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釣る魔王さま

 航宙艦魔王城のブリッジにて、アインとシオンがそんな会話をしている間にも事態は進行していく。

 ゆっくりと前進していく魔王城に対し、男爵達の艦隊がゆっくりとではあるが魔王城を包囲するような形に艦隊の配置を変え始めたのだ。


「これは敵対行動と言えるのか?」


「微妙な所ですが……現在位置はまだノワール領内でしょうか?」


 魔王城自体がコープメイン男爵領に入ってしまえば、これは不法侵入になる。

 男爵達は何の憂いもなく魔王城へ攻撃を加えることができてしまう。

 ゆえに操艦を担当しているメイドには、ノワール領から出ないように指示が出されており、この指示はきちんと守られていた。

 これは逆もまた然りで、男爵達の艦隊も境界線ギリギリに陣取っていて、ノワール領内へは踏み込んできていない。

 つまりお互いに、境界線を挟んでにらみ合っている状態で、互いに相手の出方をうかがっているわけであった。


「通常回線で拡散通信を。こちらシオン・ノワール。境界線上に戦力を集結させている理由を問います。指揮官はどなたでしょうか?」


 相手側の指揮官。

 おそらくは今回の件の発案者だと思われるコープメイン男爵が乗っている旗艦が分かれば、その艦と直接通信をすればいい。

 しかしそれが分からないのだ。

 魔王城のように外見からあからさまに普通とは違う形状や装備をしている艦があれば、なんとなくその艦なのではないかと当てをつけることもできた。

 だが、男爵達が用いている艦はミドルシップ級の規格品ばかりで、群を抜いて他と違うものがないのだ。

 これでは旗艦がどれなのか見当もつかない。

 仕方なくシオンは通信相手を特定しない、不特定多数に対する通信方式を選択し、呼びかけることにしたのだ。


「男爵家もピンキリではあるのですが、ほとんどはわざわざ旗艦を改修するような費用がないんですよね」


「色を変えるくらいの自己主張はないのか?」


「無意味じゃないですか。性能がそのままなのに狙われる確率だけ上がるのは損するだけですよ」


「そういう計算ができるなら、なぜお前は名乗った?」


 アインに問われて首を傾げたシオンであったが、無言でサーヤが指し示したレーダー図を見て何が起きているのかを察する。

 あろうことか、男爵領側にいた無数の艦が一斉に前進を開始していたのだ。


「あれ? これはまたどうして?」


 まだ状況の確認を行っているような状態で、いきなり交戦に踏み切れるような状況ではないはずであった。

 しかし実際の状況は、明らかに領地を分けている境界線を踏み越える勢いでもって、男爵達の艦は前進し続けている。


「私、何かやってしまいましたか?」


「まぁやらかしたっぽいな」


 アインがそう言い、サーヤがこくこくと頷いている。


「ただでさえ数で負けている所に、子爵領の最高権力者が乗艦中ですと高らかに教えてしまわれたわけですから」


「奴らからしてみれば、またとない機会に見えるだろうな」


 男爵達からしてみれば、まともに正面から戦ってみたとしても、負ける要素はほとんどないと思ってしまう状況である。

 しかし子爵の持っている戦力と普通に戦えば、それなりの損害は出てしまう。

 できれば少ない被害でもって事を終わらせてしまいたいと考えているところに、その子爵がのこのことたった一隻の航宙艦でやって来たと言うのだから、男爵達からしてみれば降ってわいたような幸運であるようにしか見えない。

 ここから逃がしてなるものかとばかりに猛然と突っ込んでくるのも当然であった。


「本艦、微速後進」


「了解。本艦微速後進」


 アインの指示をサーヤが復唱し、魔王城がゆっくりと船首を男爵領に向けたまま後進を始める。

 艦の主たる推進機は船尾についており、船首を男爵領に向けたまま後進するのには船体のあちこちについている補助用の推進器しか使うことができない。

 これでは速度を出すことなどできるわけがなかった。

 なぜ回頭しないのかと思うシオンだったが、これにはすぐに自力で答えが出る。

 ラージシップ級の魔王城が回頭するのには、その船体の大きさに見合うだけの時間がかかってしまう。

 対する男爵達の艦のほとんどは全速力で魔王城へ接近してきており、今から回頭をしたのでは男爵達の艦に対し、横腹か船尾をさらすことになってしまうのだ。

 航宙艦は所持する火力を、船首方向に集中させた場合に最大となるように武装が設計されている。

 ラージシップ級の火力ともなればそれは相応に強力なもので、無防備な横腹や船尾を見せるよりは速度が出なくとも後進した方がまだましなのだ。

 ただそれはましというだけのことで、ラージシップ級一隻で、数百隻ものミドルシップ級の航宙艦を相手にできるということでは全くない。

 せいぜいが数隻から十数隻を道連れにするのが関の山で、ならばその十数隻になりたい者は誰だ的な脅しが必要になるのだろうかと考えたシオンだったが、アインはそれとは全く違った行動をとる。


「相手艦の位置は? 境界線を越えたか?」


「現在、先頭が越境中」


「相手艦の射程は?」


「本艦は敵艦の射程外にあります」


「相手艦の全数が越境するか、相手艦の射程に入るかのいずれかで報告を上げろ。それともう一度、通常回線の拡散通信を準備。マイクはシオンに渡せ」


「えっと……?」


 ブリッジ内の集音マイクがシオンに焦点を合わせるのと同時に、メイドの一人が声を上げた。


「相手艦、全数の越境を確認」


「通信開け。シオン、敵艦への交戦通知」


 アインの指示に何を求められているのかを理解したシオンはすぐさま告げる。


「当領内への不法侵入を確認しました。これより貴艦を敵対勢力と認識し、王国法の下、排除行動に移ります」


「認識を敵艦へ改めろ」


 アインの指示により、レーダー上に映っていた光点の全てが敵を示す赤色のアイコンへと変化。

 これにより魔王城一隻対男爵家連合群の戦いが開始されたのであった。

ブクマや評価の方、よろしくお願いします。

ちょっと頭打ち感が出てきました。

でもPVは伸びてるんですよねぇ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今更だが、魔王城を隻で数える時代か……
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