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マンホール国家  作者: 尾山 湊洋
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地下の世界

 普段生きている世界には、“表”があれば“裏”がある。ひょんなことから“裏”へ行ってしまう人が極稀にいるらしい。壁に頭を打ってとか、変なところで転んでとか。もちろんそんな話、信じられるわけがない。信じてなかった。―――少なくともあの日までは。


 マンホール国家


1 地下の世界


 ジリジリと肌を焦がすように照りつける太陽。今日は7月16日。夏休みまであと少し。今日も一日学校で過ごし家に帰る途中だった僕は、ふと考え事をしていた。今日話題になったことを思い出していたのだ。


「お前はさ、将来何かやりたいこととかねーの?」

「僕?…特にないかな。別に得意なこともないし、やりたいこともないし。親には稼げる仕事に就けって五月蝿く言われるし。」

「……お前、それでつまらなくねーのか?」


 友達の一言がずっと心に引っかかる。そりゃあ、つまらない。親の言いなりになって、生きていくなんて。僕にだってやりたいことがある。小さい時からの夢…それを話すたびに「無理だ」「やめておけ」「もっと安定したものを選べ」と言われ、やる気も萎えてしまっていた。今勉強しているのも、何の為なのか。将来の自分の為なのか?いや、正直親の為なんじゃないかと思い始めている。だから最近勉強面も下降気味。すると親に口うるさく言われ。全く、家に帰りたくない気持ちでいっぱいなんだ。

 しばらく家への道を歩いていれば、工事中の看板が見えてきた。下水管の修復工事らしい。しかしこの道を塞がれてしまうと僕はものすごく遠回りして家に帰らなければならない。家に帰るのは嫌だけど、この暑さの中にいるのも堪える。どうやら今は休憩中らしく、人がいない。そんなに長い距離でもないからちょっと走ればバレないだろう。そう思って僕はポールを飛び越えて中へと入り込んだ。丁度その時―――――


♪~♪♪~ ♪~♪♪~


 聞き覚えのない着信音。こんな音ダウンロードしていただろうか。例えダウンロードしていても設定した覚えはない。ずっと鳴り続ける僕のスマホから、メールではなく電話だと分かった。着信は、非通知。…なんだ、誰からだろう?

 通話ボタンをタッチし、スマホを耳に当てる。しかし、何も聞こえてはこない。もしもし?と言ってみても返事はない。イタズラだろうか。本当にくだらないことをするやつもいたもんだと思う。暫く待ってみたけれど、どうやらあっちからは切らないみたいだ。でも、何か話してくるかもしれないと思って、僕も切らずそのまま歩きだした。

 耳を澄ましても、向こう側の音が一切聞こえない。無音だった。車が通る音も、人が話している声も、風の音も聞こえない。ただただ無音。流石に怪しく思ったから、切ろうと耳から離した瞬間、足がカクンと落ちた。足の裏に地面の感覚は無い。ふと下を見ると、深いマンホールの穴。気がつく頃には僕は“落下”していた。


「うわ、あああああぁぁぁぁぁ―――――!」


 身体が落ちていく感覚。ひゅっと内臓が上に上がってくる気持ち悪い感じ。止まろうと壁に手を伸ばすが、全く届かない。マンホールってこんなに広いものだったっけ!?

 為す術もなく、重力に逆らえず落ちていく僕の身体。グングン深くまでいくが、不思議なことに終わりがまだ見えない。マンホールの下なら、丁度下水とかに落ちるはずなのに。…ああ、でも下水に落ちたくはない。ただ、だんだんとこれは終わりがないんじゃないかと不安になる。もし地面に落ちれば、まだ終わりがあるから一生懸命よじ登ればいつかは外に出られるかも、と思うが終わってないのだ。それに、これだけの速度で落ちているから地面なんかにぶち当たったら死ぬだろう。

 妙に冷静に考えている僕に、僕自身驚いた。高校にもなるともう騒ぐこともなくなるのだろうか?それとも、もうそんな元気もないぐらいに萎えてるのか?…まあ、そうかもしれない。夢も見れない。現実を叩きつけられてりゃそうなる。

 なんて考えていると、下の方から光が洩れてきた。まさか出口?…そんなバカな。マンホールの下は下水道なはず。灯りなんてないだろう。しかし、落ちるにつれてどんどん明るくなっていく。僕は止まる方法がないので素直に光の方へと落ちていくしかなかった。

 穴は終わりを迎え、バッと一気に視界が開けた。明るさで目が眩む。少しずつ目が慣れてきてやっと見えた世界は。


「何だ、これ…!?」


 そこはまるで東京のようだった。六本木ヒルズとかそんな高く目立つような建物はなさそうだったが、詰め込まれ溢れかえるように無数の家々やビルが敷き詰められていた。真ん中にはガラス張りの大きなドーム状の建物。しかし中は見えない。漆黒に光るガラスに覆われたそれは圧倒的な存在感を醸し出している。

 まさかこんなところに、こんなところが――――…なんて驚いている場合じゃない。考えてみれば穴に終わりがあったわけで、僕の身体はどんどん地面へ引き寄せられている。頭の中に過ったのは、バラバラに飛び散った僕の終末……

 そんなのは嫌だ!絶対に嫌だ!死ぬなんてごめんだ。空を描くように手を使ってもがいてみるけれど、身体は言うことを聞きもせず下へ下へと落ちていく。地面が近づいてくる。そして、死も。あと数メートル。堪らず僕は目を瞑った。もしかしたら助かるかもしれない、と気休めに持っていたカバンを胸に抱えてみたりした。

 数秒後、ダンッと大きな音と衝撃が身体中に走った。痛みは少し遅れてからじわじわとやってきた。目を開ければ、僕のカバンが吹き飛んで遥か彼方へ落ちていた。横たわっている僕の腕は、力をいれてもぴくりとも動かせない。ああ、もう僕終わったのかも。視界も端の方から黒くなっていく。だんだんと薄れゆく意識の中、何かが近づいてくるのが見える。一体なんだろう、二つの動くもの。それすら認識できない。僕はゆっくりと目を閉じ、意識を失った。


「人が降ってきた!?」

「ああ、確かに降ってきた」

「もしかして “表”の人間…」

「……『破壊と再生の予言』の通りだ…」


初めて書いた連載を加筆・修正しながら掲載していきます。

まだまだ文章力がないのは大目に見てくださいね(笑)

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