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21 せっかく久しぶりの兄妹会議なので状況を整理する。


「──で、一体全体どうして蓮がレックス様の犬になっているのかな~?」


 ……この時ほど、我が妹が恐ろしいと思ったことはない。

 その顔は般若のごとく、俺の答えを静かに待つ桜。俺は冷や汗をかきながら、桜と目を合わせられなかった。


「あの、なんていうかその、事の発端はレックスと相部屋になったことからで……」

「……レックス?」

「あ、ハイ。あの、レックス()と相部屋になりまして……」


 そろそろ流石に兄妹で話し合おうということで、俺と桜は暇な時間に合流し、久しぶりの兄妹会議を開くことになった。場所は学校の第一校舎(※座学の授業の教室や食堂、図書館などがある一番使用されるメイン校舎)の隅の方にある空き教室だ。ここは掃除もろくにされていないのか埃っぽく、ミイラの置物など気味の悪いものばかり置いてある。故に生徒達は大体ここに近寄らない。桜と俺はある程度辺りを掃除して、そこに放置されていた木箱に座った。灯りは窓から漏れる日光で十分である。

 俺は桜に全てを話した。今までの経緯を。流石に例のHIZAMAKURAの事は殺されそうだから言わなかったけど。それを聞くなり、桜はハンカチで目元を拭いた。


「うう、やっぱりこの世界のレックス様もお父上様からのプレッシャーで苦しまれているのね……なんておいたわしいの……蓮じゃなくて私がお傍にいてあげたい……」

「なぁ桜。ひとまずレックスルートの確認をしていいか? 簡単に流れを説明してくれ」


 桜は頷く。そうして俺にレックスルートのおおまかな流れを教えてくれた。

 要約すると──

 まず①四月に主人公♀がレックスにハンカチを拾ってもらい、一目惚れするという出会いイベント。

 次に②対魔魔法学と薬草学の合同試験でレックスとペアになる主人公。その試験でキメラに襲われるもレックスとどうにか乗り越え、二人は惹かれあい始める。他にも複数イベントあるが割愛。

 ③②の時点でレックスと仲が進展したことによって悪役令嬢リリスに虐げられていた主人公。その後リリスが悪魔を喚し、主人公に怪我を負わせたことによってレックスがリリスを断罪し、退学させる。

 ④婚約者がいなくなったレックスは己の心に正直になり、主人公に告白。そしてハッピーエンド。

 ──となるわけだ。

 桜はレックスルートのシナリオを思い出して、興奮気味に話を続ける。


「──それで、ゲーム上でもレックス様は幼い頃から自分に厳しかった国王様がトラウマになってるの。でもレックス様は国王様が選んだ令嬢じゃなくて自分が恋をした主人公を選ぶことによって初めて国王様に自分の意思を示してみせたってわけ。あとは蓮の言っていた通り、レックス様は働き過ぎ。だからレックスルートでは疲労で倒れたレックス様に主人公が膝枕してあげるイベントがあって、それがもう最高!! 他の人には絶対に見せない子供っぽいレックス様の一面が見れたりするのよ!!」

「!?」


 ──ん? 膝枕? 膝枕って……俺、したよな? 膝枕。レックスに。レックスの子供っぽい一面ってのにも少し覚えがあったりするぞ???


 俺は嫌な予感がした。背中がヒヤリと冷える。


「さ、桜。一応聞いておくぞ。レックス様と主人公の出会いイベントは四月になってるけど実際には?」

「うん。私には何も起こらなかった。蓮はレックス様にベッタリだから分かるだろうけど私はまだレックス様に会ってないよ。でもそれは多分私が既にレックス様にゾッコンだからイベントが起こる必要がなかったからなのかなって思ってはいるけど……。ハンカチイベントの時点ではレックス様は主人公のハンカチは拾ったものの主人公自体を認識はしてなかったみたいだし」

「なるほど。やっぱゲームとはそこら辺ずれてるよな。そもそも主人公が二人いる時点でゲーム通りにはいかないだろう。……つまりその合同授業の試験で桜とレックスがペアになれば、①と②の過程を同時に進むことが出来るわけか」

「一番時期的に近いオディオルートのフラグがきたわけでもないし、他の攻略キャラ達は多分二学年からかそれ以降からしか攻略可能にならなかった。もしゲームのシナリオがまだ働いているのなら今の私はレックス様ルートにいる可能性が一番高いよ。本当にそうなのかは合同授業の試験のペア次第で分かるけど」


 ……そ、そうだよな。桜が多分レックスルートにいる可能性はまだあるよな! もしかして膝枕の件で俺がレックスルートに突入してるんじゃないかと思って冷や汗搔いたわ。でもまぁ普通はそうだろう。俺男だし、ゲームでは男主人公は男キャラルートにはいけないし、当たり前だよな、うん。そういうことにしておこう!


 俺がそう心の中でガッツポーズをしていると突然桜が口をパクパクさせて目を泳がせ始めた。

 何か俺に言いにくいことがあるのだろうか。珍しい……。

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