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麻雀千夜一夜

作者: 山高義浩

20代の頃、

よく一緒に打った


「トオルちゃん」


名前はトオルちゃんなのに、

兎に角弱気一辺倒の男でした。


「リーチ!」


と宣言されるやいなや、

どんな好手牌からでも

現物を抜き取り降参。

                                                    故に上がれる時は、

自分が先に聴牌して

「リーチ」を掛けた場合のみ。


兎に角弱気なんですな

(四暗刻一向聴でも降りる・・)


麻雀は降りてばかりだと

ご承知のとおり勝てない。


百戦錬磨の

オジサン達も


トオルちゃんと

打つときは


普段の

倍くらいの声で


「リーチ!」


「ロン!」


「ツモ!」


その都度、

トオルちゃんは

ビクッ、

ビクッと

反応してしまう。


狼の群れに

突然迷い込んだ

子羊状態ですな。


そして、

トオルちゃんは降りる・・



トオルちゃんとは歳も近く

一緒に飯とか酒とかよく行ったんですが


確かその日も

トオルちゃんの

一人負けの時に交わした会話。



「あ~、今日も負けてもた。

どないしたら麻雀勝てるの?」



「そらぁトオルちゃん、

他人に振り込まんと、

他人より多くアガルことやで」



酒が入ってのこういう会話は

ほとんど幼稚園レベルになりますわなw


「けど俺、フリコミみは少ないで」


「そのかわりトオルちゃんは

アガリも少ないやん」


「けど・・なかなかチャンス手が

来ないねん、ツイてないわ・・」


と酒をグイッと飲み干し

天井を見つめるトオルちゃん。


彼には何が見えてるんだろう・・・


いやいや、

トオルちゃんの抱いてる

チャンス手とは5巡目以内の聴牌か?



それともダブリーのことか?


それは

チャンス手と

言うんじゃない

ツイてると言うんだ。



しか~し、


私は

トオルちゃんよりも

少し麻雀も強くて

歳も少し上だから

冷静に会話を続けていこう。



「トオルちゃん、

チャンスはなぁ、

来るんじゃなくて

掴みにいくもんやで」

「虎穴にいらずんば虎児を得ず、

てっ言うやないか?」



「虎穴?虎児?なにそれ?」



「虎穴は虎の穴で、

虎児はその子供や」


「アハハ、タイガーマスクのことか!

漫画じゃなしに麻雀の話やでw」


こういう時は沈黙に限る。


酒のピッチを上げることに専念する。



そして朝まで延々と

無駄話のオンパレード。


お互い意識朦朧のまま解散。


信号待ち。


お仕事に向かう

サラリーマンとすれ違い、

込み上げる罪悪感と疲労感・・・


皆さんもご経験おありでしょw

徹マン明けの異常な朝日の眩しさ。


でも振り返れば

無駄話のようで

無駄じゃなかったかな。


いつも

降りてばかりの

トオルちゃんに

偉そうに説教してた俺!


ここで行かなきゃ、

いつ行くんだよ!


親のリーチが


何ぼのもんじゃい!!!



「通ればリーチ!」



「ロン!親満!」


乾杯♪


メデタシ、メデタシw


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