第65話 春の嵐作戦(前)
第65話『春の嵐作戦(前)』
1943年4月10日
フィンランド/カレリア地峡
カレリア地峡スンマ地区。『冬戦争』開戦から約4ヶ月半。空が紅に染まりつつある夕刻。4月に入っても雪解けの遅い、典型的なフィンランドの町。その周囲は急峻な陸が北から南に走り、近郊の針葉樹林の葉はかすかに色彩を変えて、柔らかなもえぎ色を示していた。肺を突き刺すような大気には、早くも春の香りが仄かに漂っている。それはぬかるんだ大地の泥の匂いであり、チューリップの香りであり、納屋で乾燥しつつある小麦の芳醇な香りだった。ズキンガラスの群れが漆黒の翼を羽ばたかせ、不気味な鳴き声を上げながら木々と止まっている。そのカラス達が見据える先には、スンマ地区防衛を担うフィンランド軍第2軍団隷下の第5師団所属、第14連隊の姿があった。
人間を食い物とするこの捕食獣の中には、有史以前から培ってきた“血を嗅ぎ分ける鼻”――のような、第6感にも似た不思議な才覚が存在するようだ。人間が生命活動を続ける中で、自分達以外の何ものかを糧として消費しようとする時、そしてした時、その光景はカラスの瞳に焼き付けられ、収斂される。原始の彩りを帯びた時代から、人間の野蛮だが、同時に効率的で生命力溢れる光景を目の当たりにしてきたカラスは、その相近な進化を続けてきた。獲物を群れで追い立て、残飯をかっさらい、死肉を頬張る。その数世代にも渡る生命の犠牲を基にカラスは進化を続け、高度な頭脳と人間らしい狡猾さを得たのだ。
カラスは耳を澄まし、大気を嗅いだ。微かに、本当に些細なものだが、どこからともなく火薬の匂いが風に乗って流れ込んできていた。そしてそこには、凍てつく冬空を突き抜ける拍動が――存在した。それも一つではない。十、百、千とその単位を爆発的に増やし、共鳴して嵐のような唸りを上げるのだ。その動きは決して滞らず、止まることもなかった。カラスは野生の本能に従い、飛び去った。
全てが勃発したのは、それから数分と経たずしてのことだった。突然、地平線の彼方から一筋の閃光が走ったと見る間に数十発の152mm榴弾がフィンランド第14連隊の司令部前に躍り出て、大地を穿る。舗装された地面は悲鳴を上げ、榴弾は盛大な音と破片を撒き散らしたが、その声は瞬時に掻き消された。第2弾の、何百発という榴弾の雨音がスンマの大気を支配した。
「der Notfall!!(緊急事態)」
スンマ近郊、燃え滾る焚き木の前で暖を取っていたエルンスト・バルクマンSS伍長は、マフラーを頭に巻きなおし、70口径75mm戦車砲の重厚な砲身に垂れた革手袋をはめると、Ⅴ号戦車『パンター』の車体を駆け上った。このパンターD型はドイツ陸軍最新鋭の戦車であり、万能中戦車パンターの記念すべき初量産モデルでもあった。史実の反省から足回りが整備され、信頼性は幾分か向上していたのは確かだったが、それでもトラブルは続いていた。
スンマ地区――即ち、冬戦争の最前線たる『マンネルヘイム線』上に配備、展開していた武装親衛隊第2SS装甲師団『ダス・ライヒ』に報告が届いたのは、ほんの10分前であった。ヴィープリ-レニングラード間を結ぶ交通の要衝の町、スンマ中央部に突如として大規模な砲撃が始まり、ソ連第7軍の3個狙撃師団と1個戦車旅団が攻勢を開始した。ソ連空軍もまた、大規模な空襲と対地支援の為、北上している。ソ連海軍はクロンシュタット湾から多数の戦艦、巡洋艦、駆逐艦で構成された艦隊を差し向けているという。
1943年4月10日、こうして開始されたのが『春の嵐作戦』――であった。この一連の攻勢は、ソ連軍が農民の第2次徴兵の完了、戦車・航空機・大砲の製造本格化、そして軍部に吹き荒れる粛清の嵐が強まったことを暗に仄めかしていた。スターリンは冬解けを始めつつあるフィンランドにこの増援戦力を送り込み、一挙にマンネルヘイム線を突き崩して背後に蠢くEU軍と直接対峙する腹詰まりであった。今回のスンマ地区攻勢もその一環であり、この地域を突き崩されればマンネルヘイム線は突破され、瓦解する。しかし一方で、ドイツ軍を含めたEU軍は戦力の再編成と補給の万全化を図るべく、ヘルシンキ以西までその本隊戦力を後退させてしまっていたのである。これは冬戦争が1月下旬から小康状態に入ったことを受けての戦略であり、現時点でマンネルヘイム線上に展開していたのはドイツ軍の第2SS装甲師団と第7装甲師団、第5軽師団の3個師団のみであった。第7装甲師団と第5軽師団はエルヴィン・ロンメルの第1緊急即応集団隷下の師団である。
グレゴール・アイヒンガーSS兵長がギアを入れ替えると、パンターは地を蹴るように針葉樹林の合間に繋がった林道を進んでいく。第2SS装甲師団第2装甲連隊第2中隊所属の1輌を操る戦車長バルクマンは、どこまでも続く外の光景は見るに堪えない――と感じていた。一度道を間違えれば、若しくは森林の中を進んでいけば、たちまち自分達は方角を見失ってしまうだろう。そう考えつつ、展視孔から外の情景を眺め続けた。同じように林道を走るⅣ号戦車の尻ばかりが視界に入る。
ソ連第7軍第20重戦車旅団との対面は、それから間も無くしてのことだった。T-26を中心とする複数の戦車の車列がスンマに侵入し、けたたましいエンジン音を放っている。かろうじて砲撃を生き残った道沿いのトーチカでは第14連隊のフィンランド兵が陣取り、自国製の対戦車銃『ラハティL-39』を戦車部隊に定めていた。
フィンランド陸軍が開発したラハティL-39対戦車銃は、史実では冬戦争に試作品が2挺、継続戦争では約1800挺あまりが製造された対戦車銃である。口径長65mm、総重量50kg超というところから『象撃ち銃』の渾名を持ち、Il-2『シュトゥルモヴィーク』対地攻撃機用の“対空機銃”といった派生型もある。特徴はなんといっても20mmという凄まじい威力であり、これによって機銃陣地やトーチカ程度なら十分に対処出来た。また、T-34やKV-1に対しても、ある程度有効であった。
「発射!!」
上官の命令を受け、ハッキネン一等兵は引き金を引いた。ラハティL-39は轟然と振え、20mmの対戦車弾が放たれた。大気を裂き、一直線にT-26の展視孔に突っ込むと、次の瞬間には戦車内部から断末魔が漏れてきた。平顔の戦車長が頭を仰いで死亡し、真っ赤な血を噴水のように垂れ流していた。第2射はそれから間も無くしてのことで、別のT-26の燃料タンクが狙い撃ちにされ、車体後部から鮮紅の業火を噴き上げた。
ハッキネン一等兵は耳に空薬莢を押し込んだまま、それを静観していた。2輌目のT-26は再起不能に出来たが、その後ろにはまだT-26が13輌残っている。
「何だあれは!?」
T-26の車列に混じる1輌の戦車を見て、ハッキネンは瞠目した。T-26がまるで赤ん坊のように見えるその巨大な戦車は、煙幕の中から抜き出てきた。まるで怪物だ。前方にそそり立たせている152mmの戦車砲が、それを物語っている。
KV-2重戦車『ドレッドノート』。大型砲塔を意味するKV――の呼び名を冠するこの重戦車は、スターリンの恐るべき玩具であるKV-1重戦車と152mmM-10榴弾砲を掛け合わせて誕生した、非常に不格好な外見をしている。砲塔が異様に大きく、そして車体も巨大であることからドイツ兵の間では『ギガント』の渾名で呼ばれていた。冬戦争時には試作品が突貫投入され、内1輌はフィンランド軍のボフォース37mm対戦車砲の対戦車弾を48発を命中させられたにも関わらず、砲塔前面で110mm、側面75mmの重装甲はそのことごとくを弾き返し、全く支障を来さなかったとされる。
ハッキネンは自身の頬を冷たい汗粒が滴り落ちるのに気付いた。それは背中にも流れている。身体の震えは一向に止まらないが、それは寒さのせいではなかった。歯をがちがちと震わせ、目を血走らせて――L-39の引き金を引いた。
銃弾は確かにKV-2の前面装甲に直撃した筈だった――が、それは呆気なく弾き飛ばされていた。それに恐怖を覚えた上官はハッキネンの肩を叩き、他の部下を呼んでトーチカを離れた。その刹那、152mm榴弾砲が咆哮し、絶大な火力が木製の建物をウエハースのごとく吹き飛ばした。ハッキネンはとっさに地面へ伏せる。怪物だ、まさしく怪物だ。
「シュトゥーカ……若しくは第2師団の砲兵の力が要るだろうな」
上官はKV-2の巨体を見て、告げた。「よしハッキネン、撤退するぞ」
ハッキネン一等兵がラハティL-39対戦車銃を4人掛かりで抱えて逃げる中、第2SS装甲師団第2装甲連隊所属の第2中隊は、ソ連第20重戦車旅団第91戦車大隊と対峙した。第91戦車大隊はそれまで、T-26の1輌を駄目にしたフィンランド兵を追っていたが、彼等は森に消えてしまった。タンクデサント――戦車跨乗――でT-26などに搭乗していたソ連軍兵士は素早く降り、大多数によって森に消えたフィンランド兵を始末してやろうと意気込んでいたが、突如として現れた16輌のドイツ軍戦車を前に凍り付いた。見る間に機銃や戦車砲の雨が降り注ぎ、数名が瞬時に死亡した。
両陣営の戦車は、いわゆる“曲り道”――針葉樹林に囲まれた林道――で対峙することとなった。T-26が猛スピードで突進を始め、金切り声を上げながら右折する。そこでⅣ号戦車の猛攻を受けたのだから堪らない。T-26はたちまち炎上してしまった。
「ディートリッヒ。カンプフ べライトシャフト(戦闘準備)!」
Ⅴ号戦車『パンター』戦車長バルクマンは、射撃手のディートリッヒSS上等兵に命じた。ディートリッヒは顎に吹き出物をつくった若者で、年はまだ18である。ドイツでは大規模な兵士動員が進められており、同時にソ連の蛮行に対処したいという愛国的な若者が志願を続けていた。
「ヤヴォール、ヘルゲフライター!!(了解、伍長殿)」ディートリッヒは叫んだ。砲弾が装填され、ディートリッヒが親指を立てると、バルクマンは頷いた。「フォイア!!(発射)」
けたたましい爆音が空中を切り裂いた。パンターの75mm榴弾はアーチ状の弧を描いて宙を舞い、やがて地球の重力に従ってT-26の車列に吸い込まれた。突然、林の合間を縫って閃光が駆け巡り、爆風と轟音がパンターを包み込んだ。
全てが終わった時、T-26の車列中央にぽっかりとスペースが空き、その辺り一面が血と灰と火の粉まみれになっていた。他の戦車も、甚大な損傷を被っている。パンターの大火力なら当然、と言いたい所だが、その背後にはボフォース37mm対戦車砲を構えるフィンランド軍1個中隊の姿があった。どうやら、森の中に隠れていたようだ。タンクデサントのソ連兵がその姿を恨めしげに睨み、ボロボロのライフルを掲げた。
「ダヴァイ!ダヴァイ!(行け!行け!)」
T-34の砲塔から上半身を出した、いかにも指揮官と思わしき人物が下命する。ソ連兵達はフィンランド兵に敵意剥き出しの視線を浴びせ、続いて指揮官にも一瞥をくれた後、T-26やT-34の車体から降りて――駆け出した。
「ウラーーーーー!!!!」
ソ連兵はぬかるんだ泥道に沿って、怒号にも似た声を上げて駆け続ける。銃剣を前に突き立てはするが、誰もその上に付いている筈の銃口から鉛の凶器を撃ち出そうとはしなかった。瞳孔は開かれていて、喉仏は揺れ続いていた。
「ハッキネン。撃ち方始めッ!!」
針葉樹林に身を隠したハッキネンは、上官の命令に従った。ラハティL-39対戦車銃が咆哮し、20mm対戦車弾が先頭のソ連軍兵士の後頭部を貫いた。ヘルメットが砕け飛び、血の雫が顔を滴り、脳はぐちゃぐちゃに炸裂した。ハッキネンの放った銃弾はなおも止まる事を知らず、およそ奇跡的と言わざるを得ないが、その背後に居た兵士の後頭部を貫いてしまった。
「フォイア!!(発射)」
パンターと第2中隊も砲撃を続行する。T-26が1台、炎を上げて停止し、銃弾の雨が突撃したソ連兵の間を貫いて、彼等に死のワルツを踊らせた。
「トゥルース。ダヴァイ!ダヴァイ!(腰抜けめ。行け!行け!)」
その指揮官の理不尽過ぎる言葉を前に、ソ連兵はやはり答えるしかなかった。負傷者にしても、まだ立ち上がる事が出来る者は容赦なく戦線復帰を命ぜられた。血を流しつつ、彼等は立ち上がる。よろめきながら銃を掲げて、地面の上に2本足で立つ。軍服は真っ赤に濡れそぼっている。顔にも返り血や自分の血がこびり付いていて、涙や汗とともに血の滴が滲み落ちてくるのだ。それがウォッカや寒さで紅潮したソ連軍兵士の顔に、あたかも“血の涙”が流れ落ちているように見せていた。
「ハラショー(素晴らしい)」
パンター車内で一連の光景を目の当たりにしたアイヒンガーSS兵長は、皮肉を込めてロシア語で賞賛した。「イワン共は自分達を何だと思っているんでしょうか」
「君の意見は?」
バルクマンは操縦手たるアイヒンガーに訊いた。
「タコ……ですかね?それも自分の足を食べてしまうような、タチの悪いタコ」アイヒンガーは言った。「ずる賢くって狂暴。時には人間にまで襲ってくるっていいますからね。海底の殺戮マシーンらしいですよ、タコって奴は」
アイヒンガーが講釈に興じていると、前方のKV-2はその巨大な戦車砲を咆哮させ始めていた。バルクマンはそのKV-2に抵抗する第14連隊の面々と、主砲に装填してあった榴散弾をKV-2が発射していく光景をみはった。3発の152mm戦車砲榴弾が、頭上で甲高い音を立て炸裂し、暗い木立の中へおびただしい量の小型散弾を浴びせた。フィンランドの針葉樹林帯で、ソ連兵がフィンランド兵を見つけるのは不可能だったが、これなら広範囲に渡る攻撃が可能であった。
質より量のその攻撃は、確かなものだった。ボフォース37mm対戦車砲に対戦車弾を装填していた兵士が胸部と背中にまともに散弾を食らい、倒れた。辺りが砲煙と血に染まった後、フィンランド軍1個中隊を指揮するヘルッコ・エスケイネン大尉は、別の対戦車砲を用意しろと叫んだ。ボフォース37mmでは無理と判断した彼は“とっておき”を出そうと、肉片や灰や血飛沫を見て決意したのだ。補佐役の少尉がスンマから緊急召集された民兵2名に命じ、ボフォース37mm対戦車砲に覆い被さるようにして死んだ兵士の遺体を運ばせた。
「予備弾を寄こせ!それと50mmの用意を忘れるな!」
エスケイネンは紅く染まったボフォース37mm対戦車砲を構え、前方500m付近で暴れ回るT-26に狙いを定めた。その視界の中には、なおも突撃を続けるソ連兵の姿もある。彼等は鬼の形相でこちらを目指し、猛進していた。
炸裂した152mm榴散弾の鮮紅の閃光と同時に、エスケイネンは引き金を引いた。対戦車砲の発射機構が鈍い摩擦音を立てて点火された瞬間、大音響とともに激しい衝撃がその身に迸るのをエスケイネンは感じた。肩に掛かっていた重みが不意になくなり、ほぼ同時に照準器に捉えていたT-26の像が歪曲した。37mm対戦車砲弾は脆弱なソ連軍製軽戦車の装甲を破壊し、内部爆発を起こさせたのだ。砲塔のハッチがまるで火山の噴火流のごとき炎によって宙に吹き飛ばされ、燃料タンクが最期の悲鳴を上げた。紅色のソ連軍戦車兵は出てくる気配がなく、どうやら車内で死に絶えたようだ。
「大尉、50mm用意出来ました!」
ボフォース37mm対戦車砲を構えていたエスケイネンは、振り返って微笑を漏らした。50mmPaK38対戦車砲は、1941年から実戦配備が始まったドイツ陸軍の新型対戦車砲である。『ドアノッカー』で知られるPaK36の後継で、T-34やKV-1といったソ連陸軍の主力戦車に何とか対処出来るだけの威力を持っていた。
「よし、あの怪物戦車にありったけ撃ち込んでやれ!」
エスケイネンは大声で叫び、KV-2を指差した。相手は間欠泉のように泥を噴き上げ、こちらに向かってきている。それはまさに――小汚い農民を腹の足しにしようと襲い掛かるお伽話の怪物そのものだった。
数分足らずして、PaK38から50mm対戦車砲弾が舞い上がった。一発、また一発、逃げるように飛び立っていく。エスケイネンと中隊の面々はそれをみはった。これこそが最後の希望である。この攻撃が功を奏さなければ、皆肉のミンチと化してしまうだろう。
しかし、着弾地点まで中間に差し掛かった所で突如、KV-2は真っ赤な熱い火の玉となって爆発した。エスケイネンはその光と音に呆然とした。何故だ?肝心の50mm弾は着弾地点の西の端の木立を越えたところで炸裂した。目標地点に命中しなかったのだ。では、誰があの怪物戦車を葬ったのだろうか。
刹那、エスケイネンは右手からこちらに向かって撃ち込まれる銃撃音を聞いた。ソ連兵は散り散りになり、残存のT-26は慌てふためいて後退している。銃撃音の先を見ると、そこには8輌程度で構成されるドイツ軍戦車の姿があった。数秒後、見た事も無いドイツ軍戦車の重厚な主砲が頼もしく吼えて、抵抗を続けていたT-34――指揮官搭乗――の装甲を粉砕した。それに呼応するようにPaK38対戦車砲も吼え、T-34めがけて50mm弾を降らせた。砲弾は後部を穿ち、そのT-34は爆発した。
スンマ地区の攻防戦はEU軍の勝利に終わったが、マンネルヘイム線は以前として崩壊の危機に晒されていた。ソ連軍は大規模な徴兵で得た兵士――総数10万名以上の増援戦力を第7軍に送り込み、その体勢を立て直していたのだ。第7軍が20万の軍勢を手駒に持つ一方、フィンランド軍のカレリア地峡軍は5万名の雑兵しかもっていなかった。しかも弾薬が不足し、食料や水も底を尽き掛けている。確かにEUからの救援物資は無いわけではなかったのだが、前線まで持っていく補給線が無かったのである。しかも、それは同時に再編成や物資補給のために後退したEU各国軍の前線到着を遅らせる要因にもなる。
こうして、孤立無援のフィンランド軍の数週間の戦いが――幕を開けた。
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