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九条祐介物語  作者: つのたつ
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<1章 8話 守る為の力>

<1章 8話 守る為の力>


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


タウラースは僕の声なんて気にもせず、高く掲げたオノを、意識がないであろうユウナに向かって振り下ろす。


時が止まったかのように、ユウナとの思い出を思い出す。

ユウナに街を案内され、武器屋での会話。

「ここなら、大抵の物はそろってるわ。武器を強化したり、もっと強い武器は自分で素材を集めてこないとだけど、種類は豊富だと思う。」

「素材集めって、きっと危険な所で鉱石集めたりするんだろうな~」

「そうね。あっ、他にも、希にモンスターを倒して消えた時に、そのモンスターが使っていた魔法の魔石を落とす事もあるみたい。」

「それって、魔法を覚えている人間が死んだりしたら魔石が出てきたりすんの?」

「それはないわ。モンスターは魔法と契約するんじゃなくて、魔石を体に取り込んで魔法を使うって言われているから。」

「取り込んでるから、そのまま落とす事があるって事か。」

「九条くんはそのナイフで戦うの?」

「ん?あぁ。でもさすがにもっと違う武器が欲しいかな。リーチも短いし、さ」

売られている武器を見渡す。

剣や刀、槍、弓、斧、鎚、ボウガン等色々あるようだ。

ん?銃はないのかな?

「鉄砲みたいなのはないのか?」

「てっぽう?ごめんなさい、私にはよくわからないわ。」

「ほら、こういう感じの、引き金を引くと弾が出てくる・・・。戦争とかでよく使われたりしない?」

「戦争?モンスターとは戦うけど、人同士で争う事って聞いた事ないけど?」

人と人が争わない?

という事はミサイルとか戦闘機のような戦争の道具は存在しないのか。

なるほど、科学の発展は目的がないと間違った方向には進まないのか。

僕がいた世界でも争う事をしなければ、核とかは生まれなかったんだろうな。

皮肉なもんだな。人を殺す科学の発展が人の生活を楽にする事もあるし。


昔はモデルガンで遊んだり、ガンシューティングのゲームをよくやったもんだ。

おっと危ない。過去編で過去編に突入する所だった。


「じゃあ僕はコレにしようかな、軽くて片手でも使えそうだし」

そう言って、小太刀を選んだのだった。


「「ソレ」を造形して、何がしたいのか、何のために造形したいのかをよく考えろ」

というグレンのセリフと、石が爆発した映像が流れる。

「私、九条くんがすごい努力してるの、知ってる。だから、きっと大丈夫!」

そう言ってくれた昨日のユウナが頭に浮かぶ。

場面は現在に戻る。


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


パァン。ドカァーン!

オノを振り下ろすタウラースが、爆発し吹き飛んだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、」

小太刀を飛ばされ、空のハズの右手に銃が握られていた。

「こ、コレは・・・」

爆発音で気がついたのか、ユウナが、

「うぅん・・・」

と少し動く。

生きてる。

ユウナを、守るんだ!


両手で銃をガッチリと握りしめ、ユウナの元に足をひ引きずりながら近づく。

吹き飛んだタウラースがフラフラと起き上がり、落としたオノを掴もうとしたその瞬間に、

パァン。

タウラースのオノがはじかれる。

武器を取ろうとしたことを邪魔されたそのモンスターはこちらを睨み、咆吼する。

「ブモォォォォォ!」


「絶対に、守る!」

タウラースの顔を狙い、

「おぉぉぉぉぉぉ!」

ユウナをキズつけられた怒りより、守りたい気持ちでいっぱいだった。

ケガのせいか照準が定まらないが、射撃は得意だ。

僕は引き金を引く。


タウラースの顔に命中し爆発する。最初の爆発よりも大きい。

倒れ込むその巨体はジジジッと音を立て、完全に地面に着く前に消えていく。


完全に目を覚ましたユウナ。

「はっ!九条くん、大丈夫!?今治してあげる!」

ユウナは、自分の事よりも僕を心配してくれている。

「僕なんかより、ユウナはどうなんだ?その血は・・・?」

僕に回復魔法をかけながら、

「えっ?血なんて出てる?きゃあ、服が真っ赤!何コレぇー」

「んん?なんか平気そうだな」

クンクン。ユウナから甘酸っぱい匂いがする。

「やだぁ~。ラメスベリーが全部つぶれてる~。ちゃんと洗えば落ちるかしら・・・」

「なんだとぉ!」

血だと思っていた、この大量の赤い液体は果物の汁か!

でも、そのおかげで魔法が使えるようになった。

どうやら銃を具現化し、その弾を爆弾みたいにもできて、当たると爆発するようだ。

ガンメイク(銃造形)に、バーストバレット(爆裂弾)ってところか。

そんなネーミングじゃ中二病って言われるかな?まぁ大丈夫だと信じたい。

元々「ユウナを守りたい」って言って契約したからなのか、ユウナを守ろうとした時に反応してくれたのだろう。


ユウナの魔法で歩けるようになった僕と、ただの打撲と服が汚れたユウナは街へ向かう。

「仕事、失敗しちゃったね。」

「あんな化け物と戦って倒せたんだ、命があっただけいいさ」

「えっ?タウラースはどっか逃げたんじゃなくて九条くんが倒したの!?すごい、どうやって!?」

「コレのおかげさ」

右手に銃を造形する。

「魔法・・・?できるようになったのね。九条くんすごいじゃない。でもコレなぁに??」

「あぁ、存在しないんだったっけ。コレが、前に話した鉄砲だよ」

少し離れた所にある、木を狙って銃を撃つ。

ボンッ。メキメキメキ・・・。命中した弾が爆発し、木が倒れる。

「きゃあ!・・・すごい」


ギルドに失敗を報告をし、宿屋に戻る。

ご機嫌そうなルーシィが、帰ってきた二人を見て驚く。

「なんやそれ!ユウナどうしたん!?ケガしとるんか!?」

「ラメスベリーの果汁だから心配しないで。ありがとう。」

本気で心配した様子のルーシィが、安心して再びイスに座り直す。

「ほんまびっくりしたわ~。」

「で、ルーシィは髪の毛切って、何か他にも買い物でもしたのか?」

「!?」

「ん?美容室か何かに行ったんだろ?少し髪が今朝と違う。」

「ちょっと毛先そろえたくらいなんやけど、よう気付いたな~」

「あぁ?そりゃ気付くだろう」

「私、全然わからなかった」

「あと買うたんは、新しい服とかかな~。」

「じゃあ、私部屋に戻るね。おやすみっ」

なにやら不機嫌そうなユウナ。

「どうしたんだ?」

「さぁ~?ユースケと昼間何かあったんか?でもさっきまで普通やったしなぁ。」


じゃあまた、と僕も部屋に戻る。


ユウナ、どうしたんだろう。

気になって眠れない。

何度も布団の中でゴロゴロしてしまう。


「よしっ!」

布団から飛び起き、部屋を出る。

ユウナの部屋の前で深呼吸。

トントン。

「はい」

「あの、僕だけど・・・ちょっといい?」

「・・・どうぞっ」

やはり少し不機嫌そうだ。

「ユウナ、どうかしたのか?」

「別に!何でもないわ」

「昼間のケガ、痛むとか?」

「そんなんじゃない!」

声を荒げるユウナ。

「じゃ、じゃあどうしてそんなに怒ってるんだよ」

たじたじと僕が言う。

しばらく黙っていたユウナ。

「私も、よくわからないの。」

「は?」

「なぜだかわからないけど、さっき帰ってきてルーちゃんと3人で話ししていたらイライラしちゃって。何に対して、とか誰に対して、とかじゃないハズなんだけど。」

「なんだよそれ。具体的に何の話の時からだ?」

「・・・九条くんが、ルーちゃんの髪の毛の話をした時くらい。」


んん?

ひょっとして・・・。

まさか?

いやいや。

でもこの状況。

ないとは思うが・・・・嫉妬?

ユウナがジェラったって事か?


落ち着け九条佑介、童貞25歳。恋愛シュミレーションゲームは得意じゃないが、こんな時何か言うべき台詞があるハズだ!!

「ははは~、そんな事言って、ユウナは可愛いな~」とか、「それってジェラシーじゃないのか?そんぐらいでなんだよ」とか、何か言わなきゃ男じゃない!!

そんな事を頭の中でグルグルやっているうちに、

「・・たし・・って」

「へ?」

「あたしだって、前髪くらい、週に1度自分で切ってる!」

「ん?そんぐらい知ってるよ?毎週日曜日の朝に切ってるんだろ?」

「えっ?」

「ユウナの変化くらい、誰よりも先に気付くさ」


何かいい台詞を言わなくては、ここで嫌われたら今後の異世界生活に絶対支障が出る。何か、何かないか~・・・。

と、ブツブツ言ってる僕をユウナはキョトンとした顔で見ている。


キョトンとしていたユウナ、何かに気付いたらしく顔を赤らめる。耳まで、真っ赤っかだ。

「あ、ああ・・・私、何言って・・・きゃあ~」

と、布団に入り頭まで毛布をかぶる。


「もう大丈夫だから、九条くんおやすみ」

「お、おう、じゃあまた明日な」

結局何も言えなかった、と思って落ち込んだままユウナの部屋を出る。


バタン、と部屋のドアが閉まった後にユウナは毛布から顔を出し、顔が赤いままゴキゲンそうな顔をする。


はぁ~、とため息をつきながら自分の部屋に戻り、僕は布団に入る。


次の日、とても機嫌がよさそうなユウナがロビーの花に水をあげていた。

「おはよう九条くん、ルーシィ」

「なんや、昨日機嫌悪そうに見えたんは気のせいやったか~」

「さ、さぁ?」

ルーシィに言ったら面白がられそうだ。


「ん?何か言った?」

二人の会話は聞かれていなかったようで、ジョウロを片付けにユウナはそう言って物置へ向かった。


「さぁ~て、昨日は休みを満喫したから今日はごりごり働くで~」

指をポキポキ鳴らすルーシィ。

「ごめん、僕はちょっとグレンの所に行ってくるよ。だから、今日は2人で仕事に行ってきてくれ。無茶、するなよ」

「なんや、何でお師さんトコ行くん~?」

「魔法を使えるようになった事を、報告してくるんだ。」

「えぇ?!ユースケ、使えるようになったんか?」

「あぁ。」

と、手のひらに銃を造形し見せる。

「何やこれ・・・?」

「今度ゆっくり、コイツのすごさを見せてやるよ」

「それで、私を助けてくれたのよ」

「ふ~ん。まぁ、今度ゆっくり見せてもらうわ~」

そう言って、二人はギルドへ向かっていった。


僕は少し後に、宿屋を出る。

グレンの家に着いた。

留守か?それともまた昼間から酒でも飲んでるのだろうか?

そう考えていると、庭の方から人の声がする。

除いてみると、グレンがいた。

筋トレをしている。びっくりだ。

汗だくで、

「フンッ、フンッ」

と腕立て伏せをしている姿はあの飲んだくれの印象をかき消す。


「グレン、おはよう」

「おう、ユースケか」

僕に気付いたグレンは、タオルで汗を拭きながら近づいてくる。

「どうだ、石くらいは造形できるようになったか?」

「あぁ、石どころか武器を造形してやったぜ」

銃を造形し、グレンに見せる。

「コレは・・・?」

「あぁ、こうやって使うんだ」

と、ちょうど庭に流鏑馬(やぶさめ)で使うような的が2つあるので片方を狙う。

パァン。

的の真ん中に穴が空く。

「ほぉ。小型のボウガンみたいなモンか」

「それだけじゃないぜ、よっ!」

もう一つの的を狙い、バーストバレットを放つ。

ボン!

的が根元から跡形もなくなる。

「なにぃ!」

「へっ、どんなもんだい!」

驚くグレン。

「・・・すごいな、普通は何ヶ月もイメージトレーニングをして、追加効果がついた物を造形するのに。大したもんだ。」

「へへへ、あんたのおかげだよ。」

「んん?」

「何の為に魔法を使うのか、って教えてくれたろ。守りたい人を守ろうとしたとき、あんたの声が聞こえたよ。」

「ふんっ、お前自身の力だ。ワシは自転車の乗り方、最初だけ手伝ったにすぎん。」

「でも自転車は、最初だけできればあとはちゃんと乗れるようになれるぜ」

「小僧が、生意気言いやがる!」

頭をワシャワシャされた。

「困ったときはいつでも来い。・・・いや、困ってなくても、たまにはメシでも作ってやるから顔を見せに来い。」

「はい!ありがとうございます!」

そう言って、グレンにお辞儀した。


ギルドに向かう。

ユウナ達はもう仕事に行っただろうか。

ギルド内にはいないようだ。

魔法の練習がてら、簡単な仕事でもしておこう。


Cランク、鳥形モンスター討伐。

どう見てもカラスだが、ケラスというモンスターらしい。

一人で山場に向かう。

出た!これがケラスか!・・・って、カラスの倍の大きさはあるな。

鳥だけあって、素早いがゲームで鍛えた僕の射撃はものともしない。

後ろの腰に小太刀を持ってきてはいるが、2丁拳銃スタイルで次々と討伐していく。

20匹、討伐完了。ちょっとだけケガをしたが、念のために持ってきておいた、傷薬を使う程ではなさそうだ。


帰り道、一人の男が何かを草原で捜し物をしていた。

赤毛で茶色の瞳。イケメンだ。長身で両腰に長い剣を1本ずつ差している。

「どうかしたのか?」

「あぁ、ちょっと大事な物を落としてしまってね。僕にとってはどうでもいいんだが、無くすと周りがうるさいからさ」

「どんなヤツなんだ?手伝うよ」

「・・・ありがとう。助かるよ。ブローチなんだ、コレくらいの大きさで」

と、直径5㎝くらいの円を指で例える。

「そんな小さいの、見つかるかな~」

そう言って、一緒に探し始める。


1時間経過。


見つからない。

「ありがとう、見つからないけど、キミはもういいよ。イテッ」

木の枝で肩に小さなケガをする男。

僕は使わなかった傷薬を取り出し、その男に使いながら、

「ここまで手伝ってるんだ、最後まで付き合うよ」

「キミだってケガしてるのに・・・」

不思議そうに僕をみる男。男のキズは淡い光に包まれて消えていく。


ふと足下を見る。

何かの紋章が刻まれたブローチが落ちている。

「あった!おい、あんたコレだろ!?」

「よかった、これで怒られずに済みそうだ」

「よし、帰ろうぜ。」

「そうだな、本当にありがとう」


途中、色んな話をした。

「ユースケは、この国の人ではないのかな?」

「そうだな、ちょっと前にこの国に来た、って感じだ。なんでわかる?」

「いや、気にしないでくれ」

「なんだよ~」

「「ははは」」

と、仲良くリベルスに戻る。ギルドへの報告は明日でいいか。

その男は帰る宛はあるようだが、せっかくだから仲間を紹介したい、と宿屋に連れてくると、ロビーでユウナとルーシィがコーヒーを飲んでいる。

ユウナが後ろを向いている感じだ。先に僕たちに気付いたルーシィが、

「おっ、帰ってきおったで!ユースケ-!ん?その兄ちゃんは何や?」

振り向くユウナ。受付にいた老婆もユウナも同時に、僕が連れてきたその男を見て驚く。


「え?え?え?えぇぇぇぇぇぇ~~~」


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