第六話 万能メイドのセレスティア
沈んだ気持ちを奮い立たせ、今日も俺は礼儀作法を学んでいた。
朝から二時間弱、この調子なら今日の半日は自由時間になるはずだ。
セレスティアの言うところによると、俺の呑み込は早い方らしい。
二日が早いって平均は何日なんだろう・・・
「基本技能は完璧です。
では、貴族家ごとのしきたりについて覚えましょう」
「えっ、まだ覚えことがあるんですか!」
「当然です。
リオ様のような次男の場合、当主代理としてパーティに出席されることもありますから、覚えることは多いんです」
「分かりました。頑張って覚えます」
終わると思っていただけに、この喪失感は大きい。
「まずは座学からです。
資料を用意しましたから見てみてください」
そう言って辞書並みの資料を出してきた。
これ、作るのにどれくらいの時間がかかったんだろう。
「これはクロード家が代々使っている物ですね」
「じゃあこの本は古いんですか」
「いえ、あなたのお兄様が使うときに新調されたのでかなり新しいものです。
これは初代のころから数えて6回目の新調でした」
そうだったのか。
汚れが少ないのにはそんな事情があったんだ。
「そんなことより勉強です。
早く『貴族家との付き合い方』の一ページ目を開きなさい」
ヤバい。
セレスティアのスイッチが入ったみたいだ。
それにしても名前の付け方が酷い。
そんなことを思いながら本を開くと・・・
普通に教科書でした。