↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/36

【シオン視点】シオン・ホワイト

 レアをエスコートして屋敷に戻ると、甘い匂いがする。


「凄い種類のお菓子ね」


 テーブルには5種類のタルトやケーキが並ぶ。


「旦那が張り切りすぎました」

 メイが少しうれしそうに答える。


「新しいキッチンが嬉しくてつい作りすぎたっす」


「座って頂こう」


 子供の泣き声が聞こえる。

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 まるで超音波のようだ。


「アイラが目を覚ましました」


「見てみたいわ」


 レアの言葉にアッシュとバートンの顔が曇った。


「メイ、連れてこれるか?」


「分かりました。連れてきます」

 メイがアイラのもとに向かう。


「暴風のアイラが目覚めたぜ」


「最初に言っておくが食器をアイラの近くに置くのは無しだ。機嫌が悪いと投げつけてくる」


 レアとマリンが「え?」という顔をした。


「本当だ。バートンの話は冗談ではなく、本当の事なんだ」



「連れてきました」

 アイラはメイにおんぶされておとなしくしている。


 今2才らしい。


「思ったよりおとなしいですわね」


「メイがあやせばおとなしくなる」


「わたくしも抱きたいですわ」


 マリンが椅子に座ったままアイラを抱き、おとなしいままのアイラを見て得意げになる。


「やはり殿方に幼子の世話は難しいのですわ。おとなしく抱かれていますわよ」

 その瞬間アイラが椅子の上で立ち上がり、アイラの頭がマリンのあごにクリーンヒットした。


 マリンの様子を見て全員が笑い出す。


「む、難しいですわね」


「私にも抱かせて」


「お姉さま、アイラは難しいですわよ」


「大丈夫、あごには気を付けるわ」

 レアの『あご』という言葉でアッシュがさらに腹を抱えて笑い出す。


「あご、あご、くくくくく、くくくはは」


「アッシュ、上品なレディーであるマリンに失礼だろ?」

 ちゃかすようにそう言いながらバートンも笑う。


「バートンが一番腹が立ちますわ」


「いいから、抱かせて」

 レアは待ちきれないという様にアイラを抱いてテーブルの周りを歩きながらあやす。




「……アイラが、おとなしくなりましたわ」


「他のメイドの子でも駄目だったのに、凄いです」


「やはり俺達殿方にはアイラの世話は難しいか」

 バートンはマリンを見ながら言う。


「バートン!馬鹿にしすぎですわ!」


「くく、やめとけって、バートン、くくく」


「アッシュはツボに入ると駄目っすね」


「しばらく笑ったまま止まりませんよ」


 レアとマリンを見て笑顔になっている自分に気づいた。






 シオンが初めてレアと会った時も、レアはマリンを抱いていた。


 私は王の子として生まれた。


 年の離れた2人の兄は天才だ。


 1番上の兄は内政能力が高く、2番目の兄は戦いの才も指揮官としての才にも恵まれた。


 私は何でもそこそこの器用貧乏。


 優秀な兄が居て王位を継ぐ心配もない。


 ある意味気が楽な立場に居た。


 それでも厳しく育てられた。


 10才までは朝から晩まで勉強と剣や魔法の稽古。


 ホワイト王国の教育方法は変わっている。

 10才になると課外活動が追加される。


 課外活動では外でクワを持って畑を耕したり、王都以外の領地を見て回る。


 最初の課外活動でレアの居る領地に行き、マリンを抱いているレアと会った。


 レアを見てすぐ好きになった。

 優しそうな表情、その美しさ、周りの者への気遣い。

 しかも私が居ない時窓から外にいるレアを見かけたが、メイドへの対応も素晴らしかった。

 メイドの洗濯を手伝い、甘えるマリンをおんぶしながら家事をこなす。


 またここに来たい。

 次の課外活動もここにしたい。


 帰って講師にその話をすると「シオン様が意見を言った」と驚かれる。

 自分の事で意見を言うのが珍しかったようだ。




 その日の内に王に呼ばれた。

「グレー王国のグラスフィールドに行きたいようだな?」


「はい」


「勉強と稽古のノルマをこなし、他の課外活動をこなしたら許可しよう。しっかり励め」





 それからは勉強して剣の稽古と魔法の稽古をした。


 次の貧民街での課外活動が終われば、レアに会いに行ける。


 貧民街の孤児院でアッシュと会う。


 色々あって護衛の名目でアッシュを引き入れた。


 そこで貧民の暮らしを生で見た。


 何度かレアの元に遊びに行くが、気分が晴れない。

 貧民街の事を思い出す。


 貧民は1日に1食すら食べられない日もあるのだ。


 俺は貧民を助けずレアに会いに行くのが苦しくなってきた。


 悩んで悩んで結論を出した。


「アッシュ、王都の貧民街を無くす。その後、レアにプロポーズする。それまではレアと会わない」


「俺は貧民街を無くしたいと言ったが、レアに会いに行かないのは……やりすぎじゃないか?」


「もう決めた。それと、貯めていた小遣いで人を育てる」


「兵士なら貧民街で探してくるぜ」


「それも続けて頼むが、大工や鍛冶師、技能を持った者を育てたい」


「手伝えることがあれば協力するぜ」


 それからは学園に入る前から学園の勉強に手を付け、剣や魔法の稽古を増やした。

 15才で学園に入り、飛び級し、1年で学園を卒業する。


 王族で優秀な者は王都から離れた領地の管理を任される。

 理由は、王都と距離を取る事で兄弟同士の殺し合いの防止の為と、王族に他の領地を任せる事で王族の力を高め、領地を発展させる狙いもあった。


 王族の力が弱く、貴族の力が強すぎると、利権でがんじがらめになるのは北のグレー王国が証明している。


 任されたのは北の領地、人口3000人のノースフォレスト家。


 そこにバートンが居た。


 ノースフォレスト家の領主の地位を受け継ぎ発展させようとしていた。


 最初はシオンを試すような動きをしていたバートンも私に賛同する。


 領地を発展する為の方向性が一緒だったのが良かったようだ。


 貧民を無くすために始めに経済の発展を優先する。

 金が無ければ人を助けることは出来ない。


 2年我慢して領を発展させる為の投資を続けた。


 物流・砂糖・魔物の素材・加工肉・酒、伸ばせる産業は伸ばした。


 領民に雇用が行きわたると貧民を助け始める。


 やっとだ、貧民を雇い入れ、王都の貧民街を無くしたら、レアに告白だ。


 貧民を助ければ何の負い目も無く、好きだと言える。


 そんな矢先、レアとダイグの結婚が決まる。


 遅かった。


 間に合わなかった。


 失敗した。


 レアへの思いを忘れるように必死で領を発展させ続け、『シオン領の奇跡の発展』と言われるまでとなった。


 そしてレアがダイグに婚約破棄され、急いで会いに行くとやつれたレアが居た。

 ダイグに対して怒りがこみ上げる。


 自分の顔が怒りで染まるのを感じ、現実に引き戻される。


 




「ほら~、アイラちゃんはいい子ね~」


「女子力!女子力ですのね!」


 アイラをうまくあやすレアを見てマリンが悔しがる。


 それを見たみんなも笑顔になった。


 笑顔のレアを見つめる。


 今奇跡が起きている。


 笑顔のレアが近くにいるのだ。


 もう離さない。


 打てる手はすべて打つ。

最後までお読み頂きありがとうございます!少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!


カットした裏設定です。


アッシュは王都の貧民街のまともな人間を見抜いて兵士に勧誘して練兵し、レアの故郷から馬を買い付けています。

バートンの両親はシオン領で教師をやって領民に無料で読み書き計算を教えています。

バートンは物流でどこに何を売れば利益が上がるかチェックして輸送部隊を裏で操る役とシオンと協力してすべての内政をやってます。


王都の貧民街を縮小させる事で治安を改善し、王都に食料を安定的に運んだ功績でアッシュは男爵になり、バートンは男爵から子爵になってます。

残念ながら王都の貧民街で盗みを働く者や、やる気の無い者まで助ける事は出来ない為、貧民街はまだ残っています。


シオンは子供の頃から「人を助けたければまず経済を発展させろ」という教育を徹底的に受けます。

(お金が無い状態でがボランティアをするより、お金持ちになり事業の利益から毎年数パーセント寄付して教育を伸ばすほうが人をたくさん助けられます)

シオンはバートンの両親に寄付をして、勉強しに来た者に毎日パンを配り、読み書き計算が出来るようになれば仕事を斡旋し、次の生徒を招き教師を少しずつ増やしています。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。