パパは貴族の爵位を返上する
レアの父、ゼンキは早馬を走らせ、王都にたどり着いた。
王への謁見を申し出るとすぐに王が姿を現して、「2人だけで話をしたい」と言って別室に案内された。
「ゼンキ、すまなかった!」
王は別室に入ったとたんに謝る。
そのために別室で2人だけで会った。
王の立場では頭を下げるだけで問題が発生する。
王が頭を下げるだけで側近や大臣が止めに入るのだ。
王だからと何でも自由にできるわけではない。
「レアと一緒にいれば、ダイグは大丈夫だと思った。いや、そう信じたかったのかもしれん。だが結果最悪の形にしてしまった。私が失敗した」
「王、いや、アースト、王の立場でしがらみが多く、うまく動けなかったのは分かっている。責めに来たのではない。爵位を返上しに来たのだ」
王アーストとゼンキは一緒に魔物と闘った友だ。
民と国の将来を思い、第1王子とレアを許嫁にしようと2人で動いたが、貴族の嫉妬を買い、レアの暗殺計画まで浮上し、仕方なく第2王子のダイグを許嫁にした。
2人はダイグの気性の荒さは知っていたが、年を重ね、更にレアと一緒に居ればダイグも丸くなると信じた。
だが学園に入ってからダイグの性格はさらに悪化し、王が激怒してもダイグが行動を見直すことは無かった。
さらにダイグは王への報告を握りつぶし、事態の把握も遅れた。
そこにここ数年の魔物の活性化が重なる。
ゼンキ自身も辺境の地の防衛で手いっぱいとなり、レアの様子を見に行くことが出来なかった。
ゼンキは責任感が強い。
領民を守る為前に出て戦った。
また自身で何もせず、ただ王を責めるほど自分勝手な人間ではないのだ。
「分かった。処理はこちらで進める。南のホワイト王国に行くのか?」
「そうだな」
「ゼンキ、こうなってしまったが、私はダイグを愛していた。変わって欲しいと何度も、う、ぐうう!」
王が号泣する。
ゼンキは王を抱きしめ、そして、城を出ていった。
ゼンキはレアを思う。
「レア、俺は国の為、民の為、レアの思いを犠牲にした。だがもう、俺は貴族ではない」
民の為、国の為に尽くすのが貴族の務め。
だがゼンキは貴族の爵位を返上した。
これはゼンキの覚悟でもあった。
レアとマリン、家族を何よりも優先し、幸せにする覚悟である。
貴族の爵位を手放したゼンキの顔は、長い間抱えていた重荷が無くなり、眉間の皺が薄くなり、希望の色が見えた。
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