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5月3日(金)☽⇒☀:どぎまぎする朝


『もうすぐ始まるね。楽しみだな』


 りんが嬉しそうに言う。

 ぼくはりんと並んでテレビの前に座っていた。


 こちらに笑顔を向ける彼女は、幼い。しかし同じように座った体勢で視線の高さが変わらないということは、やはりぼくも幼い。


 ちらりと時計を見た。

 午後五時前……、あ、そうだ。

 もうすぐ『カミカゲマン』が始まる時間だ。

 その次はりんの好きな『マジカル☆マリーちゃん』だ。



 そのときテレビ画面にはドラマの再放送が流れていた。


 ドラマの中で告白シーンが流れる。男の人が女の人に交際を申し込むのだ。


 ……ぼくはそれを見て、自分も想いを告げなければという使命感に駆られた。


『あの、りんちゃん、ぼくと、つきあってください』


 懸命に言葉を絞り出した。

 りんが驚いたようにこちらを見る。恥ずかしそうに少しだけ顔を俯かせて、口を開いた。


『……うん、いいよ。わたしも京一のことすきだったの』


 そう言って顔を上げた彼女は、優しい笑顔をしていた。


 りんと、両想い。


 ぼくは嬉しくなってその場で飛び跳ねた。



 すると、そのまま体がふわりと浮き出したのだ。

 重力がなく、天井に向かって落下していく。

 あれ、おかしい、と思ったらもう遅く、そのまま天井に頭を衝突させた。



 脳天に衝撃が走る。

 …………。


 目が覚めた。


 ベッドから体がずり落ちて、床に頭をぶつけていたのだった。


 ゆっくりと上半身を起こして、そのまま呆然とする。

 今のは夢だ。

 いや、でもおかしい。

 いつもと違う。


 薄紅色のもやも見なかったし、

 小人も登場しないし、

 それに夢の中で「これは夢だ」という自意識がなかった。


 まるで当時のまま、子供の頃の感情のまま、記憶の映像を再生しているようだった。

 いや、といっても、明らかに事実と異なる改竄がなされていたが。


 そもそもあれは凛の夢世界ではない。

 案内人に導かれたわけではない、ただの夢。


 いつぞや担任教師が言っていた理論で言うところの、深い夢ではなく浅い夢の方。

 無意識が作り出す深層の夢世界と違って、まさしく僕が寝ながら頭の中で想像した映像……。


 確かに幼い頃に凛に告白をしたことがある。

 だがそれをわざわざ夢に見て、あまつさえ受け入れさせるなんて。

 それが何を意味するか……、いや、あまり深く考えるのは止そう。



 僕はうなだれつつ、もう一度布団をかぶった。



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