変人と強気とヒキコモリ
かなり大きめに響いた声に対して、また別の声が錯乱気味に答える。
「ワ、ワタシはヒキコモリなんですよ!? 人間だけでも怖いのに、何で魔物までいる世界に連れてこられなくちゃいけないんですか、一体何ができるというんですかっ!?」
その声は、そのままうわーんと泣き始めてしまう。
「そんなのあたしだって知らないわよっっ。でも、このままここに居たってどうにもならないから、さっさと移動するの!」
どうも二人の女性が口論をしているらしい。
……っていうか、どう考えても同類だな。
会話を聞く限り、まず間違いなく扇と同じようにメディに拉致られた人たちのようだ。
喧嘩を仲裁しようという思いと同じ世界の出身者に会えたうれしさの両方を持って、扇は二つの声に近づいて行った。
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少し歩くと二人の姿が見え、扇は足をとめた。
その間も口論は続いていたが、今は疲れたのか静かになっている。
いや最初は口論だと思っていたのだが、実際は動こうとしないヒキコモリの女性をもう一人が移動するように説得していたらしい。
腕を組んで困った顔をしている、腰に剣を差して革の鎧を着たいかにも剣士といった格好をした黒髪の少女と地べたに座り込んでいる黒いローブと三角帽子を身につけ、木の杖をもった魔法使い風の金髪少女の二人が向かい合っていた。
両方とも少し安っぽい感じはするが、まともな装備を身に着けている。
「どうも、こんにちは」
扇が自分の装備との差に少しだけショックを受けつつ、声をかけると二人は驚いたようにこちらを振り返り、次に肩の力を抜いた。
「あー、あんたもあのクソ女神に連れてこられた人ね、って何であんた制服姿なのよ? 装備もらわなかったの?」
剣士な少女が不思議そうな顔をしながら問いかけてくる、どうも扇が制服姿だったおかげで同類だと理解したらしい。
「もらったぞ」
扇は右の袖をめくって腕輪を見せる。
「は、それだけ?」
「おう、オシャレだろ」
悔しかったのもあり扇がニヤリと笑ってみせると剣士少女は呆然とした顔をした後、ぶつぶつと呟いた。
「何であたしの周りにはこんなに厄介そうなのが集まるのよ……」
何かひどく疲れた声を出す少女に扇は声をかけた。
「おいおい、厄介とはご挨拶だな。俺はただのロクな装備も身につけていない、よく変人と呼ばれるだけの男だぜ?」
扇が肩をすくめると剣士少女は髪を振り乱しながら叫ぶ。
「それのどこが厄介者じゃないっていうのよっ」
なかなか難しいものですね。
何か感嘆符を減らせる良い方法がありましたら教えてください。