第五章 揺れる天秤14
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第14節【夜の誓い、そして構連】
夜の風が、廃宿屋の柱をわずかに鳴らす。
月明かりが途切れ途切れに差し込み、地面に淡い光と影を描いていた。
アトラは屋外の焚き火のそばに一人腰を下ろしていた。
薪がはぜる音だけが、静寂の中にあった。
そこへ、トワ、ゼクト、リウネ、エリシアが足音も立てずに現れる。
彼らは火を囲むように立ち、誰からともなく、静かにアトラの前で膝をついた。
それは、冗談や気まぐれではない。
戦いを越えた者同士の、深い覚悟を示す儀式だった。
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「この夜を越えた今こそ、言葉にせねばならぬと思った」
最初に声を発したのはゼクト。
炎の赤が、真剣な瞳をゆらりと照らす。
「我が命の限り、貴殿と共に戦う。
剣を抜き、盾となり、道を切り拓く覚悟をここに示す。
この身が尽きるまで、誓いは変わらぬと――今、言葉にして残す」
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トワが静かに膝を進め、一歩分だけ近づく。
「望むものは少ない。ただ、守りたいものがある。
そのためにこの身を差し出すのなら、それもまた一つの選択。
あなたの理と共に歩む覚悟、ここにあり」
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リウネは一瞬きょとんとしたが、慌てて姿勢を正し、ぴしっと膝をついた。
「僕も……うん。世界は広くて、怖くて、でも――
アトラと一緒なら、きっとどこへでも行ける。
この身と力を、アトラの意志に捧げる。未来へ、共に」
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エリシアは胸に手を当て、目を閉じる。
ゆっくりと呼吸を整え、静かに語った。
「過ちも、弱さも、全てを知った上で申し上げます。
あなた様の信じる世界に、私も居させてください。
清き願いと共に、この心を捧げます。」
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アトラは仲間たちを見渡し、焚き火の熱よりもあたたかいものを感じていた。
胸の奥から、決意が溢れる。
「この誓いを無駄にすることはない。
どんな敵が来ようと――共に在る限り、必ず進む」
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しばらく、誰もが火の揺らめきを見つめていた。
やがて、トワがぽつりと呟く。
「そういえば、“構連”って何? あの男が言ってたけど、よくわからないままで……」
「やっぱり知らなかったか」
ゼクトが肩をすくめる。
「“構連”は“世界構造連合”の略称だ。
構造式の異常や破損を監視・修復する組織だった。
でも今は武装組織として、異形や野獣、秩序の乱れを力で正すようになってる」
「聞いたことないな……」
アトラが目を細めると、エリシアが補足する。
「記録として残すことも、話すことも制限されている組織です。
神殿や一部の貴族は知っていますが、一般には知られないままです」
「ふーん……なんか名前がもう、おいしくなさそう」
リウネが口を尖らせると、重くなりかけた空気が和らいだ。
ゼクトとトワも笑いを堪えきれず、アトラもふっと肩の力を抜いた。
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夜の静寂のなか、五人と一匹の影が、焚き火の周囲に深く刻まれていた。
天秤の意志とともに、ここに確かなる絆が結ばれたのだった。
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