第四章 時をなぞる者たち③
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第三節 「式のほころびと、小さな来訪者」
朝露に濡れた森の中、ほんのり開けた小さな花畑に、アトラたちは足を踏み入れた。
けれど、その一角。
花々が咲き誇る中に、不自然にぽっかりと空いた空間があった。
「……枯れてる?」
ゼクトが眉をひそめて言う。
円を描くように、一帯の花々だけが茶色く干からび、まるで時間が急に進んで朽ちたような有様だった。
エリシアがそっとしゃがみ、指先で枯れた花に触れる。
柔らかく、けれど少し眉をひそめながら口を開いた。
「……不思議ですわね。自然に枯れたとは思えません。アトラ、何かお気づきですか?」
アトラは少し考えるように空を見上げた後、低く返す。
「コードが……崩れてる。式が、うまく繋がってないんだ」
草むらの向こう、枯れた花にアトラが触れた瞬間――
ぴょん、と小さな影が跳び出した。
それは、金色の毛並みを持つ、丸くて小さな獣。
猫にも似ているが、どこか違う。尾は長く、首元にはふわふわとした雲のようなものが浮かんでいた。
突然の出現に、ゼクトがわずかに身構える。
トワは目を細め、エリシアは「あら……」と小さく声を漏らす。
だが、アトラはただその瞳を見つめた。
「……君は?」
問いかけに、返事は口からではなかった。
声のようで声でない、やわらかな響きが、アトラの中に届く。
「リウネだよ」
一瞬、空気がふるえたような気がした。
アトラは目を見開き、ほんの少し微笑んだ。
「……話せるんだ」
「うん。でも、ことばはうまく出ないから、ここで話すの」
リウネは自分の頭をかわいい前足でとんとん叩いた。
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