シオンの領
シオンに告白された次の日には、私は馬車に乗ってシオンが統治する領に向かっていた。
馬車には私とシオン・アッシュ・マリンが乗る。
「ねえ、私シオンの領地に行くって今日聞いたわ。どうして教えてくれなかったの?」
「お姉さまはお疲れでしたわ。気を利かせましたの」
「領地の護衛は?パパは居ないわよね?どこかに出かけて行ったけど?」
「おじさまは貴族の爵位を返上しに行きましたの」
「え?」
「貴族の爵位を返上しますの」
「いやそうじゃなくて。言葉じゃなくて意味が分からないわ。分かるように教えて。私はマリンのように頭が良くないわ」
「そうですわね。説明が必要ですわ」
「うんうん、そうよね」
「全部つながっていますのよ。結論から言いますと、お姉さまがシオン様の領地に向かってそこに住みます。おじさまは爵位を捨てて、シオン様の下で働くのです。私たちは隣国で楽しく暮らしてハッピーエンドですわ!」
ですわって。
マリンのビジョンがあるのだろうが話が飛躍しすぎている。
隣国に住むのは分かるけど、「領地の人はどうなるの?パパが居ないと魔物が増えて危ないわよね?」きっと考えてあると思うけど、不安だ。
「シオン様が冒険者を雇って一定期間村を守ってくれるように手配済みですのよ」
「急すぎるわ」
「急ではありませんの。お姉さまに言ってなかっただけですわ」
「え~!そう言う大事なことはもっと早く知りたかったわ」
そこにアッシュが割って入る。
「レアが知ったら気を使って反対して、話が進まないと思った。だからマリンや俺達で黙って進めたってのもあるぜ。マリンもシオンの執事もかなりの策士だからな」
シオンの左手と言われる執事バートンは高い内政能力と評判な有名人である。
「お姉さまの疲労・お姉さまの気遣い・皆の幸せ、全部を考えた末の苦渋の選択でしたわ」
「マリン、その割には嬉しそうね」
「はっはっは!マリンお嬢様は根っからの策士だぜ。策をめぐらすのが楽しいんだ」
「それに隣国に行くいい機会ですわ。シオン様の治める領地の方が女性に紳士的な方が多いようですわ」
「う~ん、でもずっと冒険者を雇い続ける事は出来ないわよね?置いて来た領地のみんなは大丈夫かな?」
「ふふふ、そこは時間が経てば解決するはずですわ」
「何か企んでるわね~」
マリンのほっぺをぷにぷとつまむ。
私は色々言いながらも旅を楽しんでいた。
こうして楽しい旅は続く。
◇
楽しかったのであっという間にシオンの領地に着いた気がする。
街に入ると街のみんなが並んで出迎えた。
私とシオンは前を歩いてマリンとアッシュが後ろを歩く。
「これパレードみたいね」
「パレードですわ」
「レアとシオンが付き合う記念のパレードだぜ」
え?恥ずかしい。
私とシオンが主役!
マリンとアッシュの方を向くと、2人がニマニマと笑う。
う~!こういうドッキリはやめて欲しいわ。
「レア、大丈夫だ。安心して」
シオンが私の肩を抱く。
っ~~~~~~~~~!
不意打ち。
私はシオンに肩を抱かれて更に恥ずかしくなってくる。
私は両手で顔を抑えたまま歩いた。
きっと顔は真っ赤。
真っ赤なままシオンの屋敷に向かう。
街の中心部にある屋敷に入ると、執事とメイドが出迎えた。
「「お帰りなさいませ!」」
恐らく総出で頭を下げている。
執事と思われる男が勝気な顔でこちらを見つめる。
「では早速、紅茶をご用意いたします」
私・シオン・アッシュ・マリンが部屋に案内されると、メイドがお菓子と紅茶を用意し、メイドは全員部屋を出た。
「あれ?1つ多く紅茶が用意してあるわね?」
「それは俺の席だ」
そう言ってそこに執事が座った。
ブルーの髪とブルーの瞳。
背が高く線が細い。
勝気な表情の執事が座った。
「公の場以外では、素で話すが問題無いよな?」
「ええ、問題無いわ」
「問題ありませんわ」
「俺の名前はバートン・ノースフォレストだ。23才でシオンの左腕って言えば分かるか?」
「あなたがバートン子爵なのね」
シオンの右手がアッシュで主に情報収集や隠密任務、戦闘をこなす。
そして左手と言われるのがバートン。
内政や情報操作の能力ではシオンを超えると言われている。
剣のアッシュとペンのバートンというイメージだ。
こうして3人を見ると皆美形だ。
3人とも女性に人気というのも良く分かる。
「そうだ。あんたがレアで、ちっこいのがマリンか。マリンはテーブルから眼しか出てないが、高い椅子を持ってくるか?」
マリンだけ背が異様に低く、テーブルからちょこんと半分だけ顔を覗かせる。
「結構です!わたくしはもっと大きくなりますわ」
「あ~。マリンに身長の事を言うと怒るから言わないであげてね」
バートンが口角を釣り上げ、やめるとは言わない。
あ、絶対マリンをからかって遊ぶ気だ。
「シオン、料理人と専属メイドだけは紹介しておきたいがいいか?」
「かまわない。レアとマリンは疲れている。呼んで来てくれ」
「すぐ呼んでくる」
バートンはスマートな動きで部屋を出て行った。
「皆、遠慮せず頂こう。紅茶が冷めてしまう」
「連れてきた」
「来るのが早すぎるぜ」
「早くて悪いことは無いだろ。さ、自己紹介を頼む。変に敬語を使わなくていい。いつも通りに話してくれ」
「私はレア様とマリン様専属メイドのメイと言います。よろしくお願いします」
清潔に切り揃えられた前髪と肩にかからない程度の髪の長さ。
清潔感のある印象はメイドそのものだ。
「メイはレアと同じ18才で横に居る料理人の妻だ」
バートンが補足する。
「俺は料理人のクックっすよ。よろしく頼むっす。23才っす」
優しそうで少し太っている。
「よろしくね。私の名前はレア」
「わたくしの名前はマリン、よろしくお願いしますわ」
「所でレア、もし疲れていなければ、シオンに護衛してもらって街のみんなの治癒を頼みたいんだがどうだ?」
「行くわ。でも紅茶を飲んで少し落ち着いてからでいいかしら?」
「かまわない。頼む。シオンもそれでいいか?」
「分かった」
「メイとクックも座って一緒に紅茶を飲め」
「私が紅茶を持ってきますね」
こうして紅茶を飲みつつ話をしたが皆いい人だと思う。
ただ執事のバートンはマリンをからかって遊びそう。
「シオン、そろそろ治癒に行きましょう」
「そうだな。行こう」
シオンが私の手を取ってエスコートする。
う~ん。馴れない。
私とシオンは街のけが人たちの治癒に出かけた。
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