表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/54

後日談:5月6日(月)



 【京一】



『まさか京一と凛ちゃんが付き合うことになるなんてなあ、びっくりだよ。はっはっは』

 電話口の向こうから、楽しそうな笑い声が僕の耳元に届く。


「……いつ知ったんだよ」

『昨日、母さんから聞いたんだ。嬉しそうに俺に報告してきたぞ』


 僕と凛との関係は早くも母にばれていた。

 僕から言ったわけではない。


 その鋭い観察眼を以って昨日のうちに何かを察した母は、僕ではなく凛に問い詰めたようである。

 息子に聞いてもはぐらかされるに違いないと思ったのだろう。

 なんかもう丸々見透かされている。


 そうして次男が幼馴染と恋仲になったことを知った母は、早速その事実を長男にも伝えたのである。

 すなわち今僕が通話している相手、わが兄・和哉である。


『まあ、びっくりはしたけど、でもなんだかんだこうなるような気もしてたよ』

 ひとしきり笑ってから、落ち着いた様子で兄はそう言った。


「え? なんでだよ」

『だって凛ちゃん、可愛いし良い子だし。あと強気だし。京一はまさしく凛ちゃんみたいな子がタイプだろ。ていうかそもそも、凛ちゃんが初恋なんだろ?』

「…………」


 どうやら母の観察眼は兄にしっかりと遺伝されていたらしい。僕にはない。羨ましい。


『凛ちゃんだって、なんだかんだ昔から京一のこと好きだったと思うぜ。

 ……あー、あれはいつ頃だったかな。

 子供の頃、なんか三人で散歩してた時にさ、野犬に遭遇したことあったろ。あのとき、京一が勇気を出して追い払ってくれたじゃん。

 あのときにはもう、凛ちゃん、京一にときめいてたんじゃねえの』


「は? なに、突然そんな話……」

 確かに、そんな出来事はあった気がする。

 しかし、あの時のことを言うなら、注目するのは僕じゃないだろう。

「そのときって、凛のこと庇ってたのは兄ちゃんの方じゃないか。ときめいてたとしたら、僕じゃなくて兄ちゃんだろ」


『うーん、まあ確かにお前の活躍劇は、凛ちゃんから見れば俺の陰になっちゃってたかもしれねえな。

 でも、むしろそういう陰ながら人を助けるのがお前の良いところじゃん。

 だから、その京一のカッコ良さは、ちゃんと凛ちゃんにも伝わってたってことさ』


 そんな昔の、しかも些細なことが、今につながっているとは思えないが。



 それから、兄と色々と話しをした。

 主に兄が僕の羞恥心を煽るようなことを言ってくる。

 僕と彼の力関係は生まれたときから定まっていて、死ぬまで覆らないものなのである。


「兄ちゃんは、どうなんだよ。大学、どんな感じ?」

 せめて話題を変えようと、僕は兄に尋ねた。


『おお。大学は楽しいぞ。学び舎、っていうか、若い男女が集まる場所、って感じだ』

「なんだそれ……。兄ちゃん、なんかふしだらな生活送ってるんじゃないだろな」

『はっはっは、まあまあな!』

 否定しろよ。


『いやでも、一応真面目に勉強もしてるぞ。やる気さえあれば、とにかく各方面から色々な知識が入って来る。それが高校とは違うな。この間なんかよ、ゼミの教授から面白い話を聞いたんだ』


「面白い話?」


『おう。あのな。なんでもその教授、昔から夢について研究をしているらしくてな』

「え……?」



 そうして電話口の向こう、兄の和哉は、

 自らの所属するゼミの教授から聞いたという話を楽しそうに僕に語ったのだった。……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ