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初期練習作(短編)

不幸な男

 大変だ!

宇宙から小隕石が落下してきて、

自宅が壊滅する被害を受けた。

しかも昨夜女房に振られてしまったばかりだ!

この世界の神さまは何をしているんだろう。

不公平だ!

ダンと壊れた机を叩く。

俺には、これしか残っていない!

首に掛かったケースを取り出す。

アンティークの時計で、

中では女房の写真が笑っている。

俺の方は泣きそうだが。

も一度蓋を閉めた。


 あてもなくさまよい、

一軒のレストランに入ることにした。

腹ごなししないと何も始まらない。

大盛りの料理をオーダーした。

パスタは美味しかったのでおかわりした。

会計を済ませると、一気に懐が寒くなる。

俺に残っている価値はあるのだろうか。

早くも自問自答する。

解答はすぐに分かることになる。


 家に戻ると、人がわらわらしている。

口々に噂し、被害状況の写真を撮っている。

なぜか俺も一緒に写真を撮られた。

無意味に笑ってピースしてみる。

警察官もいる。気の毒そうに俺に話しかけてくる。

俺は災害保険に入っておけば良かったと思ったが、

隕石の落下も補償してくれるのか、

俺にはよく分からない。

知ってる人、誰か教えてください(泣)

もう遅いけどね……


 ネット上にあの写真が上がる。

動画まで投稿されているようだ。

一応スマホでチェックしてみる。

俺はきっと、死んだ魚の目をしていただろうな。

俺と壊れた家の写真に自虐コメントを残したが、

その時、コメ反応は一件も返ってこなかった。


 カプセルホテルに泊まり、

明くる日になってネットを見ると、

あの写真にたくさんコメントが付いていた。

勝手に俺の現住所まで記載されている!

削除要請をしたが、もう遅いだろう。

どうせ他人の不幸は楽しいんだろ。

おれは自分の蜜の味を噛み締めた。


 さて、一度家の様子を見に戻る。

家に着くと、家内が玄関先に居た。

あのネットの情報を見たらしい。

小さくニュースにもなったようだ。

久しぶりに楽しく話し、お互いをねぎらった。

そして家内は人ごとのように去っていった。

俺は予想外の展開に笑ってしまった。

助けてくれると思った……

夫婦の絆は、既に切れていたのか。


 時計のチェーンも切れそうだ。

俺はこれを捨てよう。

そして新しい生活を始めるのだ。

今からでも、きっと遅くはない。

神さまも見守ってくれるだろう。

つかず、離れず。

神さまとは、家内や近所の人を含めた、

全ての人のことなのかもしれない。

直接助けてくれることがなくても、

反対に足を引っ張ったとしても、

きっと人間関係には深い意義がある。

俺は一歩を踏み出し、過去に別れを告げることにした。

ここはみんなが暮らす世界であり。

人ごととは常に自分のことである。

そして俺にはまだ、みんながいてくれる。


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