表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アトラ=リコンフィグ  作者: ホウノ タイガ
46/72

第五章 揺れる天秤13

今日も覗いてくださってありがとうございます。

暇つぶしにでも、気軽に読んでいってくださいね。

第13節【目覚めと力の共有】




 翌朝、廃宿屋の裏手――草地にて。

 トワが腕を組んでアトラを見据える。


「じゃあ、確認だけど……あれが“契約”ってやつだったの?」


 アトラは頷く。


「うん。あれは“命を賭けて共に戦う”という、意志の確認。

 それだけで何かが変わるわけじゃない。けど――」


 そう言って、アトラは皆に視線を向ける。


「僕はその意志に応えたかった。だから、“コード”を付与した。

 僕の力を、信頼を超えて“共有”する手段として」



 ゼクトが腕を振って肩を回す。


「つまり、俺たちにもアトラの使ってた力が使えるってわけか」


「そのはず。まだ調整段階だけど……実験していいよ。暴走しない程度にね」


「熊と鹿の時みたいにな?」


 リウネがにこりと笑うと、アトラは照れくさそうに頷いた。



 トワは小さく息を吸い、目を閉じて集中する。

 意識をアトラの隣へと向け――一歩、踏み出す。


 その瞬間、風が逆巻くように流れ、彼女の姿がふっとかき消えた。


 気づけば、彼女はアトラの隣に立っていた。


「“いち”のグリフ、成功ね。思ったより簡単」


「すごい……距離も正確だし、反動も少ないね」



 続けてゼクトが腰を落とし、丸太を片手で持ち上げた。

 そして、軽く振るだけでそれが真っ二つに割れる。


「“ちから”のグリフ。すげぇなこれ。力入れてる感覚もねぇのに」


「身体の中に力を巡らせる感じかな。慣れればもっと繊細に使えるよ」



 エリシアは静かに右手を差し出す。

 淡い光が指先に宿ると、そっとゼクトの背へ手をかざした。


「……これ、“きおく”のグリフ、だと思います」


 一瞬、ゼクトの脳裏に倒れかけたエリシアを庇った記憶が流れ込んだ。


「わっ、ちょ、やめろやめろ! 恥ずかしいやつは見んな!」


「でも……かっこよかったです」


 エリシアが微笑むと、ゼクトは赤くなって顔をそらした。



 リウネは小さく手を動かすと、彼そっくりの影が一体、ふわりと浮かび上がった。


 本体のリウネがぴょんと跳ねてアトラの膝に着地する一方で、

 幻影のリウネはトワの膝に、くすぐったそうに丸まる。


「僕も、ちゃんとできたっぽい。こっちは幻影ね」




 しばらくして、アトラはふと真顔になり、少し声を低くした。


「……ひとつ、ちゃんと話しておく。

 この力は“僕が源”なんだ。僕が意識を失えば、みんなはコードを使えなくなる。

 それから――全員が全部を同時に使うと、今の僕では負荷に耐えきれない。やりすぎると、倒れる」


 ゼクトが目を細める。

「……どれくらい、ヤバいんだ?」


「熊と鹿、20頭に同時にコードを使わせて喧嘩させたら――気がついたら夕方で、全然動けなかった」


 一同、絶句。


 ただ一人、リウネだけがあきれたようにしっぽを揺らしていた。

 その“実験”に付き合っていたのは、他でもないリウネ自身だった。


 静寂の中、ゼクトがつぶやく。


「お前……そんな実験、いつしてたんだ……」


 ゼクトの呆れた声に、アトラはにっこりと笑って返した。

「これでも、念入りに準備してきたつもりだよ」


 冗談めいた空気に、少しだけ笑いがこぼれる。

 けれど、その場にふっと静けさが戻る。


 誰かが言葉を探すように口を開きかけ――

 代わりに、トワがそっと声を落とした。


「……ねぇ、みんな。アトラが、どれだけ努力してたか……本当は、気づいてた」


 その声に、皆が彼女を見る。


「私たちが不安で塞ぎ込んでた間、アトラはずっと動いてた。

 森の奥で、一人で何かを確かめて……何度も、何度も。

 あの夜、私は眠れなくて――たまたま見てしまったの」


 アトラは驚いたようにトワを見るが、すぐに目を逸らし、焚き火を見つめる。


「……僕は、ただ……もう後悔したくなかっただけ」


 その背に、誰もが視線を重ねる。


「――本当に、ありがとう。信じてくれて」


 その言葉は、焚き火の揺らぎに溶けて、じんわりと夜を包んだ。

 誰も声を発さなかったが、その沈黙こそが――確かな頷きだった。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ