天国への門はそれ程高くない
登場人物
A……わたし
B……門番ばーさん
C……初対面の人
A あなたはふと、疑問に思ったことは無いだろうか。仮にわたしたちが住む地上の、遥か上に天国があるのだとしたら、天国のさらに上には何があるのだろう。いったい、どれ程高く昇っていけばあるのだろう。
B お前さん、身長は?
A 156センチメートルですが、それが何か?
B はぁ、それじゃあギリギリアウトさね。諦めて右の門を潜りんしゃい。
A あの門は何ですか?
B 地獄への門じゃよ。
A 地獄⁉︎わたし、何か罪を犯したのでしょうか。
B いや、そうじゃない。
A じゃあ、いったいどうして。どうしてわたしが地獄へ行く事になってるんですか。
B 左の門を見てみんしゃい。あれが天国への門じゃ。
A なんか、物々しいですね……。
B あの門は人を選ぶ。150センチ以下の者でなければ通ることを許されぬのじゃ。
A まさかの身長制限……。
B だから、お前さんはあっち。
A ええー。納得いかないですよ。ちなみに、地獄へ行ったら、何をして過ごすんですか?
B 主に、力仕事じゃな。
A 向こうには150センチ無いと出来ない力仕事があるのか……?
B ちなみに、天国では「ですくわーく」じゃ。
A 天国も天国で嫌ですね……。まぁ、地獄の力仕事よりはマシかな。
C あのぅ、後ろ詰まってるんですけど。早くしてもらえませんか。
A え?ああ、すみませんなんか困惑しちゃって。
C いえいえ、わたしだって自分が死んでこんな所に居るの、まだ困惑してますし。しょうがないですよ。
A えっ、死んでるんですかあなた?
C はい。そうですよ。ちなみに貴女も死んでますよ。
A えっ!
C えっ!
A 気づかなかった……。
C きっと、死んだ時相当ショックだったんでしょう。多分。
A そうです、か……。
B お前さん、身長は?
C 150.1センチメートルですけど、それが何か?
A ああああ〜〜っ!!
B はぁ、それじゃあギリギリアウトさね。諦めて右の門を潜りんしゃい。
C あの門は……?
B 地獄への門じゃよ。
A いいじゃあないですか、0.1センチくらい。許してあげましょうよ。1ミリですよ、1ミリ!
B うるさいのぅ、此れは決まりじゃ。分かったらさっさと行け!
A はぁ、仕方ない。こうなればもう心を決めましょう。
C えっ、ちょっと!
A 強行突破!!!!
AはCの手を掴み、天国への門に向かって駆け出す。
ゴンッ
A ぐふぅっ
C おデコ大丈夫ですか!
A その時わたしは何故150センチ以下の人間でなければいけないのか、理解することができた。
B だから、その門は人を選ぶといったじゃろうに。
A 天国の高さは150センチしかなかったのである。