう、より強く思いました。

 仕事は途切れること無く子供達に寂しい思いをさせたと思います。

 でも、少しでも良いものを、と働きました。

 義両親が亡くなる前に言い残しました

 「幸四郎コレから辛いことも沢山ある、でもお前は一人じゃない、強くあれ、優秀であれ、そして誰よりも優しくあれ。お前が息子で良かった。」

 この人が父で良かったと心底思いました。

 後を追うように母も静かに亡くなりました。


 子供達が大きくなるにつれ問題も沢山ありましたがとても幸せでした。

 何より妻を見ていると心がなごみました。歳をとってもあの鬼の様な顔が美しい花にしか見えませんでした。

 向こうの家の人間は何度もやって来てご機嫌伺いになっていた様に感じましたが、私と長女に向ける目は汚物を見るような目だったとかんじていましたが何とも思いませんでした。

 あれは次女が4つの時、家にあった猟銃を持ち出して納屋で暴発、娘に怪我はありませんでした。しかし、私の足をかすめた瞬間脳が血液が沸騰しそうな感覚に襲われました。

 戦争時代の記憶が思い出しもしなかった撃った相手の顔や切りつけた相手の顔が鮮明によぎり発狂しました。大声で泣く娘の声すら不快で殺さなければと思ってしまった。

 自分の足に銃を当てて足の甲を撃ち抜きました。

 妻は「貴方は悪くない」、その言葉をずっと呟き手当をして抱きしめてくれました。止まらない涙に自分が穢れている事を実感し、絶望致しました。それから死ぬまでその発作は年に一度から二度起きました。

 自害したい、逃げたい、辛い、恐怖、沢山の感情に押しつぶされそうになり手足を拘束してもらい泣き続けました。

 妻は横でずっと居てくれました。

 不安で押しつぶされそうで生きた心地が致しませんでした。一日経てば良くなるので妻は心の病気だと言っていました。

 悪友達とキャバレーに行っては嫁に怒られ、娘に呆れられ、しかしとても充実していた様に感じます。

 長女は高校を出て美容学校へ進み美容師になり、次女は家を出ると行って就職、長男は大学を出てお役所に務めました。

 それまで何度も問題は有りました、長女の素行不良、次女の姉弟への過剰な反抗期、長男の虚弱、それでも私はしあわせを噛み締めて居ました。

 家で二人になる事が増えるのが子供には申し訳ないが嬉しかった。

 妻は良く話してくれました、貴方が居たから今のあたしが居る、刺青があろうが、人殺しだろうが、外人だろうが貴方はあたしが認めたあたしだけの男だ。何も変わらない、貴方が貴方で居ることに変わりはない、神様が会わせてくれたと信じている、あの牢獄から出してくれたと。

 私はこの言葉を貰う度に生きていて良かったと思いました。それでも発作は起きてしまう。

 弱い心に引きずり込まれぽっかり空いた穴に足を掬われる、発狂するから猿轡をして縛られ暴れ泣きはらす。次の日には普通に戻るのです。いつ来るか分からない発作に怯えて暮らしました。

 ですが妻には分かって居るようで前の日になると私の手を握って寝るのです。

 それに気づいたのは随分経ってからでした。

 そして親族が亡くなり次女の勤め先に電話をしましたら退社しています。と返事を頂き大変驚きました。

 次女はそれから半年後に男を連れて現れ、膨れた腹をして下を向いていた。

 燃え上がるような怒りを抑えどうするのか?と聞くと金を貸してほしいと、男は黙ったままでした。

 やっと口を開くと結婚します。とだけ。

 妻は無言で立ち上がり、封筒に金庫から金を出すと二百万叩きつけて言い放ちました。

 「二度と戻るな、お前を娘だと思わない。金は返さなくていい」

 娘は泣きもせず金を拾うと出したお茶に手も付けづに帰って行った。

 長女は酷く呆れ、長男は「母さん、少し休もう。」と妻を気遣っていた。

 私は怒りなのか疲れなのか呆れなのか失望感なのか分からない気持ちでただ縁側で外を見て煙を吹き出しました。

 珍しく横に座った長女はあたしが相手の住所とかきちんと調べておく、父さんは母さんをちゃんと支えてね。と煙を吹き出しました。

 それから直ぐに長女に名前と住所を特定し、毎年の様に産まれる子供達の話を聞きました。

 その頃には長女も嫁に行き子供を産みましたが旦那と子供と我が家で暮らしていました。

 年度末、忘れもしません。電話がなりました。

 「産婦人科ですが赤ちゃんが置き去りで、こちらが連絡先になっているのですが、赤ちゃんを引取りに居らして頂けませんか?」

 妻に伝えると鬼のような顔で長女の子供を抱きながら震えて居ました。

 車で出かけ二時間後に出会ったのは小さな小さな女の子でした。

 長女から教えられていた住所に向かうと我が家よりずっとずっと立派な家でした。

 妻に抱かれた赤子に名前は無く、チャイムも鳴らさず、ドアを叩くことも無く妻は無言で私に赤子を預け入っていきました。

 スパーンと物凄い音の襖の音に怒鳴り声、子供の泣き声、私が赤子を抱き、妻は旦那を引っ捕まえて殴る殴る、止めなければと思いましたが身体は暖かい小さな子供を抱いている。

 出生届も出されていない赤子は妻が名前を付けました。

 出生届を出したのを確認して次女の家に戻ると鍵がかかっていました。

 妻は素手でガラス戸を割ると鍵をカチャンとあけて次女を殴りました。

 「父さんに似たその子が悪い!」確かに茶色い髪、薄い目の色、白い肌、日本人には見えませんでした。

 しかし次女はきちんと育てます。と約束をして家に帰りました。

 長女の報告によるには何度言っても門前払い、会えない、会えたけどなんだか様子がおかしい様に感じる、不安だ。等と言っておりましたが上の子達はしっかり幼稚園に通い小学校にも通っている。私も妻も口約束の縁切りでしたが我が子を信じたかった。

 忘れもしません、昼過ぎ妻と忙しかった正月や行事ごと仕事を終えて、コタツで来年からは仕事を減らそうかな、などと話しておりましたら電話がなりました。

 次女の家のお隣さんでした、急いで来てください!叫び声にも似た声に妻の準備はとてつもなく早かった。

 雪道を車を横滑りさせて死ぬのではないかとゆうくらい飛ばし、家の前に横付けするとお隣さんは雪の中で傘をさして立っておられました。

 「井戸から声が・・・」その言葉に走り出した妻は鉄で作られた蓋を外すとトラロープでぶら下がる何かが上がって参りました。

 「ヒッ!」お隣さんの口をおさえました。

 久しぶりの感覚でした。

 血液と脳が沸騰しそうでした。いや、したのです。

 くい込んだトラロープから見える浮き出た骨、明らかに清潔ではない体には下着を一枚付けただけのあの時の赤子だと直ぐに分かりました。

 妻は直ぐにロープを解き上着をかけ頬を擦りますと、その子は力なく笑いました。

 全身の青あざと切り傷擦り傷、ガリガリの身体は枝の様でした。

 頭の中で何か思い出してはいけないモノが出てきた気がしました。

 気がつくとその子の父親を血まみれにし、次女を血まみれにし、家を破壊し、土下座で謝るその子のもう一人の祖母はガタガタと震えて居ました。

 殺してしまおう。そう思い父親を持ち上げますと

 「お義父さん!」声が聞こえたので手を離すと力なくその男は倒れました。いや、崩れ落ちました。

 止めてくれたのは長女の旦那でした。

 血まみれの手を拭うと次女のを揺さぶり起こし説明させました。

 障害があるから別で住んでいる、問題を起こしたからお仕置きをした。

 もぅ一度顔を殴ると泣きじゃくり震え、別で住んでいるのは嘘でトタンの雨風がやっとしのげるくらいの納屋で過ごさせていた事、衣食住、全てこの子には与えられておりませんでした。

 ガタガタ震える娘に心底コレは本当に自分の子供なのか?と疑問ばかりでした。

 その他の子供達は普通に居ました、泣きながらこちらを見ておりました。

 お隣さんに頭を下げて内密に、とお願いして知り合いの医者に連れていきました。

 極度の栄養失調、言葉が話せない、もしくは失語症、成長の遅さを指摘されました。点滴を打ち入院。妻はかかりきりで見ておりました。三日後警察が病院にやって来ましたので知り合いの警察を呼んで貰いお引き取り願いました。

 四週間の入院でその子【希望】を家に連れて帰りました。

 自足歩行の出来ない希望の小さな手を握りリハビリを廊下で何度もし、私の事をジィジ、妻をバァバと呼ばせ、飲み込む力の弱い小さな体の為に妻はミキサーを買いました。

 希望は最初こそ戸惑っておりましたが教えた事は直ぐに覚えました。

 「ジィジ」初めて呼ばれた時には涙と共に怒りが込み上げました。

 妻も「バァバ」と呼ばれて嬉しそうにか弱い骨が折れそうなくらい抱きしめていました。

 三歳にしては小さな体、茶色の髪、目は少し生まれた時より黒に近づいてる気がしました。

 長女に言われて気づきました、あたしに似てない?つまり父さんに似てる。と、そして長女の旦那が話してくれた事は悲惨なこの子の生活ぶりと、この子がされていた理由。

 愕然としたものです。

 私は鬼人を妻に産ませ鬼畜と結婚させてしまた、と。

 そしてその原因は私だった事に申し訳なくて涙が出ました。この子を守ろう、妻と誓いました。

 実は我が家には猫がおりまして、妻にしか懐かず、娘達は愚か私は横を通るだけで威嚇されるザマはいつまで経っても治りませんでした。きっと猫を食った事があるからだと思って、希望も近づけさせない様にしないとな、と思い初めて家に希望を病院から連れて帰った日、【シロ⠀】は玄関で待っていました。まるで帰ってくるのが分かっていたかのようでした。

 小さな布団に希望を寝かせるとモゾモゾと布団に潜り、顔を出すと希望の顔を舐めていました。コレには家族全員が驚きましたが妻だけは何か納得した様に言いました。

 「そぅ、この子を待ってたんだね」 尋ねるとあんたとあたしが出会った様なモノ。

 誰かは誰かの為に産まれて来るとあたしは思ってる。悔い改めなさい、苦しみなさい、そして小さな幸せに感謝しなさい。私の祖母の言葉よ。

 

 希望が家に来たと同時に長女家族は町のアパートへ引っ越しました。

 希望は毎日リハビリを頑張り常に横にはシロが着いて歩きました。ご飯も風呂も普段鳴かない猫でしたが昼間にやたら大きな声で鳴くなぁと妻と見に行くと昼寝していた希望が立ち上がって廊下で1人で歩いていました。

 持ち上げて涙を見られないように抱きしめました。妻はなんでも教えました、まだ三つの希望には難しい事も、炊事、洗濯、掃除、風呂焚き、薪割り、田畑の事、山の登り方、神様の重要性。

 希望はどんどん成長しました、体は小さいままでしたがおしゃべりをして小さな体で牛や馬の世話もしていました。

 毎日私が作った小さな背負子にシロを入れて山神様にお祈りをして遊びに出かけます。

 山では山菜を取ったり、花を摘んで帰ってきたり、でもたまに違う希望が居ました。

 縁側でボケっと横たわり刃物で腕を切ったりしました。そして不気味な笑い方、希望が使わない様な言葉遣い、自傷行為。

 「そうか、二人だったんだ」、と妻は言いました。名前は?と妻が聞くとその子は答えました。

 「あれ、バカ、死に損ない、いらないやつ。」

 妻がポロポロ泣くとその子はビックリした様になりましたが一瞬で無表情になりました 

 いつもの希望は私達は「のぞ」と呼びそこ子を「のぞみ」と呼びました。

 記憶力のいいのぞみは縁側で本をよく読んでいました。

 病院に連れて行った事もありました。

 泣く事をせず淡々とした姿は小さな子に見えませんでした。

 逆にのぞは良く泣きました。

 パニックになり、ブルブルと震えて泣きました。触ろうとすると逃げようとしたり、妻は優しく抱きしめ布団に寝かせていました。横にはシロ、妻がよろしくね、と言うと布団に入ってのぞを温めました。

 私とこの子は同じ、そぅ何度も思いました。

 のぞみの時、人が家を尋ねて来ると二階に本を持って降りてきませんし、正月や盆の人が集まる時はいつものぞで、人との接触を避けている様でした。

 人が嫌い、知らない者が嫌いでした。笑顔を魅せるのは猫のシロと遊んで居る時と妻と話して居る時、のぞみは私に沢山質問しました。川はどこから来てるの?空はどうして青いの?雲はよるにはどこに行くの?草はどうして緑色なの?そして、あたしはどうして産まれたの?たまに困る質問もありました。

 五つの誕生日、次女がやって来て泣いて謝りました。クマのぬいぐるみにリボンを巻いて、この子を連れて帰りたい。

 のぞは私の手を話して「お母さん!」 と抱きついて居ました。

 のぞの居なくなった家はしずかで年寄り二人の家におかれた絵本や積木が虚しく縁側に

 転がっていました。

 次の日、妻が胸騒ぎ画する、と次女の言えに行くと次女はあわてて保育園に行ってる!と叫びました。妻は胸倉を掴むと次女にも無数のアザがあることに気づきました。

 しかし、私は冷たい人間なのかどうでもよかった。でかい声で「のぞ!のぞみ!」 何度もよぶと次女はやめて!と泣き叫びました。

 まさかと思い、当時閉じ込められていた納屋に行くと倒れてなぜかびしょびしょに寝れた希望か倒れておりました。

 無言で抱き上げて車に乗せると次女は怒り狂って泣き叫びました。

 「そいつが居ないとあたしがやられる!」

 次女は希望をサンドバッグに自分を守ろうとしていました。もぅ情けなくて情けなくて殴る気も起きず妻に行こう、と行って車を出しました。

 病院に行くと擦り傷切り傷打撲で済ました。

 済んだと言ってはいけない事だと思うがあの時よりマシでした。

 目を醒ましたのはのぞで「お母さんは悪くないよ」と言いました。家に帰ろう、そぅ言うとのぞは「うん」、と頷きました。

 妻が帰りに「くまさんは?」と聞くとのぞは黙って笑いました。「おとうさんに燃やされちゃった」妻は新しいのを買ってきてあげると言うと「いらない家に帰ればシロちゃんが居るから」と無理矢理笑った顔が辛くて心が張り裂けそうでした。

 玄関を開けるとシロが飛んで出てきて私を蹴飛ばし妻の肩に乗るとゆっくりのぞの腕に収まりました。のぞは泣きながら「どうして死ねって言われるの?」泣き疲れて眠るのぞの横にはシロ、当たり前の光景がありました。


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