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プロローグ
満開ではないが、咲き始めた桜の花に迎えられ、正門を潜り抜ける。
桜の木々が覆いかぶさるように、頭上に枝を伸ばす並木を、大学の入学式が行われる大講堂の方へと歩いた。
大講堂の脇に1本だけ離れた場所にあった桜の木に近づいて、上を見上げる。
その遥か昔から此処にあったであろう老木、悠々と枝を広げた大木は、満開だった。幻の様に可憐に咲いたサクラ。
チクリ。
小さな何かが、心の奥底を刺激した。
こんなにも雄大で、優しげで・・・そして。
サラ。
不意に風が吹いた。サクラの花びらが舞う。
舞い落ちる花弁は、まるでユキが降っているみたいだ。
ユキ・・。
俺は、ゆっくりと後ろを振り返る。




