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赤いベンツ  作者: naomitiara-tica
10/15

再婚

この物語は創作です。モデルはありません。

ミツキは一年ぐらい何もせずぼんやりと暮らした。



ぼんやりとしている余裕はないのだ。生活費を稼がなくてはならない。申し訳なかったが、次の仕事を探す間、母親の年金を使わせて貰った。母親は今や一文無しで、友達や知人に作ったまぁ、少額の借金取りから逃げ回るべく、他県の知人のところに身を寄せていた。



底意地の悪い友人は、一万、二万ぐらいの金を直接ミツキに取りに来た。昔、散々母親に寿司だカラオケだとタカっていた連中だ。



もともと母親が能無しでだらし無いから元夫は金繰りに困って出て行ったのだ。と、ミツキは、父親が死んでも母親が優秀ならばその後、元夫と一緒に会社を立て直せた筈だと、解釈していた。いや、そう思い込みたかったのかも知れない。



金にだらしなかった遊び人の母親。女癖の悪かった感謝の気持ちの無い勘違いの元夫。



悪いのはあの2人。私は悪いところや劣っているところは何1つ無いのだ。全部あの2人のせいなのだ。



だって、私は完璧なもてなしで家族を大切にして来た。旦那や子供のやりたい事を最優先に家族を支えて来たのだ。そんな私がその辺の庶民の、ふっつうの、容姿もスタイルも金も無い女達に負ける筈無いじゃないか?



私はミツキなんだ。



そこら辺の歩いているカップルや夫婦を見てみろ?私より素敵な女が、私より隣の男を愛してあげられる女が何人いると言うのだ?



みーんなみーんなただの平凡な能力も愛も無い、ただのバカな集団じゃ無いか?それなのになんで世の中の人達はみんな私より幸せそうなのだ?回転寿司で喜んでるのだ?100円ショップで買ったラッピングしたチョコレートを喜んでもらってるのだ?



ミツキにはわからないことばかりだった。世の中は不公平だ。何もやらなくたって、金が無くたって、馬鹿だってぶすだって、夫や子供や両実家に愛され、幸せに平凡に暮らしている人達のほうがこの世の中多いじゃ無いか?いったいこの私と、このミツキと何が違うと言うのだ?



そんなもんもんとしてた時、保険会社の時に営業活動していた大手電気会社の職場のお客から連絡があった。ミツキが辞めた後の次の担当が保険の内容を説明に来たが、良く分からないから説明に来てくれ、飯でも奢るよ!との事。



ミツキは人恋しく寂しかったので、出かける事にした。理由は何でも良かった。



その男、鈴木は15歳上のバツイチ独身だったが、当時、良くミツキに説教していた。保険なんて水商売と一緒なんだから、まだ40になる前に他の仕事探せよっと。ミツキはまさに36歳になっていた。仕事も大手チェーン店の洋服の手直しの仕事を探して寄越した。



そしてミツキは鈴木と寝た。自分より大人の男とのひと時の温もりを欲しかっただけだ。しかし、予想に反して鈴木は、ミツキの邸宅に転がり込んで来た。



ミツキの心の隙間が埋まる前に用意周到に住民票まで移した。そしてミツキは飛び込んで来た男を気が変わる前に今度こそ逃すまいと、この家に住むのなら、子供達の手前もあるから結婚するよう強要した。



鈴木はあっさりと承諾した。その週のうちにダイヤモンドの指輪を買ってミツキが希望した通りドレスの写真を撮って市役所の戸籍課に一緒に行ってくれた。



ちょっと前までどんより落ち込んでいたミツキは一気に舞い上がった。鈴木を好きなのかどうか良く分からない。今まで散々男と金に苦労したけど、私だってこうやってちゃんと結婚出来るんだ。出来ない筈無いんだ。私はミツキだもん。



亡くなったお父さん、見ててくれてる?私、私、やっと幸せになれそうだよ。



しかし、神様はとことん意地悪だった。

やっと幸せになれそうなミツキ。でもまたまだ何か待ち受けてそうですね?

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