あんまりな贈り物
光の塊は扇に当たると体にまとわりついた。
熱くはないが、まぶしくて目を開けていられない。
体の中に何かが入ってくる感触とともに、徐々に光が弱まっていくのが瞼ごしに感じられる。
何が入ってきているのかは分からないが、不思議と嫌な感じはしない。
おそらく、これがメディの言っていた最低限の能力と装備を与えるということなのだろう。
光が完全に収まったころ、目を開けて立ち上がった。
なんか俺、さっきから寝たり立ったりを繰り返してる気がするな……。
自分の行動に苦笑しつつ、体に目を走らせる。
別段、何かが変わっている気がしない。
どんな能力が増えたのかが分からないというのもあるけど、なによりも見た目が。
剣や杖といった武器は何も持っていないし服装だって意識を取り戻した時のまま、つまりは制服だ。
注意深く体を見回していると、右手に腕輪をしているのを見つけた。
中央に水晶のような石がはめ込まれた意匠の凝らされたもので、なかなか高級そうである。
「おー、オシャレ」
あと靴も履いているようだ、さっきまでは裸足だったのでありがたい。
しばらく体を探っていたが、どうにもそれ以上の変化はないらしい。
つまり、今の俺の装備は腕輪のみということだ。
RPGの最初だって剣とか持っているのに……。
「もしかしてメディの話を横になりながら聞いていたせいで怒らせちまったのかな?」
おそらく正解だと思われることをつぶやきつつ、今後の行動についての考えを巡らせる。
先ほどメディは返さないとか何とか聞き捨てならないことを言っていたし、少なくてもしばらくはこのメイガルドで暮らしていくと考えたほうがいいだろう。
それなら戦える力があるにこしたことはない。
だから装備品がしょうもないのは仕方がないから、町に行って何か武器を手に入れるべきだ。
魔物がいるらしいから武器屋ぐらいあるんじゃないだろうか。
っていうか一人だとなんか怖いし、人がいるところに行きたい。
「よしっ、まずは町や村を探そう」
当面の行動を決めた扇は、まずは森を抜けるために歩き出す。
―――時間を取り戻した森の中は、さまざまな気配と音がしている。
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しばらくした後、森の音に扇の鼻歌が小さく交じっていた。
一人で見知らぬ森を歩くのはさびしくて怖いので、本当は声に出して歌いたかったのだが大きな音を出すと魔物が出るかもしれないと思い、我慢した結果だった。
いきなり異世界に連れてこられたんだから、情けないとか言わないでほしい。
ここにはいない誰かに言い訳をしていると森の中にまた新たな音、いや声が響く。
「うだうだ言ってないで早く立ちなさいっっ!!」
改善点があると教えていただけたら嬉しいです。
次回は仲間?ができます。