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4月22日(月)☀:手芸部部室にて、5人



 【京一】


 目が覚め、僕は時計を見る。

 …………あ。


「結局、今日も遅いじゃん」


 教室について席についた時点で、やはりいつも通り授業開始直前の時間だった。

 じとり、と凛ににらまれた。

 しかし幸いなことに、一時限目の担当教員が遅れてきているようで、授業はまだ始まる気配がない。


 僕は鞄から一枚の紙を取り出し、凛に渡した。


「これ、入部申請書。今日の放課後が提出締め切りなんだ」

「……もう出したけど」

「え?」

「朝のうちに先生のとこ行って紙もらって、さっき出した」

「あ、そ、そうか……」


 なんというか、さすが凛である。

 というわけで、他のメンバーも確実に放課後までに申請書を提出するはずなので、これにて手芸部は見事廃部を免れたというわけである。

 放課後、五人が手芸部部室に集まることになるだろう。


 イブと凛は、ちゃんと話せるだろうか。



 【美代】



 通学途中。

 あたしは電車に身を揺られながら、心の方もいくらか揺らいでいた。


 今日が、部活申請書の提出締め切り。


 それと同時に、今期における各部活の活動初日ということになる。

 手芸部はあたしたち五人だけ。

 集まるかどうかは別にどうしたってかまわないわけだが、でもあたしは集まる可能性の方が高いと踏んでいる。

 そうでないと、この五人で手芸部を結成した意味がない。


 学校に着いた頃、メールが届いた。発信者は晃だった。

 あたし個人充てではなく、四人にまとめて送られたもの。


『初日だから全員集合!』


 それが件名で、本文は謎の顔文字一つという、なんとも解せないメールだった。

 相変わらずバカな男だな。



 放課後。

 文化部部室棟の一室。なんだかんだ初めて入る、手芸部の部室だ。

 あたしは緊張していた。

 うまく、話せるだろうか。

 部室には、あたしと蘭子が先に到着していて、晃と京一、そして凛の三人を待つ。落ち着かない。


「おーっす!」

 手芸部の部室に、晃が堂々と入室してきた。相変わらずうるさい。


 晃に続いて京一、……そして、凛が入って来た。


 さほど広くはない手芸部の部室。

 そこに五人が揃ったのである。

 凛以外の四人なら、食堂で毎日のように会っている。

 でも今は凛を含めた五人が一つの部屋に集合したのだ。


「美代、あの……」


 凛はあたしの名前を呼んだ。

 彼女はあたしになにかを言いたそうにしていた。


 でも、『名前を呼ばれた』あたしは、どうしても言いたいことを我慢できなくて、凛の言葉を待たずに口を開いた。


「凛。あのさ」

 なにか言葉を言いかけていたのを、あたしがぴしゃりと遮ったものだから、凛は少し戸惑った様子で私を見る。

 でもあたしは構わず続けた。

「……あたし、凛のこと、今さら先輩扱いとかできないからね。昔みたいに凛って呼び捨てで呼ぶよ。

 ……だから、その……、凛もあたしのこと、昔みたいに『イブ』って、呼んでよね」



 昔、毎日のように一緒に遊んでいたこの五人。昔のような仲に戻りたいから。

 あたしのことをそう呼ぶのは、親しい仲の証明なのだ。


「……うん、わかった。イブ」


 凛は、硬くはあるけど、少しだけ笑ってそう言った。

 そこで、先日まで感じていた距離感や気まずさなんかは、もうすっかりどこかへ飛び去っていた。



 それからはとても楽しい時間だった。


 五人で話すのなんて、小学生のとき以来だ。

 しかし不思議なもので、話し出してみればそれだけの年月など感じないくらい自然と笑い合えた。

 凛はやっぱり昔よりは表情は硬いけど、でもそれはたぶん地なだけで、しっかり楽しんでいる様子だった。


 正直、その日には手芸部としての活動なんてなにもしていない。

 おそらくこれからも、蘭子以外は手芸なんてしないだろう。

 でも構わない。

 あたしにとっては手芸なんかどうでもよくて、この部室で五人が一緒にいられるならそれでよい。

 晃や京一、それに凛も、そう思っているだろう。


 きっと蘭子も、もちろん手芸自体が好きだから、手芸部に入りたかったというのがまずあるだろうけど、

 でもそれ以上に五人でこうしてまた仲良く話しができる環境こそを求めていたはずだ。


 みんな仲良し。それが一番。


 それを前面に表すように、蘭子は幸せそうな笑顔を咲かせていた。

 その笑顔を見ると、あたしもまた、幸せな気分になった。


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