第四章 時をなぞる者たち⑨
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第九節 「目覚めと再起動」
朝霧がまだ森の奥に残る頃、アトラは目を覚ました。
静かな空。野営地には微かに火の名残が残っていて、トワが鍋に水を入れていた。
「おはよう、アトラ。……ちゃんと、寝られた?」
「うん。ありがとう、トワ」
横を見ると、リウネがアトラの寝袋の端で小さく丸くなっていた。
小さな寝息をたてながら、時おりしっぽがぴくりと揺れる。
「……かわいいな」
思わず笑みがこぼれる。
昨夜のやりとりを思い出すと、胸の奥がじんとあたたかくなった。
やがて、リウネもふわっと目を覚まし、欠伸と共にのそりと起き上がった。
「おはよう、アトラ。……昨日、ありがとう」
「ううん。こちらこそ。……大事なことを教えてくれて、ありがとう」
ふたりのやりとりを、少し離れた場所からトワがそっと見守っていた。
エリシアとゼクトはまだ眠っているようだった。
アトラは荷物をまとめながら、ふと思いついたようにリウネに問いかける。
「ねえ、リウ。昨日話してた“現在進行中のエラー”……森の中にまだ残ってるんだよね?」
リウネは頷いた。
「うん。あの“ながれ”の本体を直したとき、コードはすごく綺麗になった。……でもね、全体じゃなかった。」
「そこを修正しないと、またあんなことが起こるかもしれない……?」
「ううん。“ああいう”変なコードは、もう出てこないと思う。……でも、ふつうのエラーはまだある。森の中、まだちょっとだけ、揺れてる」
「普通のエラー……」
「うん。どこかで木の時間がずれてたり、花が急に散っちゃったり。そういうの。ちゃんと見つけて、直さないと」
アトラは頷いた。
「じゃあ、僕たちも一緒に行こう」
アトラはそう言って立ち上がり、肩に鞄をかけた。
トワが軽く伸びをしながら近づいてくる。
「ん。じゃあ今日は森の中、もう少し踏み込むってことでいいのね?」
「うん。まだ、終わってないから」
リウネもぴょこんと跳ねるように立ち上がり、しっぽをピンと立てた。
「準備できたら、案内するね。きっと近い場所だと思う」
陽が昇り、森の影がすこしずつ後ろに伸びていく。
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