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止めちゃう魔王さま

「数が多いからな。一つ撃てばまぁまぁ誘爆してくれるようだな」


 これは楽でいいかもしれないとアインは気楽な口調で言いながら、次々に空へ向けて光線を放っていく。

 その光線の威力はかなり高いらしく、狙われた爆弾は当然として、その途中の軌道上にあったらしい爆弾も貫いたり掠ったりさせて爆発させてしまうのだ。

 たった一人で、おそらく数十台分の防空火器より高い防空効果を叩きだす魔王の姿に、クロワールは開いた口がふさがらなかった。


「これは、防衛成功しそうですか?」


 クロワールよりはアインのすることに対して耐性を持っていたらしいシオンが上空に次々と生じる爆発を眺めながらそう尋ねたのだが、アインは首を横に振る。


「都市防衛という意味なら、大失敗しているなこれは」


「おや? 失敗されているんですか?」


 見る限り、アインの放つ攻撃は確実に都市に対して行われている爆撃を防いでいるように見えた。


「考えてみろ。俺が使っている魔力だが、今はどこから供給されている?」


「あ……」


 言われてシオンは思い出す。

 元々アインの持つ魔力は不足気味で、それを補うために今回の遠出をしていたのだ。

 そんな状態だというのに、アインが相当な高度に届くだけではなく、狙った爆弾を確実に破壊できる程の威力を持った攻撃を何発も発射できてしまうのは、当然その足りない魔力をどこかから補っているためである。


「この都市……」


「そう言うことだ。この都市から逃げ遅れた奴らから搾り取っている」


 魔力の源とは現状、負の感情から来る瘴気や命そのものである。

 そんなものを魔王に、ごりごりと吸い取られてしまえば被害者はどのようなことになってしまうのか。

 少なくとも命を繋いでおけるとは思えず、アインは防空を行うために都市の住民を食い物にしてしまっているのである。

 これでは都市防衛がなった、とはとても言えない。


「素直に爆撃されてた方がまだ助かったかもしれんな」


「それはナイと思うのデス」


 完全に他人事として言うアインの言葉をクロワールが否定した。


「この手の攻撃が行われた場合。都市の生存者はゼロと言うのが基本デス」


「生存者がいるとその……色々と厄介なことがありますので」


 言いづらそうにしているシオンなのだが、言わんとしているところはアインにも分かる。

 現在行われている攻撃が反則スレスレのものであるならば、話の持って行き方によっては反則だったということにしてしまうのも、それ程難しいことではない。

 生存者がいて、その生存者が警告もなしにいきなり爆撃されたとでも証言すれば、あっという間に灰色が黒へ変わりかねないのだ。

 だからこそ、この手の攻撃が行われた場合は攻撃された地点に生存者というものを残さないようにするわけである。

 ちなみに、逃げ出した者はそれ程厳しくは追いかけられない。

 何故ならそう言った者達は攻撃が始まる前に逃げ出せたからこその生存者なのであり、何を喚かれても攻撃開始時に貴方はそこにいなかったはずだ、と封殺できてしまうからである。


「もしかして。この攻撃が終わった後に確認する奴らが来たりする?」


「通常ならそうですが、今回の場合ですと……爆撃が防がれていますからどうでしょう?」


 自分が指揮官ならばとシオンは考える。

 航宙艦による対地爆撃などと言う命令は断固拒否するであろうが、断り切れないままに指揮を続行するようなことになったのだとすれば、原因不明ながら自軍の爆撃を防ぎ続けている何かがいるような所に、わざわざ確認のための兵を出すだろうか。

 答えは否である。

 そんなどう見ても危険そうな所に、自分の部下を差し向けることは、むざむざ死にに行かせることと大差ないようにシオンには思えた。

 それをアインへ伝えると、アインの掌から放たれていた光線がぴたりと止んだ。


「と言うことは、無理に全弾防ごうと思わない方がいいんだな」


「え?」


「ある程度、この爆撃が成功してくれないと。確認に来る奴らが来なくなってしまうと言うのだろ?」


「それは……」


 シオンは返答に困った。

 確かにアインの言う通りではあるのだが、それを認めてしまうとどうなるのか。

 答えは轟音と共に都市の端の方で吹き飛んだビルがそれだ。

 対空防御がなくなれば、都市には爆弾が降り注ぎ放題になる。

 そしてその都市の中にいるシオン達は、その爆撃に晒され続けることになるのだ。


「私達、死んじゃいませんか?」


 唐突に対空攻撃が止んだせいで、防空能力に限界が来たとでも判断されたのか、爆撃の勢いが増してきたようにシオンには思えた。

 邪魔されることのなくなった爆弾が次々に建物や地表へと突き刺さり、真っ赤な爆炎と爆風とが都市を破壊し始める。


「爆弾を撃ち落とすより、爆発を防ぐ方が楽だぞ」


「それはそうかもしれませんが」


 衛星軌道上から投下される爆弾を、何かしらの方法で撃墜することは難しい。

 落ちてくる距離と比較して、落ちてくる物自体が非常に小さい物であるし、さらにその落下速度はとんでもないものになるからだ。

 それを狙い撃つという芸当がいかに難しいものであるのかは、誰でも容易に理解できるものだろう。

 それに対して行われた爆撃から身を守る方法は、何かしらのとても固い盾のようなもので、爆圧と爆風、爆炎を防ぐことができればいい。

 さらに音も防ぐことができれば完璧ではあるが、それができなかったとしても行為としての難易度は撃墜に比べれば格段に下がる。


「鼓膜が破れません?」


「魔王の作る防御結界だぞ? 一定以上の音量を遮断することなど簡単だ」


 呆れるくらいに高性能な結界である。


「爆撃の真っただ中で、爆撃が終わるまで待機デスか?」


「滅多に見れない光景が見れそうではありますね……」


 普通、爆撃の最中にその効果範囲内にいれば、大概は死ぬ。

 だから死ぬことなく見物することができる爆撃中の光景は、確かに滅多に見れない光景ではある。


「資料映像として記録しておくデスか?」


「見ても誰も信じてくれそうにないですし、CGだろうとか言われそうですね。ですが一応録画はしておきましょうか」


 シオンにそう言われてクロワールは、エプロンドレスのポケットをごそごそと漁ると、よいしょとばかりに小型のカメラを引っ張り出したのだった。

面白いなとか、もっと書けなどと思われましたら。


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