0.『おれ』と『ティナ』のあの頃
「ねえねえ、──。あたし決めたわ!」
「何を決めたの? ティナ」
雪のように真っ白な髪の少女と、腕や脚に包帯を巻いた茶髪の少年が、大きな屋敷の庭に居た。
庭には背の高い木が一本ある。
二人はその下で座りながら、仲良く語り合っていた。
ティナと呼ばれた少女は立ち上がると、不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「ふっふっふ……! 聞いておどろきなさい! あなたは今日から、あたしの従者になるために勉強するのよ!」
「じゅー、しゃ……? それって、この前飲ませてくれたジュースみたいにおいしいの?」
「ぜっ、ぜんぜん違うわよっ!」
首を傾げる少年に、ティナはブンブンと頭を横に振る。
「いーい? 従者っていうのはね、主人のために付き従う人のことを言うのよ」
「……つまり?」
まだ内容を理解出来ていない様子の少年。
それならばと、ティナはもっとストレートに分かりやすく説明しようと決意した。
「つまり! あなたは私と、ずーっと一緒にいるってことよ! このあたしからの誘いを断るだなんて、ぜったい許さないんですからねっ!」
「ティナとおれが、ずっと一緒……?」
その言葉を彼女の口から聞いた時、少年は心の底から思った。
太陽みたいに明るいこの子とずっと一緒に居られるのなら、おれは従者でもジュースでも、何だってしたい──と。