無課金として、負けられない戦いがある。
ついに戦闘シーンです! 全神経注ぎ込んだのでぜひ読んでみてください
バトルコートDには、集合の10分前であったが既にクロナがスタンバイしていた。
「リュウガ、遅かったじゃないの。まあ、てっきり怖気ずいて来ないものだと思っていたから、少し意外ね」
「集合時間には遅れていないだろ、それにこれは、あれだ、レディーファーストってやつだよ、俺が先に来てたら、紳士じゃないってわけだ、わかるか?」
「全く意味がわからないわよ......」
大丈夫だ、言ってる俺自身も意味がわからない。
「まあいい、お前が俺に勝てるだなんてとうと昔の話だよ。最後に戦ってから1ヶ月は経っているし、俺にはレア度Zのモンスターだっている」
「あら、じゃあ1ヶ月前までの戦績は覚えているかしら?」
「ああ、覚えているさ」
クロナとの戦績は50戦5勝45敗。初めのうちは経験の差から俺が優勢だったが、クロナが課金し始めてから状況はまるで逆転している。さらに現時点で俺のランクが200なのに対してクロナは240、その差は歴然とも思える。
だが、今回は違う、違うんだ。だから俺は勝つ! 勝ってみせる!
「俺は今日、この瞬間から本気を出す! 行くぜ‼︎」
「いいわ、叩き潰してあげるから‼︎」
「「バトルアクション、起動‼︎」」
俺とクロナの掛け声で、戦闘が始まった。
それぞれの足元に魔法陣が描かれたそれは、今は青色をしているが、味方モンスターが傷つくに連れて色が黄色、赤色に変わり、真っ黒となった時点で、そのプレイヤーは敗北となる。
「行くよ、キヨミ、ヤヨイ、FTR-00‼︎」
クロナの繰り出したモンスターは全てレア度Sのモンスターだ。清流守護神・キヨミは水魔法使い、邪馬英知の王・ヤヨイは主に土魔法使い、そして、FTR-00・バージョン零は機械近接型だ。
NFAの世界観はかなりアバウトで、中世から近未来、日本から欧米まで色々なものをモチーフにしたモンスターがいる。
クロナが使うモンスターは全て日本のものがモチーフとなっている(本人曰く)が、時代が全然違っている。
「頼んだぜ、ミレ、ゴブリン、スライム!」
こう発して俺もモンスターを召喚させる。
「親方殿ぉ! またこうして共に戦えること、感謝してますぜぇ!」
そう言ったのはゴブリンだ。NFAでは原則、二足歩行のモンスターのみが人語を喋るといわれている。ちなみにスライムは、ゴブリンの隣でぴょこぴょこと跳ねている。存在感のなさがウリのモンスターだ。
「ゴブリン! 今回もお前の活躍には期待しているからな!」
.....期待しているのはミレの方にだが、まあいいだろう。
しかし困った、水魔法使いと土魔法使いは灼熱魔法使いであるミレには苦手な相手だ。しまったなあ......完全に忘れていた。
まあいい、今更どうしようもない。ここは気にせず行くしかねぇ!
「あれぇー? そのゴブリンとスライムがレア度Zだって言うの? リュウガもなかなか面白いことをするね!」
クロナが俺を挑発する。言われるだろうと思っていたことだが、いざいわれるとやはりいらつく。
「ええい違う、これはコスト不足だ! お前こそ、1ヶ月前と使ってるモンスターが変わらないじゃないか、もしかして、ガチャの運が無くなったんじゃないだろうな? 悪いがその運、全部俺がもらってたみたいだぜ!」
「うるさいわね! もういいわ、キヨミ、ヤヨイ、FTR-00、やっちゃって‼︎」
「ゴブリン、スライム、お前らはミレの援護を頼む! ミレ、お前は自分のやり方で相手を倒しにいってくれ‼︎」
「了解しました、リュウガさん!」「期待以上の働きってのを見せてやるぜぇ、親方殿!」
さあわ本格的に戦闘が開始された。ミレが序盤にどう動いてくれるのか、楽しみだーーーー
「神に歯向かいし叛逆者よ、灼熱を以て罪を償え! 必殺、ゴッド・アークボルケーノ‼︎」
......あれ? ミレさん? もう必殺技使っちゃうんですか、おーい、ミレさーん。
俺がそんなことを考えている間に、ミレは手にした槍を地面に突き刺し、何やら呪文を唱え始めた。
いや、あの、ねぇ、別に構わないけど、もうちょっとバトルしたい気もしたんだよね俺。
その刹那、
文字通り、黒い炎が爆音と共に槍を突き刺した地面から噴き出した。それは瞬く間に同心円状に広がっていきーーーー
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
一瞬にしてモンスターを飲み込んだ! なんて威力、おそらくこの一発で勝負は決しーーーー
あれ?
断末魔をの叫びは相手モンスターではなかった。いや、確かに相手モンスターも炎に包まれ相当なダメージを負っているのだが。
この声の主、まさか!
「ゴブリぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃン‼︎」
炎に灼かれていたのは相手モンスターだけでなかったのだ。絶対防御システムにより俺に被害はないが、なんと味方モンスターのゴブリンが大ダメージを受けているではないか!
俺は急いでゴブリンの元に駆け寄った。
「ゴブリン、ゴブリン、大丈夫か⁉︎ ちくしょう、どうしたらいい、どうしたらいいんだ⁉︎ よくもゴブリンをこんな目に! 許さんぞクロナぁ‼︎」
「私は全く関係ないでしょ‼︎ ていうかこれ、どういうことなのよ⁉︎」
いやぁ、こんなときもツッコミ精神を忘れないクロナはやはりすごいと思う。って何考えているんだ俺は。
「親方殿、あっしはまだまだマシな方だが、スライムがスライムが......」
そういえば、スライムがどこにも見当たらない。まさか!
「親方殿、スライムが、この暑さで蒸発してしまいやした‼︎」
「スライムぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ‼︎」
スライムは完全に蒸発していた。もはや原型、それ以前に物体として残ってすらいない。
これじゃあ勝負どころじゃない、なんとかしてミレを止めなければ。
「ミレ! もういい、やめてくれ! このままでは、みんな燃えカスになっちまう、頼む、その火を止めてくれぇぇぇ‼︎」
「お前も神に歯向かう者か?」
ギロリ、とミレがこちらを睨む。
「ヒィィ‼︎ なんでもないです、ほんとにほんとに、なんでもないですぅぅ‼︎」
振り返ったミレは全くの別人だった。唯一変わらないメイド服がなんともシュールであるが、そんなことを考えてる暇はない。
「バトルは中止! 降参、降参する‼︎」
こうして、俺の降参によりバトルは強制終了。俺の負けとなった。
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「バトルは......一応私の勝ちね、じゃあ、私の言うことをききなさい」
「いや、その理屈はおかしい」
バトル終了後、俺とクロナはバトルコートDの外、待ち合わせ所のベンチで話をしている。
そのバトルコートDであるが、さっきの一撃によりあちこちが溶けてグニャグニャになり、まるで大きな現代アートだ。まあ1日経てば運営の働きにより元通りになるから、都合がいい話である。
「しっかし驚いたわ......レア度Zの攻撃があんなにすごいだなんて、私のモンスターもそうとう傷ついたわよ」
はぁ。とクロナは溜息を吐く。ちなみにモンスターはバトル終了後、タブレットの"モンスター全快"のボタン一押しで元通りになる。モンスターがデータであることを印象づけるこの機能だから、俺はあんまり好きじゃないけどな。
「まあなー、俺も驚愕一言って感じだ」
「で、私からのお願いなんだけど......」
そう言ってクロナは俺に体を寄せ、顔を近づける。顔が近い。俺の頬が赤くなるのが自分でもわかる。
「その......私と......付き合って、くれないかしら?」
「......はい?」