戦いの前奏
「きゃっ」
「……っっ」
突然の悲鳴に驚いたのか、優愛が意外とかわいらしい悲鳴をあげ、無言でソフィアが扇にしがみつく。
右腕に抱きつかれたまま扇が辺りを見回すが目に見える範囲で変化はない。
しかし、少しするとドシーン、ドシーンと何かの足音のような音がかなりのペースでこちらに近づいてくる。
扇はいざという時に動けるようにやんわりとしがみついているソフィアの腕をはずす。
ソフィアが泣きそうな顔をしたので見捨てるわけじゃないという意味を込めて手を握る。
思いが伝わったのか、ソフィアの表情は少し穏やかになった。
優愛は刀を抜いて身構える。
扇たちがそれぞれ警戒をしていると道の横にある木の間から必死になって一人の女性が出てくる。
その女性に扇が声をかけようとした瞬間。
ドーーーン!!!
ものすごい音を立て、木々を派手に吹き飛ばしながら巨大な棍棒を持った青い肌の190センチほどの大男のような怪物が飛び出してくる。
運悪く木の飛ぶ方向にいた扇は、とっさに握っているソフィアを引き寄せ、いわゆるお姫様だっこをしてその場から飛び退く。
「あっ」
ソフィアが声をあげるが気にしている暇などない。
元の世界での扇なら一人ならともかく人を抱えてかわすなどという芸当は不可能だっただろう。
しかし、メディによって身体能力をあげられていたらしく余裕を持ってかわすことができた。
「あっぶねー」
先ほどまでいた場所に木が突き刺さっているのを見て扇は冷や汗をかいたあと、優愛が無事かどうかを確認するため辺りを見渡す。
刀を持ったままの優愛が遠くに無事に立っているのを見て扇は安堵の息をもらした後、先ほど飛び出してきた女性に青い怪物が向かっているのを見つける。
ちょうど扇からみて優愛の反対側に倒れている彼女は青い怪物(あれがおそらく魔物というものだろう)が向かってきているのを見て顔を恐怖にひきつらせる。
女性はあわてて立ち上がろうとしたが顔をしかめて、また倒れてしまう。
おそらく足をくじいてしまったのだろう。
「ソフィア、ここにいろよ」
扇は抱えていたソフィアを立たせてから、女性と魔物に向かって走り出す。
「あ、朝比奈サン!」
引き留めるようにソフィアが叫ぶが無視して走り続ける。
信じられないほど扇は速く走ることができた。
メディによる身体強化と重い装備を身につけていないおかげだろう。
魔物が棍棒を振り上げ、女性に向かって振りおろす。
「うおおおおおお!!」
扇は雄たけびをあげ棍棒の下へ飛び込み、女性を抱えて転がり出る。
ズドオオオオオン!!
ものすごい音を立て、棍棒が地面へめり込む。
思ったページ数で物事が進まない……。
少しだけ戦闘っぽいことをしました。
攻撃かわしたりとか。
本格的な戦闘は次回。