許嫁の王子に婚約破棄をされました
2~3万文字程度の短い作品を3作品同時投稿しました。
●1作品目 奇形の鬼娘と言われ鬼からも人からも冷たくされましたが、魔装の錬金術師に拾われ、愛され頼られるようになりました。戻ってこいと脅されても幸せすぎてもう戻れません
●2作品目 【焼却炉の魔術師】と呼ばれ、バカにされながらもごみ焼却のバイトをこなしていたら、嫌がらせでバイトを首になり、何故か王子と仲良くなりパーティーに出席する事になった
●3作品目 許嫁に毎日罵倒された挙句婚約破棄されたら、幼馴染の他国の王子が求婚してきた。
他の作品もチェックしてもらえると嬉しいです。
「お前との婚約を破棄する!」
グレー王国第2王子、ダイグ様は私に婚約破棄を突き付けてきた。
ダイグ王子は黄金に輝く髪とブルーの瞳、美形ではあるが、目つきが鋭く獣のような印象の彼。
お互い18才だが、学園卒業の今になるまで私とは話が合わなかった。
お互いが学園を卒業するパーティーの場で皆に聞こえるよう大声で言うダイグ様を見て、私は確信した。
心底嫌われていると。
ダイグ王子の事が好きなわけではなかった。
それでも婚約相手としてふさわしくあるよう努めてきた。
しかしどんなに頑張っても毎日のように怒鳴られる。
「後ろでこそこそ治癒をしているだけの無能が!」
「黒髪黒目の地味女」
「俺の言う事に意見するな!」
「何故指摘しなかった!気の利かない奴め!」
「たかが男爵家の令嬢ごとき、俺に釣り合うと思うなよ」
「地味顔が!」
とさんざん怒鳴られてきたのだ。
私の落ち込んだ顔を見て王子は口角を釣り上げた。
王子は私を悪者にし、悪役に仕立て上げ、しばらく怒鳴られた。
あまりに身に覚えのない事を言われて途中から泣いてしまい、それからはあまり覚えていない。
最後に「地味で暗くて気の利かない貴様は俺の婚約者としてふさわしくない!もう顔も見たくない!早々に学園の寮から姿を消せ!」と言って王子は締めくくった。
他に想い人が居るわけでもなく、私が嫌で追い出されたのを感じ取った。
そんなに私の事が嫌いだったなんて。
私は涙を流したままパーティー会場を離れた。
今まで頑張って頑張って、それでも怒鳴られる。
こんな卒業パーティーの場で私を貶めるように罵って、婚約破棄までされた。
私は泣きながら少ない荷物をまとめて、領地への帰路についた。
私は貴族と言っても貧乏な男爵家の令嬢。
メイドも付かず、身の回りの片づけはすべて自分でこなし、最低限の護衛と馬を用意され、私自身馬に乗って走る。
馬車など用意してもらえるわけもない。
護衛の男が馬で走りながら声をかける。
「そろそろ休憩しましょうか!?」
「いえ、私は大丈夫です。馬が疲れるまでは走れますよ!」
「いいですね!ではもう少し進みます!」
◇
馬が疲れて休憩すると、4人の剣を装備した男の護衛が私を褒める。
「ここまで馬を乗りこなす令嬢は珍しいです。いえ、初めて見ましたよ」
「私の故郷は南部の辺境で馬の産地ですから。子供でも馬に乗れますよ」
私はドレスではなく、ズボンを履き、少し痛くなった下半身をほぐす。
「さて、食事にしましょう。私が火を起こして全員分作りますね」
「貴族の令嬢にそんなことをさせるわけにはいきませんよ」
「そうです。私は干し肉とパンがありますから」
「私の分を作るのも、5人分作るのも変わりませんから。それに馬に積んだ食材が重くて、もっと軽くしたいんです」
それに私は貴族と言っても辺境の男爵令嬢。
ダイグ王子には田舎者の下級貴族とよくバカにされた。
そこまで私に気を使う必要は無いのだ。
「助かります。それではすぐに薪を集めてきます!」
「よろしくお願いします」
私は水場でシチューを作ってみんなに振舞った。
「美味しいです!ありがとうございます」
「いつもは固いパンと干し肉を水で喉に流し込むだけの食事ですが、外でこんなおいしい食事を取ったのは初めてです」
炊き出しがあるのは長期のキャンプだけなのだ。
「シチューに浸すだけでパンをおいしく食べられます」
私は護衛と仲良くなった。
「これは独り言ですが、ダイグ様は性格に難があり批判的なお方。あまり気にしない方がいいかと」
「そうですよ。それにこんなにきれいで気遣いも出来る令嬢はあまりいません。私の片目だけで見ても十分美しさが伝わってきます」
「私は地味顔とよく言われますから、それに片目と言うのは?」
護衛全員が顔を見合わせた。
「レア様、あなたは美しいです」
「そうです。それに地味顔と言ったのはダイグ様だけでは?」
「おかわいそうに。ダイグ様にひどい扱いを受け続けてきたのですね」
「ダイグ様の事は早く忘れた方がいいかと」
「そ、それより片目と言うのは?」
私は褒められて恥ずかしくなって話を逸らしてしまう。
思えば褒めてもらえたのはいつ以来だろう?
「こいつの左目は、前負傷して視力が無いのです」
「片目が見える内は高価な治癒を受けることも出来ません」
「そうなんですね。少し片目を見せてもらってもいいですか?」
「え?はい」
私は視力の無い片目に手をかざす。
手が光り、治癒の魔法を発動させる。
「ヒール!」
「お、おおお!左目が見える!見えます!」
「す、凄い!希少な治癒魔法!流石レア様!」
「ですが、我らに治療費を払えるだけのお金はありません」
「いりませんよ。何かの縁ですし。それに故郷に帰るまでお世話になりますから」
「聖女!」
「聖女すぎる!」
「気遣いも出来て、美しく、治癒魔法まで使いこなすとは!まさに聖女!」
護衛にとって治癒魔法をただで使ってもらえるのは信じがたい事であった。
だが、ダイグに道具のように扱われてきたレアはその事を自覚していない。
「そ、それよりも他にけがはありませんか?まだまだ魔力はありますよ。いえ、全員に治癒をかけますね」
「エリアヒール!」
「な!希少魔法のさらに高等魔法!エリアヒールか!凄いとは聞いていたが、ここまでとは!」
「レア様を婚約破棄する意味が分からないぜ!」
皆、敬語を忘れて盛り上がる。
護衛がはっとしたように敬語に戻る。
「レア様、ありがとうございます」
「レア様、変な事を言うかもしれませんが、きっと婚約破棄されて良かったんだと思います」
「ダイグ王子は、その、一緒になったら苦しい人生になっていたでしょう」
そうかも、ダイグ様と一緒に居たら私、精神がおかしくなていたわ。
故郷に戻れてよかった。
そうよ。
うん、婚約破棄されて私良かった!
護衛とすっかり打ち解けた私は、色々な事を話した。
学園に居た時より楽しく、充実した帰路となっていた。
「レア様の作る料理が楽しみだ」」
「今出来るわ」
干し肉と小麦粉と塩しかなくなったので、私は小麦と塩を練って枝に巻いて炙る。
私はこの料理が好き。
パンが切れた時はよく庭で作った。
みんなに配る。
「パンよりこっちの方がおいしい!」
「しかし、ダイグ様はレア様を婚約破棄して立場が悪くなるんじゃないか?」
「そうだな、治癒士のレア様との婚約は政治的にも大きな意味を持つ」
治癒士の能力を持った子供が生まれれば国は繁栄する。
魔法の才能は遺伝するのだ。
その為男爵令嬢で貧乏貴族の私でも王の計らいによって無料で学園に通うことが出来たのだ。
男爵令嬢の私がダイグ様の許嫁になれたのもその影響が大きい。
「わ、私は普通よ」
「「違います!」」
護衛の声が揃ったことで全員が笑った。
みんな親切で優しくしてくれる。
笑ったのは久しぶり。
婚約破棄された時は苦しかったけど、今思えば本当に婚約破棄されて良かった。
「レア様、グラスフィールドの領地が見えてきましたよ」
戻れた。
やっと故郷に戻ってこれた。
「ありがとう」
「いえ、これが任務ですし、こちらこそありがとうですよ」
私のお礼にみんなは笑顔で笑って返してくれた。
心が軽い。
護衛の何気ない笑顔にもレアは感動した。
それほどまでにレアはダイグに追い詰められていたのだ。
一方でレアを使い潰すように利用してきたダイグ王子には後で大きなしっぺ返しが起こる。
最後までお読み頂きありがとうございます!少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!