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戸惑う魔王さま

 アインがちらりと聞いた封印の間という場所は、聞けばシオンが住んでいる館の地下部分に位置しているようで、いつまでもそこで立ち話をしているというのもよくないからとシオンはまず場所を移すことを提案する。


「構わないが、このアイアンゴーレム達はどうするんだ?」


 自分が置かれている状況への説明も必要ではあったが、それよりもアインの興味はシオンが引き連れて来たアイアンゴーレム達に向いていた。

 何せ人語を扱うゴーレムである。

 さぞや目新しい技術が組み込まれているのだろうと気を逸らせるアインへシオンは怪訝そうな顔を向けた。


「ゴーレム、ですか?」


「違うのか?」


 アインが指さした人型を見て、シオンはなんとなく納得したような顔をする。


「陛下、これはゴーレムではないです。中に人が入って動かしています」


「人が入ってるのか」


 道理で人語を解する訳である。

 とは言え、人が入って動かす人形などアインが眠る前には存在していなかったような代物だ。

 興味深そうに眺めるアインに、シオンは少しだけ顔を赤らめつつ再度アインへ移動を提案する。

 ここでアインは自分がほぼ裸であり、その姿を白日の下に晒してしまっているという事実に気が付いた。


「移動もいいが服をくれ。見られて困るような代物じゃないが、見せびらかしたいというわけでもない」


「はい、その。えぇっと……すぐにご用意します」


「そんなにチラチラ見なくとも、見たいのであればガン見してくれて構わないぞ? 魔王の裸なんぞそうそう見られてるものでもないだろうし」


「そ、それはそうかもしれませんが。乙女の身としてはちょっとガン見は……」


 さらに顔を赤らめて、しどろもどろになるシオンを見てアインは、本当に自分が知っているシオンと目の前のシオンとは別人なのだなと認識する。

 アインの知るシオンならば、この程度のことで顔を赤らめるようなことはなかっただろうし、見て良しと許可を出せば遠慮なくガン見してくるような女性だったからだ。

 何となく気まずい気分になるアインに気付いたシオンが尋ねる。


「陛下、どうかされましたか?」


「何でもない。案内を頼めるか?」


 自分が寝ていたのは魔王城の玉座であったはずなのだが、起きてみればシオンの館の地下にいてしまっており、どこへどう動いていいやらアインには全く分からない。

 そんなアインをシオンはまず地下から地上へと案内し、部屋へ通すとすぐに使用人達に指示を出して男性用の衣服一式を用意させた。

 その用意が整うまでの間に、シオンはアインに風呂を勧める。


「身の回りの世話を行う者は……」


「不要だ。風呂くらい一人で入れる」


「そうですか? ではその、周囲の物にはできるだけ触れないようにお願いしたく」


 妙な注文をつけるものだなと思いつつ、案内された浴場へ入ってみて、アインはすぐにシオンが何を心配していたのかということを理解した。

 広い浴場の湯舟にはたっぷりと湯が湛えられていたものの、体や髪を洗うのに必要な物がどこにあって、どうすれば使えるようになるのかまるで分からなかったのである。


「これは……」


「はい、メイド部隊突入!」


 こうなることを見越していたのか、浴場の外で待機していたらしいシオンの号令一下、一目見ただけでメイドなのだなと分かる格好をした数人の女性が浴場へ突入。

 あれよあれよと言う間にアインの体中を泡で洗い流し、髪を洗った上で適当に切られたそれを改めて綺麗に整え、入って来たのと同じ慌ただしさでもって浴場から退場していった。


「えぇっと……洗い方は終わりましたので湯船で体を休めて頂いて、タオルと着替えは置いておきますので」


「お前、いたのか」


 メイド達が去っていった後、脱衣所から浴室へと顔を出したシオンにアインが呆れたように言うと、シオンは顔を赤くしつつもはっきりと言った。


「雇用主として、メイド達に何かあっては困りますから」


「大したものだ」


 魔王を相手にこのシオンがどれだけのことができるのかは分からないが、下の者に仕事を投げておいて自分だけ安全な場所にいるというような真似をしないのは単純にえらいとアインは思う。

 ただ、自分の扱いが危険物扱いなのはどうなのだろうかとも思ってしまった。

 魔王だから仕方がないと理解はするものの、気分で誰かを害するようなことは少なくとも配下の者相手にしたことはないつもりである。


「その辺、知らないのか」


 自分の知るシオンと、今のシオンとは別人であり、別人であるならばアインがどんな魔王であったのかということを知らなくとも仕方がない。

 魔王という言葉のイメージだけで考えたのであれば、気分次第で無数の者を殺害するような真似をするかもしれない、と考えられても無理はなかった。


「俺、本当にどれだけ寝ていたと言うんだ?」


 使い方の分からない浴室一つ見ても、自分が使っていた物とはあまりにも違い過ぎた。

 いかに魔王と呼ばれていても、一人で風呂に入れないわけが本来ならばないのだ。

 しかし、シオンに用意された浴室ではアインは何一つできなかったのである。

 一体これはどういうことなのかということは後でシオンに聞いてみる以外なく、とりあえずアインは用意された布で体を拭い、置いてあった衣服を身に着けた。

 服の方はアインでも着方が分かる白のシャツと紺色のズボン。

 これに下着の上下と靴下が用意されており、これらには特に変わったこともなくアイン一人で問題なく身に着けることができた。

 衣服の身に着け方まで分からなくなっていたら、年端の行かない子供の様に先程のメイド達に着せてもらわなければならなかったのだろうかと思うと、アインは軽くぞっとしてしまう。

 とりあえず身支度を整えて、さっぱりした気分で鏡を見たアインはそこに映っている自分の姿を見て小さく呻く。

 そこに映っていた自分の姿は、記憶にあるものよりもかなり痩せてやつれており、短く整えられた髪は以前は銀色の輝きを帯びていたのだが、今は漆黒に染まっていたのである。

予約投稿しないと定期的な投稿は難しいが。

予約投稿してしまうと、タイムリーなあとがきは書けない。


それにつけてもPVとか反応とかほしいものです。

とりあえず日曜日なので本日は1回だけ投稿。

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