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マンホール国家  作者: 尾山 湊洋
6/8

仮面の行政隊長

自分の小さなころの出来事を思い出し、気持ちを固くしたタカシ。

行政隊長の居場所まで、あと少し。


 マンホール国家


6 仮面の行政隊長


 さっきもらった地図を広げて行政隊長室を探してみると、このドーム状の本部の一番上にあるようだった。そこまでは専用のエレベーターで行けるらしい。エレベーターの乗り場に行くと、たった一人用のエレベーターしかなかった。専用だから、なのだろうか。

 ボタンを押してみたが全く反応しない。マーク的にはこのボタンで開くはずなんだけど。


「レビルさん…エレベーターが開かないんですけど…」

「…タカシくん、近くにカードリーダーとかそういうのあったりするかしら。」


 もしかしてこの横のやつがカードリーダーかな。ということはこれはカード式の認証システム、か…


「はい、カードリーダーがあります…」

「じゃあ右胸のポケットにあるものを出してちょうだい」


 言われたとおりに右胸のポケットの中身を出してみた。何だかキーケースみたいな形をしているものだった。でも鍵がついているわけじゃない。一体これは何なのだろう。

 レビルさんからの指示はまだ続いていた。


「その『ピッカー』をカードリーダーの方に向けて」


 言われるままにカードリーダーの方に向けると、その『ピッカー』というものから何本も小さな機械の腕が出てきて、あちこちをいじり始めた。そして、最終的には『ピッカー』からカードが出てきた。

 

「出てきたカードを使いなさい」


 本当にこんな風にできたカードで入れるのだろうか、と凄く不安になったけれど、レビルさんの言葉を信じて作られたカードをリーダーに通してみた。

 すると、エレベーターのドアが開いた。僕はびっくりしてカードを見つめた。まさか、こんなカード式のドアまでピッキングできるなんて……最先端技術というか、もはや超越した技術でもう訳が分からなかった。

 そのままエレベーターに乗り込んで、隊長室のあるフロアのボタンを押した。グングンとエレベーターは上へと進んでいく。この本部も凄く大きくて、まだまだ最上階へはいけそうにない。一体どれぐらいの大きさがあるのだろうか。普通のビル以上に高い。東京の六本木ヒルズぐらいありそう。


「……」


 下にいる人たちがとても小さくて見えないぐらいになった頃、エレベーターはゆっくりと止まってチン、とベルを鳴らした。ゆっくりとドアが開いた先には、大きなデスクと椅子があった。

 椅子に座っているのが、おそらく行政隊長……けど、様子がおかしい。全身を真っ黒い服で覆い、表情が読みとれないようにか、白い仮面をしている。仮面も不気味な表情で、僕は無意識のうちに手に力が籠っていた。


「貴様は誰だ」


 機械に通したような声。あの仮面の中に変声機でもついているのだろうか。それにしてもこの格好。こんな格好で行政隊の隊長だなんておかしすぎる。顔を見せずに部下に指令を出すのかと思うと変な怒りがわいてきた。

 ふざけている、こんなの。こいつはこんなふざけた格好で、戦争をしようとしているのか。


「名乗る名前などない、何で仮面をしているんだ!顔を見せろ!」

「……断る………貴様、まさか…」


 そういうと、彼は椅子から立ち上がり壁に立てかけられていた剣を持った。きっと、彼は僕が『破壊と再生の予言』のあの人間だと気付いたのだろう。ということは彼が破壊を企んでいるということになる。

 ……もしかして、戦わなくちゃいけないのか。僕はこの通り普通の高校生だし、剣道部とか柔道部とかそういう攻撃できるような部活に入っていたわけでもない。だから…きっと、勝てない……

 どうしよう、と焦り始めた時にレビルさんから通信が入った。


「タカシくん、」

「れ、レビルさん…!」

「タカシくん、あなたのズボンの左足にあるラインに触れなさい、きっとあなたなら使いこなせるはず」


 そっと触れてみると、ラインが見る見るうちに浮き出て立派な剣へと変わった。でも、僕は剣の扱いなんて知らないし、第一腕力も無いから、鍔迫り合いなんかになったら絶対に弾かれてしまうよ……

 弱音を吐きそうになったその時、レビルさんが言った。


「あなたにしかできない。頼んだよ、タカシくん」


 ……そうだ、僕しか、僕にしかできないんだ。ここで僕が諦めたらどうなる?これ以上にティネーロの人たちが苦しむ。あの隊員が、不本意に人を殺さなくちゃいけなくなる。この世界が崩壊する。そして、僕らの世界がどうなってしまうのか分からないけれど、決して良いようにはならない。

 どうして僕なのか、分からないけど…これが使命だというのなら。僕に対する使命なら…やるしかないんだ。

 今まで逃げてばかりいた、真面目に向きあったりなんかしなかった、そんな僕だけど。今は、弱音を吐いちゃいけないんだ。僕が、僕が変えなくちゃいけないんだ。


「おのれェェエェ!!」


 隊長が凄い勢いで斬りかかってくる。僕はそれを剣で受けるしかできなかった。向こうは強い力で何度も何度も刃を僕に向ける。僕もがむしゃらに剣を振るった。全く剣の使い方なんて分からない、でも僕はこいつを倒さなくちゃいけないんだ。

 何分も、何十分も斬り合いが続く。僕の腕の力にはもう限界がきていた。しかし向こうは息が切れさえしていない。強い…強過ぎる。もう、ダメだと思ったその瞬間…


 カッ!!!


 僕の持っていた剣から閃光が放たれる。すると隊長は閃光に怯んで一瞬動きが止まった。その隙に一気に僕はたたみかけた。隊長はバランスを崩し、着けていた仮面が地面に落ちた。

 僕は、固まった。



行政隊長の素顔が明かされます。

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