4月30日(火)☀⇒☽:帰り道
【京一】
三連休が明けたのち、本日。
一週間前に部が結成されて以来、毎回放課後に手芸部は活動している。
しかし活動といっても、部室に部員が集まって談笑するだけである。
そもそも手芸部に興味があったのはクララだけ。
僕らは手芸部に入ったからといって手芸を嗜むつもりは毛頭ないのである。
手芸の部活としてはいささか問題があるかもしれないが、しかしある意味では、手芸部の活動は順調であると言える。
本日もまた、手芸部部室は賑わいを見せている。
凛とイブは今やとても仲が良く、むしろ昔より距離が縮まったのではないかと思うほどだ。
今更話すのが気まずいだとか、嫌われているかもしれないだとか、二人が抱いていた懸念はただの杞憂だったのだと思える。
ただ、凛はこの一週間、毎日顔を出しているというわけではない。
それは決して気まずいからとか部室に赴くのが億劫だとかではなく、ただ彼女が忙しいから。
彼女は学級委員長だけでなく生徒会にまで所属しているし、そして帰宅後には家事をこなさなければならないのだ。高槻家の家庭内において彼女が家事全般をこなしている。
凛は、僕らと違って決して暇ではないのだ。
その日の、部活のおわり。
今日は凛も参加していた。
下校の際は五人で電車に乗るが、駅に着いてからは僕と凛の二人で歩いて帰るわけである。
「凛が来てくれるのはありがたいし、イブとかは特に喜んでるけどさ。でも家事とかで忙しいなら、無理してこなくても大丈夫だからな?」
お互い隣同士のその家に帰る道中、僕は凛に言った。
「別に、無理なんかしてないわよ。楽しいから。本当なら毎日行きたいぐらいだし」
平然とした様子で、凛はそう言った。彼女の歩みに合わせて、その後ろ頭に垂れたポニーテールがひらり、ひらりと踊る。
「それに、誘った本人のあんたがそれ言うって変じゃない?」
「まあ、確かにそうだけど……」
そう言われると返す言葉もない。
駅から自宅まではすぐに着いた。凛に「じゃ」と短く挨拶され、「うん、じゃあ」と返した。
…………
……
夜。
「ドモッス、京一サン!」
相変わらず、僕の夜はこのハイテンションで奇抜な小人と共にある。
この前、イブやクララや晃の夢に行ったり、自分で子供の頃の夢世界を描いて彼らを招き入れたりしたものだが、それは手芸部の問題を解決するため。
それが終わると、また通常運行の『案内』、すなわち凛の夢へと連れられるパターンが再開されたのである。
「気になってたんだけど、なんで基本が凛の夢なんだよ」
「ナンデって。京一サンはもう十分承知しているコトでしょう。夢世界の渡航は意識上のつながりが前提となっているのデスから、だから京一サンにとって一番近い夢世界が凛チャンの夢なのデス」
「ああ、そう……」
まあ、夢世界は子供の頃の心象を基に形成されているのだから、最も幼い頃からの縁として、凛が一番近い距離にいるというのは一応納得できるが。
でも、そもそもこの小人が僕の前に現れて、夢世界の『案内』をし始めたのはなぜだったか。
今やすっかりこれが日常と化してしまって、根本の理由など気にならなくなってしまっている。
「さて、今晩も京一サンを夢世界へ『ご案内』致しマショウ!」
高らかに言って、小人はもやの中をぐんぐんと推進していく。
僕はもう何も言わず、ただ付いていくのみである。




