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赤いベンツ  作者: naomitiara-tica
15/15

ミツキ再び

この物語は創作です。モデルはありません。

健一と結婚して15年、ミツキも60歳になった。来春にはやっと会社も定年退職を迎えられる。わずかな退職金も出るだろう。



その日は2人の結婚記念日、正確に言うと2人で市役所に籍を入れに行った日。12月にしては暖かく、街はクリスマスでなんとなくざわついていた。



健一は一週間前から咳き込んでおり、ミツキにうつさないようにとずっとマスクをしている。健一は昔から身体が弱く、スタミナが無い。頑張り屋であるが食の細いのも影響して、無理すると直ぐに熱を出して寝込んだ。



ミツキは来週から行くマイアミ旅行を楽しみにしていた。なんだかんだといろいろあり過ぎて海外旅行は初めてだ。健一と2人で昼間は真っ白なマイアミビーチでのんびりし、ココナツグローブでショッピング、夜はナイトクラブで思いっきり飲んで踊って騒ぐのだ!



今日は私の手作りの料理で、ワインを楽しもう。久々に健一の大好きなビーフシチューをゆっくりと煮込んだ。あとはっと。健一に感謝の気持ちを込めて平凡だけど、ネクタイを選んだ。あとで締めてあげよう。喜ぶだろうな。



しかし、その日を境に健一は帰って来なかった。営業先で吐血して倒れて緊急病院に運ばれ、そのまま帰らぬ人となった。肺がんだった。



確かに咳き込んでいた。胸が痛いとも言っていた。むくみもあった。しかし、健一は我慢強い人にありがちな病院嫌いで、ミツキが検診に行くように勧めても、少し疲れただけだと言って病院に行こうとしなかった。今思うと怖かったかもしれない。人生まだまだの57歳だった。



ミツキがこれでもう、大丈夫かなってとこまで見届けてくれたのかも知れない............



健一が亡くなって1年が過ぎた。



ミツキは久々にゴルフがやりたくなった。前は良く健一とやっていたのだが、健一の具合が思わしく無かった事もあり、ここ数年やっていなかった。軽く打ちっ放しをやって、ビールを飲んでいると、老人?明らかにミツキより年上の村田と名乗る男が話しかけてきた。最近、良くみかけるね?いつも1人なの?っと。



村田は77歳だと言うが、背筋もシャンとして67歳ぐらいに見えた。若い頃は結構いい男だったのでは無いか?村田は妻を亡くしてずっと一人暮らしでゴルフと飲みが趣味。親しい遊び友達もみな亡くなったり入院したりで最近退屈で堪らないと言う。



村田はいくつもの田んぼを持っている代々の豪農で、今は人に貸してやらせていると言う。金だけは腐るほどあるから....と、酔っばらうと、村田はいつも豪語していた。



ミツキと村田は何回か打ちっ放しを一緒に行くうちにすっかり意気投合し、ミツキの悪い癖で村田と離れて居られなくなった。村田も又、自分より16も下の恋人のミツキを目に入れても痛く無いほど可愛がり、2人は直ぐに籍を入れた。



ミツキ61歳。村田77歳。ミツキ4回めの、村田は2回めの再婚だった。今までの結婚と違ったのは、今回はミツキの邸宅でなく、村田の古い屋敷に連れていかれた事だろうか。



感じの悪い、通いのお手伝いもおり、ワガママで強引な村田に親戚や子供達も寄り付かず、何もする事も無く、ミツキは村田とゴルフに行く以外は買い物に出かけた。村田はミツキが欲しがるもの、それこそ何でも買ってくれた。ブランド品のカバンも靴、全身エステも、料亭の小洒落た料理も毎度食べさせてくれた。



そして小型の新しい赤いベンツも。



ミツキは幸せだった。長い間、苦労したけど、還暦になってこんなに贅沢な幸せが待って居た。これは私が今まで頑張ったご褒美なんだ。神様はちゃんと分かってくれてたんだ。



➖その3年後、村田が亡くなると、一斉に子供、親戚達が出て来て、ミツキは数百万の金だけもらって屋敷からイビリ出され、結局、今は長男と底意地悪い嫁が牛耳っている、彼方此方ガタが来た邸宅に戻るはめになる➖



が........

今はそんな未来が数年後に待ってるなんて夢にも思わず、ミツキは新色のサンローランのピンクの口紅を塗り、フェラガモの靴を履いて玄関の鏡の前でくるっと回ってみる。



私はミツキ。どんな事をしても贅沢に生き抜くわ。お父さんの娘だもの。

ミツキ、今はたっぷりと贅沢に身を焦がしてね!まだまだ人生の一苦労....待ってるみたいだよ?

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