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赤いベンツ  作者: naomitiara-tica
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誕生日

この物語は創作です。モデルはありません。

夫が出て行き、実家の会社を倒産させて

従業員や通いのお手伝いが居なくなり、生まれた時から常に人が周りにいた環境で育ったミツキにとって、静かな空気は妙に落ちつかなかった。



ミツキの邸宅は実家のすぐそばだったので、実家に出入りする職人さんや業者さん、御用聞きの人達で常にごったがえった喧騒があった。



いくら慣れていたとは言え、うるさくてたまらない事も多かった。ミツキの母親がまたよく騒ぐ人間で、何かとって言うと話を大きくしてミツキ達家族も巻き込み、最後には父親が怒鳴り回して話を収めるパターンだった。



誰かの誕生日なんて時にだいたい話はこじれた。



例えば長男の誕生日。ミツキの父親は特にこの孫息子にぞっこんであったが、小遣いだけでなく孫からせがまれた当時の最新ファミコンなどを買い与える。母親も小遣いを渡して、長男の好きなピザを大量に注文する。



それを見た女の子の孫が、お兄ちゃんだけずるいと泣きわめく。ミツキ達両親はこれまた長男のリクエストに加えて長女をなだめるために、ディズニーランドに行く予定で朝から出かけようとする。



すると母親が、何のつもりしてるんだ、私は聞いてない、この注文済みのピザをどうするつもりだ、私もおじいちゃんもお小遣いを2人して上げたのに留守番か?と騒ぎまくる。



と、だいたい似たり寄ったりの話だった。話し合えばいいのに、みんな勝手に動くものだから、毎回大騒ぎであった。



しかし....

今となってみれば、幸せ過ぎる喧騒であった。幸せの一コマとでも言おうか?みんながお互いを愛し愛されていると信じていた。



3人の子供達ば誕生日が近かったせいもあり、勿論主役はその日一番持ち上げられたが、その後大人達は当然飲み始め、いったい誰の誕生日なのか分からないぐらいのどんちゃん騒ぎになった。



夫が居なくなって初めて、末っ子の誕生日を迎えた日、ミツキは家族全員が大好きだった殻付きカニのピラフとイチゴケーキを買って来た。テーブルクロスも久々に新しい真っ白なものを掛けてみた。



不貞腐れた長男、諦めきったような長女、何もプレゼントが無いとヒステリーを起こす末っ子。誰もカニピラフなんて喜ばなかった。誰もお小遣いやプレゼントをくれるゲストは居ない。ミツキは頭に血が上りもう少しでテーブルをひっくり返しそうだった。



そして、元夫から罪滅ぼしのような、末っ子の誕生日おめでとうの電話があった。ミツキはその声を聞いた時、思わず泣いた。罵声の1つも飛ばしてやりたかったが、切なくて泣いた。



なんて、なんて、寂しい誕生日。

楽しかった過去の思い出にミツキは苦しみます。

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