一日目。最終日
「願いを叶える箱庭にようこそ。わしのことはガードナーとでも呼んでくれ」
初老の男は木でできた門を絞めながらそう言った。ここは高い木の壁で囲まれている土地。なんでも、願いが叶うらしいが、親の奇病を治すための薬が欲しいなんて願いが叶うとは思えない。中央には大きな屋敷、門の近くに小さな木の小屋があるくらいで、後はちらほらと木が生えている程度だ。ほんとにそんな場所で願いが叶うんだろうか。
まあ、そんな話を聞いたってレベルで元より期待してないんだけどな。
午前10時
屋敷の方から執事がやって来た。お迎えと言うわけのようだ。
「お客様。わたくしの事はサポーターと御呼びください。では、屋敷の方に案内します」
何故か本名を言わない、気にしても仕方ないからとりあえず着いていく。
午前11時
屋敷の広間には男が椅子に座ってくつろいでいた。かなり身なりの良さそうな格好をしている。屋敷の主だろうか
「あまりなんもない屋敷だが、くつろいでくれ。俺の事はプロジェクターとでも呼べ。サポーター、中庭にでも案内したらどうだ?」
「了解しました」
これから中庭に向かうようだ
正午
殺風景な中庭だ。おっと、庭の真ん中に箱が落ちている。
「うむ、どこかで見たような箱ですな」
とりあえず持っておくか。
午後2時
「ここは資料室でございます」
沢山の本が並べられているが、どうにも気になったのは、教授からの手紙と書かれた箱。中には2通の手紙が入っていた
『君は家族として作られた。だから、気にする必要は無いんだよ。プロジェクターへ』
『さて、プロジェクター。紅茶でも飲みながら話をしよう。飲めないって?お茶の葉でもカップに入れておけ』
午後4時
「はて、教授が御亡くなりになられてからどれ程過ぎたのでしょうな」
教授?いったい何者なんだ?
「おっと、すみません。教授はこの屋敷の主人でございます。もう一度会いたいのです、それがわたくしとプロジェクターの願いです」
午後6時
サポーターとフラフラ歩いていると走ってきた少女がぶつかってきた。
「あら、お客様かしら。私はゲージと名乗ってますわ。あっ、私の箱返して」
ゲージは中庭で拾った箱を奪い取ると、走っていってしまった。
「あれはゲージの箱でしたか」
午後8時
つい近くに何故か置いてあったペンキの缶を蹴飛ばし、地下に続く階段に落としてしまった。階段を大変な状態にしてしまった
「少々お待ちください」
とりあえず缶だけでも片付けようと思ったのか、地下に降りていく。着いていくと、地下は妙な広い空間になっており、真ん中に丸いテーブル、その上にカップが二つ。そして、何かの肖像画が飾られていた。
「教授。まさかこんなところでわたくしの願いが叶うとは。」
どうやら教授の肖像画らしい。今まで見つけられなかったのだろうか。
午後10時
プロジェクターの所へ戻ると。
「ペンキ、足につけて来たのか」
あっ、くっついたペンキがここまでの足跡を作っていたようだ。
「全く」
プロジェクターはペンキの足跡を辿って行ってしまった
午後12時
何かが砕ける音がして急いでその方向に向かう。
「もうやだ。私は何のために作られたの?」
ゲージは足下にある砕けた箱の欠片で自分の首を掻き切った。
「プロジェクターには2通の手紙を残した教授ですが、ゲージにはあの箱しか残してはくれなかったのです」
意識が暗転する