レアの過去
シオン王子とカシト王子が喧嘩になり、お茶会はすぐに終わった。
私は置物のように固まり、何もできずに座っていただけ。
カシト王子は帰っていき、シオンも仕事で出かけて行った。
というより、みんなに追い出された。
そして残った4人でお茶会をやり直している。
「はあ~。疲れたわ」
「お姉さま、お疲れ様ですわ」
「シオンとカシト王子は大人になってもレアの取り合いをしてるぜ。少しは変わると思ったが、子供の頃のままだ」
「シオンはいつもあんな感じよ」
「「え?」」
私の言葉に全員が驚きの表情を浮かべた。
「どうしたの?」
「まさか!お姉さまはわかっていないのですか?」
「いつものシオンはもっと淡々としている」
「そうか、レアは普段のシオンの様子を知らないぜ」
「え?え?どういうこと?」
「シオン様はお姉さまと居る時以外はもっと落ち着いていますの」
「そうだぜ、レアと居る時だけ、いつもより良く笑ってよく表情が変わる」
「そ、そうなのね」
「お姉さまから見たらお姉さまと居るシオン様以外見る機会はありませんわよね」
「確かにそうだな。盲点だった」
私は落ち着かないままお茶会を終えた。
お茶会を終え、部屋に戻ると、昔の事を思い出す。
故郷の記憶、そしてシオンとの出会い。
私はパパ、ゼンキ・グラスフィールドの子として生まれ、私が生まれてすぐに母が亡くなった。
元々体が弱く、病弱だったらしい。
マリンはパパの弟の子だが、マリンの両親は魔物狩りに出かけ、よくパパが預かったし、パパが魔物狩りに行くときはマリンの両親に世話になった。
私はたまに遊びに来るマリンと遊んだ。
マリンと私がすっかり仲良くなった頃隣国、ホワイト王国からシオンとシオンの兄がやってきた。
シオンの兄が学園に通う前に英雄・ゼンキに会いたいとこの辺境を訪ねてきた。
確か私が8才でシオンが10才の頃だったと思う。
シオンの兄とパパが剣の稽古をしている間、シオンが話しかけてきた。
マリンが私の後ろに隠れる。
「私の名前はシオン・ホワイトだ。よろしく」
口調は固いが、クシャっと笑顔になるシオンの顔にドキッとしたのを覚えている。
「私はレア、レア・グラスフィールドよ。この子はマリン」
「自己紹介は終わった。話をして遊ぼう」
「おねえしゃま、おしっこ」
「その前にマリンをトイレに連れて行ってくるわ」
トイレから戻ると、シオンはパパと兄から頭をくしゃくしゃと撫でられていた。
「ほら、レアが戻ってきた。早く一緒に遊べ。数日しかここにはいられないんだ」
にやにやしながらパパとシオンの兄はシオンを見つめる。
「シオンがあんなに笑顔になるのは初めて見た。よっぽどレアの事を気に入ったようだ。ほら、早く遊んで来い」
私とシオンは子供のようなたわいのない話をした。
お菓子が好きだとか、季節の中で春が好きだとか、そんな何気ない話が楽しい。
あっという間に昼食の時間になった。
時間が流れるのが早い。
昼食をみんなで摂りながら、シオンが兄にからかわれる。
「シオン、今日は元気だな。レアが気に入ったか?」
「気に入った」
シオンはオウム返しのように答える。
私はマリンを抱いて、マリンと一緒に食事を摂る。
マリンの口を拭いたりと忙しいのだ。
「はっはっはっは、シオン、レアばかり見ているぞ!」
「無理もない、レアは可愛い。それに幼子を抱いた女性は美しいものだ」
パパが私を褒める。
「シオンがここまで興味を持ったのは初めてだ。シオン、またここに来るか?」
「来る」
シオンはオウム返しのように答えた。
それから年に数回シオンはここに来るようになった。
私もシオンと会うのが楽しみで、マリンもシオンと仲良くなる。
シオンは遊びに来るたびマリンに本を、私には砂糖をプレゼントした。
私が印象に残っているのは「シオンは凄いわね。全部の攻撃魔法を使って剣も出来てお勉強もできるんでしょ?」といった時の事だ。
「そうだな」
そう言うシオンの顔はどこか困った顔をしていた。
ある日、王とカシト様がこの辺境に訪れたタイミングでシオンもこの地へと訪れた。
その時にはアッシュがシオンの護衛となっていた。
私達は子供だけで部屋に集まった。
「君がゼンキの娘のレアかい?」
「そうです」
私は一礼した。
「普通に話そうじゃないか」
シオンが「私がレアを嫁にもらう」と言って私とカシトの間に割って入った。
「シオン?どうした?」
アッシュがその時驚いていたのを覚えている。
今思えばシオンが感情を表に出すのは珍しかったのだろう。
「シオン、レアはグレー王国の貴族令嬢だよ。結婚するとしたら僕の方さ」
「それはレアが決める事だ」
カシトとシオンが睨み合う。
「おいおい!待て待て、2人とも離れてくれ。王族同士の喧嘩は厄介だ。もうどっちも13才で、子供の喧嘩で済まされる年じゃなくなってるぜ」
アッシュが間に入って仲裁する。
「お姉さまはモテモテですわ。王子でさえもお姉さまの魅力で狂わせてしまうのですね」
小さいマリンの大人の真似のようなセリフに私が笑う。
そこでその場は収まったが、その後カシトとシオンはすぐに帰っていった。
この時、私たちは分かっていなかった。
王子や貴族は『好き』という理由だけで結婚できるわけではない事を。
私たちの結婚は国の為、民の為が優先され、繁栄の歯車でしかないという事を。
その後マリンの両親が魔物との戦いで亡くなりパパが引き取る。
カシト様とシオンは学園に通うようになり、どちらも飛び級で卒業したようだ。
私はその後学園に入るが、私が学園の2年生になる頃カシト様の許嫁になると、私の部屋が滅茶苦茶にされ、私への殺害予告の手紙が届いて、ダイグ様の許嫁になった。
その後、ダイグ王子に怒鳴られ続け、3年生の卒業で私は婚約破棄をされたが、その時の記憶はもう思い出したくもない。
私が今こうしてみんなに囲まれて幸せに暮らしている事実に、奇跡のような違和感を覚えた。
シオンと恋愛が出来るのは奇跡なのだ。
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