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タイトル未定  作者: ズッカ
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フランス私小説

2013年5月。当時24歳。


4年勤めた会社を前月に辞めたばかりのぼくは、実家で自由気ままな生活を送っていた。


世間一般ではニートと呼ばれてるヤツだ。


会社を辞めた頃は、「感覚が麻痺しないうちに早めにまた仕事を探そう」と意気込んでいた。


しかし、怠惰が馴染むのにそう時間はかからず、いつしか気分は毎日が夏休みになっていた。


そもそも、なぜ前職を辞めたのか。


以前の会社に居続ける自分を想像したら、とてもつまらなく感じたからだ。


「自分のしたいことが何も成し遂げられないし、このままじゃダメだ」と思って、会社を辞めた。


その後の計画は、地元を離れて、東京で働きながら、細々と音楽活動をするというものだった。


しかし、ひょんなキッカケでこの計画は思わぬ方向にシフトすることになるとは、この時のぼくはおろか、家族、友達、誰ひとりとして知らない。



とある昼下がり。


ぼくは相変わらず、仕事から解放された日々を呑気に送っていた。


そこへ、母親が「イタリアンを食べに行こう」と提案してきた。


ぼくと妹と母親の3人でのランチ。


忘れもしない。


唐突に、母親は「あんた、仕事辞めて時間があるんだし、次の仕事を見つけるまでに海外旅行でもしたら?」と話を振ってきたのだ。


海外旅行・・・そんな発想が浮かんだことは今まで一度もなかった。ましてや、自分には縁のないものだと思っていた。


海外旅行に行く人は皆、お金と時間に余裕のある限られた人だけだという古くさい考えがあった。


今思うと、なんて時代錯誤な意見だろうか。それぐらい、ぼくは海外に疎かった。


イギリスやアメリカなどの音楽を嗜んではいたものの、英語への造詣はまるでなかったし、海外旅行に対しても、一生のうちに一度ぐらいはロックの聖地へ足を運んでみたいとかその程度のものだった。


今後また働き出したら時間も取れないだろうし、海外へ行く機会はもう二度とないかもしれない。


確かに、母親の助言は的を得ていたし、理にかなっていた。


ならば、一度ぐらいは海外へ飛び出そうと、旅行を決意した。


海外といっても様々だが、旅先はヨーロッパ一択。


候補地は、イギリス、フランス、イタリア、スペイン。


ぼくの妹のうちの一人は、修学旅行ですでにフランスを訪れたことがあった。


本来、海外旅行というのは家族の中ではちょっとしたニュースになる。旅行後は、旅の珍道中を聞くのが通例だろう。


しかし、彼女がフランスから帰ってきても、ぼくはまるで無関心で他人行儀だった。


旅先を決めるにあたって、ようやくしっかりとフランス旅行の感想を妹に聞いたところ、好感触な答えが返ってきた。


「芸術の都パリ」という決まり文句は、フランスに関心を示さなかったぼくでも聞いたことがあった。


芸術、美食、ファッションなど、古くから現在に至るまで、時代の先端をリードしてきているヨーロッパ文化の象徴とも言えるフランス。


どんな国なのか、この目で一度確かめてみたいという思いで、ぼくはフランスに行くことを決めた。


つづく。

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