表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アトラ=リコンフィグ  作者: ホウノ タイガ
8/53

第二章 躯素の誓い⑥

今日も覗いてくださってありがとうございます。

暇つぶしにでも、気軽に読んでいってくださいね。

第六節 反旗の火蓋


夜が明ける。


ノルディアの空に、煙と緊張が混じり合う。


貴族街では、豪奢な屋敷に招かれた上流・中流貴族たちが、トワのもたらす「代理人からの新命令」に警戒と期待を膨らませていた。


一方、ゼクトはリーネと共に火薬の仕込みを完了。屋敷の地下に設けられた兵器倉庫に、時限起爆の細工を終えていた。


アトラは、祠で手に入れた“ちからのグリフピース”を掌に握りしめながら、会場のすぐ近くで最終の配置を確認していた。



やがて、宴が始まる。


トワの振る舞いは貴族たちの虚栄心を巧みにくすぐり、疑念を飲み込ませていく。


そして。


──ドン。


轟音と共に火柱が上がる。会場の外からの爆発音に、貴族たちが次々と席を立つ。


「……何だ今の!」


「兵器庫だ、襲撃か!?」


騒然とする宴会場に、ゼクトの声が響く。


「中立派、挙兵せよ! 敵は貴族派のみだ!」


貴族兵たちは剣を抜くが、すでに中立派の兵士たち340名は場内外を包囲していた。ゼクトと反貴族派13名が前線に立ち、交戦が始まる。


その混乱の中──アトラが現れる。


「来たか……アトラ!」


「遅れてごめん。……行こう」


彼は“ちからのグリフピース”を指先に浮かべ、地面に拳を叩きつけるようにして起動する。


──ゴウン!


次の瞬間、敵兵の前方にあった石畳が大きく隆起し、即席のバリケードを形成。続けて、アトラが叫ぶ。


「通さない!」


その拳が振り下ろされるたび、重力が暴れるような衝撃波が走る。

大地に圧が加わり、敵の足元を崩し、武器を弾き、空気すら振動させる。


ゼクト「お前の……それが、グリフの“ちから”か!?」


アトラ「まだ使いこなせてるわけじゃない。けど……十分戦えるよ」


アトラの一撃は、熟練の騎士にも匹敵する威圧力を持ち、味方の士気を高めていった。



貴族派の軍勢は数で圧倒され、屋敷を捨てて郊外の森へと撤退していく。


だが──そこに広がっていたのは、全焼した屋敷と焦げた穀倉だった。


絶望した貴族たちは、もはや市内にも戻れず、森林地帯へと姿を消す。


アトラはそれを追わず、剣を収めた。


「追撃はしない」


トワ「どうして?」


アトラ「倒すべき相手は、もう“倒れてる”。」



そして、森の中。


逃げ込んだ貴族たちは、闇の中に立つ黒衣の男の姿を見た。


男は無表情のまま、ただ彼らを見下ろす。


「……グリフの解析もせず、力の本質も見ず。そんな“出来損ない”がこの世界を穢すのは、滑稽ですね」


指が鳴らされる。


数秒後──悲鳴が森の奥に消えていった。


男の姿はすでにない。


──それが、“NOMA”という存在の痕跡であることに、アトラたちはまだ気づかない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ