はた迷惑な女神様
突然響いた声に驚いていると、視線を向けていた空にいつの間にか一人の杖を持った女性が浮かんでいた。
近いような遠いような不思議な距離にいる。
胸の大きい蠱惑的な容姿と神々しさを兼ね備えた彼女は笑い、続けて言った。
「私はメディリナ。混沌と運命を司るこの世界の主神だよ。メディって呼んでね。この世界、メイガルドにみんなを連れてきたのは私なの。みんなきっと混乱してるだろうから簡単に説明するね」
……なんかメディとかいう彼女が説明をしてくれるらしい。
ずっと上を向いてるのは疲れるし、寝っ転がって話を聞くことにしよう。
扇は意識を取り戻したときと同じように仰向けに寝た。
ちょうど真上近くにある小さいほうの太陽のそばにいるので無理なく見上げられる。
「な、なんか一人やたらと失礼な態度で聞いてるのがいるっ!」
どこかショックを受けたような顔をするメディを見ながら話の続きを待つ。
気を取り直すようにせき払いをした後、メディは続けた。
「私は異世界から百人の子供たちをこの世界につれてきたの。だってそっちの方が世界が面白くなると思ったから」
メディは困った顔をして肩をすくめた。
「この世界はもう終わり始めてるの、魔王と魔物によって人間はあと数年で間違いなく滅びちゃうわ。そんなの結末の分かっちゃった演劇みたいで何も面白くないと思わない? 滅びるか滅びないか分からないくらいがおもしろいのにね」
だから、とメディは続ける。
「私はこの世界にイレギュラーな要素を入れることにしたの、これから先の展開を面白くするために。だから私は世界中のあちこちへ適当にあなた達を配置したよ。私は別にあなた達に魔王を倒せとは言わないから好きに生きてね。ただ私はあなた達によってこの世界がどう変わっていくか、それを見て笑いたいだけだから」
……どうもメディはあまり人間を大切には思っていないようだ、ただ自分がどれだけ楽しめるかそれしか考えていない。
最初はかわいらしく感じていた笑顔が今は恐ろしく感じる。
「あー、そうそう。私、あなた達を元の世界に返す気ないから。せっかく連れて来たイレギュラーがいなくなったら面白くないもんね。でもどうしてもというなら、私をとても楽しませてくれたら考えてあげようかな」
爆弾発言をしたメディは徐々に体を薄れさせていく。
「最後にあなた達に生きていくために必要な最低限の能力と剣や杖等の装備をあげるね。それを磨くも、腐らせるのもあなた達しだいだよ。私が消えたら止まっていた時間が動き出すから、そこからこの劇のはじまりだよ」
どうも感じていた違和感はまわりの時間が止まっていたかららしい、おそらく気配がなかったのも木がやたらと硬かったのもそれが原因だろう。
「これ以上のこの世界の情報は自分たちで勝手に集めてね、私はもう説明に飽きちゃった。それじゃ、バイバーイ」
消え去る瞬間メディの杖からあちこちにいくつも光の塊が放たれ、そのひとつがこちらに向かってくる。
光が当たる瞬間、近くにもう二つ光が落ちるのを見た気がした。