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プロローグ

 “阿吽の呼吸でボケとツッコミが繰り出される正統派漫才師、モラトリアム!女芸人という枠を超えた彼女たちはどこへ向かうのか!”

 先日受けた取材が記事になったとのことで、自宅で一人ネット記事を確認する。そこには私たちが話した内容がありのまま纏められていた。自分の意図とは違った形で切り取られることがあるから、言葉には気を付けた方がいいと先輩にはアドバイスをもらっていたが、どうやら今回の編集者さんとは意思疎通がきちんとできたらしい。

 

「……そんなこと言われても。」


 どこへ向かうのかなんて私たちが知りたいくらいだ。やっと最近テレビに出られるようになってきたけど、まだまだ知名度は高くない。

 たくさんの人を笑いで幸せにする、その目標を掲げて私たちはコンビを組んだ。名前はモラトリアム。私たちのネタを見ている間は子どものように無邪気に笑ってほしいという意味を込めている。舞台で漫才やコントをする、その時間を何より大切にしたいという軸だけ持って、あとはがむしゃらに仕事をやりきる毎日だ。

 今年一発目の仕事は有名番組への出演で、しかも内容は面白い若手芸人を発掘するコーナーだった。ありがたいことにそのコーナーに出させていただいてから、テレビの仕事がすごい勢いで増えている。バラエティ番組はもちろん、ある程度有名な大学の出身という学歴があるということでクイズ番組などにも呼ばれるようになってきたところだ。

 いままでも同期や芸歴の近い先輩と比べれば、仕事は多い方だったと思う。さすがに芸人一本で食べてはいけないからバイトはしていたが、事務所の舞台に立たせてもらう機会は断然多かった。新年のテレビ出演が終わってから四月頃にかけてメディア露出が増えたのもそうだが、事務所が運営する数ある劇場の中でも一番広い劇場で漫才を出来るようになり、収入が右肩上がりに上がっていった。八月になった今ではバイトをしなくても、贅沢をしなければ生きていけるくらいには給料が安定して入ってくるようになっている。そして明日もありがたいことに劇場での仕事が待っているのだ。

 記事を読むために手にしていたスマホが振動し、連絡が来たことを通知してくれる。画面上部から降りてきたメッセージは、十六夜の東一徹さんからだった。


『明日、よろしくな。』


 簡潔な文章ではあるけれど、明日舞台が一緒になることに気付いてくれて連絡をくれる細やかさが一徹(いってつ)さんらしい。私もそうだが、一徹さんもそんなにマメな人ではないと思う。それでも連絡をしようと思ってくれるくらいには、可愛がっている後輩になれたことが嬉しくて。返事を考えながら、頬がにやけてしまうのだ。

 恋愛ではない。でもただの後輩よりは近くに入れるこの関係が、私はとても気に入っている。

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