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新たな旅立ち

 人狼が娘を背中に乗せて、城下町の近くに到着した。

娘はキャラバンが遺したわずかな食料や資金を調達し、荷物としてまとめていた。


「確かこの町には孤児院があったはずだ。まずはそこを探し出し、当てにするといい。いずれきっとお前をもらいに来る家族が現れるはずだ」


「......ありがとうございます」


 娘は丁寧に礼をいう。


「......娘よ」


 人狼は娘の腰と両足を抱きながら静かに下ろす。


「俺は生きる意味を見つけられると思うか?」


 人狼と娘はしばらく視線を交わす。


「......わかりません」


 娘は静かに首を振った。


「ですがただ生きるのではなく、人として生きようとすることが大切なのだと思います」


 そして娘はゆっくりと歩み始めた。昇ったばかりの太陽に照らされながら、陽射しに溶け込むように火影となって消えていく。


「娘よぉッ!!」


 人狼が大声を上げる。


「もし何かあれば、夜に3度口笛を吹いてくれ! 必ずお前に会いに行く!!」


 娘はピタリと歩みを止める。背中を向けたまま何も言わない。だがやがて一度だけ頷くと、城下町の門へとまた歩き出した。

娘が懸命に門番に、中へ入れてくれるよう説得する声が聞こえてくる。


(あの娘は、俺を呼んでくれるだろうか?)


 遠くなっていく娘の声を聞きながら、人狼はそっと願う。

あの娘が『家族』という生きる意味を見出せたように、自分自身も何か、いま生きる意味を新しく見つけられるような気がした。


 獣である人狼はあの娘を遠くから見守ることしかできない。それでも今まで孤独に人を喰らい続けるだけだった人生に、微かな灯が宿ったように感じられた。


(さて、今日も食料を調達するとしよう。人間以外がいい。久しぶりに人が口にするような食事にありつきたいものだ)


 人狼は静かに町に背を向ける。両手を地面に下ろし、両足を蹴って走り出す。己の故郷である森の奥の村へと姿を消していく。

そして人狼は静かに、あの娘の口笛を待ち続けた。


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