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重役会議とレアの治癒

「さて、シオンとレアは行ったか」


「もう気配はないぜ」


「会議ですわね」


「ちび、察しがいいな」


「バートン!失礼ですわよ!わたくしはちびではなくマリンですわ!」


「2人ともやめろ!一緒にこれからの事を考える手はずだぜ?喧嘩は無しだ」


 マリン・執事のバートン・アッシュ・料理人クック・メイドのメイ、この5人で会議が始まる。


 会議の内容はレアとシオンの幸せな結婚への誘導である。


「わたくしから発言しますわ。お姉さまは元居た領地の領民を心配していましたわ。出来るだけ早くここに移住してもらうのが先決ですわね」


「ゼンキの旦那が戻らねーと領民は動かねーぜ」


「そろそろですわ。今頃おじさまは領地に戻って手はず通り領民を移住させる頃ですの」


「こちらの受け入れ準備は整っている。他には中継地点に食料を運ぶ用意を進めている」


「後は2カ所の連絡と連携ですわね」


「それなら俺がやるぜ」


「アッシュにやってもらうつもりだ。お前は馬よりも速いからな」


「移民の件は問題なさそうですわね」


「うむ、次はシオンとレアにどうやって結婚してもらうかだが、何か案はあるか?」


「シオン様に街を案内してもらう口実でレア様にはデートをしてもらいましょう」


「採用だ。他にあるか?」


「1つ前の議題にあった移民で、中継地点に向かうシオン様の部隊にレア様を同行してもらうのはどうっすか?」


「うむ、良い手だ。道中けがをする者も出るだろう。自然に同行させることが出来る」




 沈黙が始まると、バートンが自身の案を言った。


「他には、毎回治癒の護衛はシオンにして、定期的に2人だけのお茶会をセッティングする予定だ。他に案はあるか?」


 本来は王子であるシオンを護衛するのが普通だが、シオンは並みの兵士が数人束になっても返り討ちにする実力を持っている為、この街でシオンを護衛する必要は無いというのが暗黙のルールとなっている。


「2人でダンスの練習をしてパーティーに行ってもらうのですわ。憧れますわ。わたくしもあと少しで15才の大人ですから」


「いい手だがマリン、お前は頭は良くてもまだまだ子供だろ?せめて13才くらいになってから言ってくれ。まだ10才にもなっていないマリンには早すぎる」


「わたくしは12才ですわ!」


 メイ・クック・バートンが驚愕の表情を浮かべた。


 それを見てアッシュが堪えられないように笑いだす。


「く、くくくくくく」


「……アッシュ、失礼ですわよ」


「く、くくく、す、すまない。ぷくくく」


 マリン以外の全員がつられて笑い出した。


 バートンが笑いながらマリンの頭を撫でた。

「悪かった。マリンはもうすぐ大人だよ」


 マリンがバートンの手を払う。

 バートンに頭を撫でられるのは屈辱なのだ。

 頭を撫でられるのは【ちび】と言われるのと同義。


「バートン!あなたが1番腹が立ちますわ!あなただけは人をおちょくるような顔をしていますわよ」


「そうだが?」


 そうだけど何か?という顔でマリンはさらに不機嫌になった。


「少し休憩だ。バートン、やりすぎだぜ」


「アッシュ、お前は笑いっぱなしだ。まず笑うのをとめてから言ってくれ」


 アッシュの顔を見て、バートン・メイ・クックがまた笑いだした。





 ◇





 その頃、レアとシオンは一緒に街を歩く。


「シオンとお付き合いするなら役に立たないとね」


「治癒は助かるが、レアと結婚したいと思ったのは、レアが治癒士になる前からだ」


 私は不意打ちを食らってドキッとしてしまう。


 治癒関係なく結婚したいと思った?


 私を見てシオンは私の手を握った。


 そして歩みを止めて正面から私を見る。


「レアと結婚したいと思ったのはレアが好きだからだ。政治のしがらみは関係ない。治癒士だからというのも関係ない。小さい頃からずっとレアが好きだった。だからプロポーズした」


 シオンが私の目を見つめて私は動けなくなる。


「わ、分かったわ。恥ずかしいから前を見て歩きましょう」


「そうだな」


 歩こうとすると、周りに人だかりが出来ていた。


 美形の王子様、シオンが居るのだ。


 目立つに決まっている。


「は、早く行きましょう。皆が見ていて恥ずかしいわ」


「そうだな」


 シオンは私を抱き上げて、お姫様抱っこする。


「ふぇ!?」


 私とシオンの周りに風を発生させて、空を飛んで教会に向かった。


 私は不意打ちのようにお姫様抱っこをされて固まってしまう。


「怖いか?」


「そ、それは大丈夫だけど、きゅうにお姫様抱っこをされると、緊張するわ」


 そしてさらに目立ちながら私とシオンは教会の前で降りる。


 地面に下ろしてもらうと耳元で「屋敷からここまで距離が近い。良ければ次も私が風魔法で運ぼう」と少しだけ意地悪な顔で笑った。


「もお!恥ずかしがらせて遊ぶのは良くないわ!」


「すまない。だが、その顔も好きだ」


 駄目だ。


 シオンと2人だけでいると胸がドキドキしっぱなしになる。


 何度も好きと言われたけど、言われるだけで顔が赤くなってしまう。


「さ、さあ、入りましょう!」


 私は真っ赤になった顔を隠すように前を歩いて教会に入った。






 教会にはけが人や病人が集まる。


「ここにいる人に治癒をすればいいのよね?」


「そうだ、頼む」


「分かったわ。私の周りに集まってください!」

 みんな集まってくる。


「そこの方、もう少し詰めてください」


 皆私を中心に集まった。


「エリアヒール!」


 私の周りに光が発生して円状に広がる。


 周りに居る全員を一気に治癒した。


 周りがざわつく。


 シオンが駆け寄る。


「大丈夫か!そんな大魔法を使うなら言ってくれ!倒れないように私が支える!」


「だ、大丈夫よ。たった1回程度なら平気」


 更に周りがざわつく。


 エリアヒールは大魔法。


 治癒士の時点で貴重だが、エリアヒールを使える治癒士はさらに貴重だ。


 それを使いケロッとして、しかも『たった1回程度』と言って済ませたのだ。


「聖女様だ!」


 癒した1人が跪くと、周りも真似をして私に跪く。


「わ、私は普通の治癒士よ。みんな普通にして!」


「レア、それは違う。エリアヒールを1回でも使えればこの国では聖女だ。グレー王国でも同じだと思うが?そしてエリアヒールを使って平気な顔をしているレアは大聖女かもしれない」


「てっきりエリアヒールを使える事は知っていると思っていたわ」


「知らなかった。恐らくグレー王国が隠していたんだろう。バレるとレアが誘拐される恐れもある」


 確かにエリアヒールは高等魔法だと教わったけど、ダイグに怒鳴られてばかりで、凄い事だとは思えなくなっていた?


 でも、シオンの方が凄い。


 さっきはお姫様抱っこされてそれ処じゃなかったけど、無詠唱で風魔法を使い、しかも風魔法を精密操作して私を抱っこして飛んだ。


 これは凄い事なのだ。


 魔法の無詠唱発動と魔法の精密操作はどちらも高等技術。


 並みの風魔法使いなら魔法を詠唱発動させて風の刃を飛ばすのが限界。


 しかしシオンは無詠唱で空を飛んだのだ。


 シオンは全属性の攻撃魔法を操るオールラウンダー、天才なのだ。


「シオンの方が凄いわ。全属性の攻撃魔法に剣術も出来て頭もいいし、優しくてかっこ良くて絵本の中の王子さ……」


 自爆した!


 私絶対変なこと言ってる!


「シオン、まだエリアヒールは使えるからもっとけが人はいないかしら?」


 恥ずかしくなって話題を変える。


「分かった。シスター!けが人を集めてくれ!所でレア」


「どうしたの?」


「レアの話の続きが聞きたい」


「っ~~~~~~~~~~~!」


 今日は真っ赤になってばかり。


 私はシオンから顔を背けた。


「すまない。また意地悪をした」


 後ろからシオンが私の頭を撫でる。


「っ~~~~~~~~~~~!」




 その日から私は【シオン様のフィアンセ】兼【聖女】と呼ばれるようになった。


 こうして私は毎日治癒を行う日課が出来た。


最後までお読み頂きありがとうございます!少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!

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