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酒と桜と春と
桜を見ながら酒を飲む。たまにこういうのも、悪くないだろう。
「先生また校内飲酒ですか?」
「いいだろ別に。午後に授業無いし、そもそも今日はもう特にやること無いし」
「だからって、学校で飲むのはちょっと……せめて学校の外で飲んでくださいよ」
「屋上だから外だよ」
「ヘリクツ」
「……やっぱりお前か、晴」
「何ですかその言い方。僕じゃ駄目なんですか?」
別に駄目という訳ではない。ただ最近、妙に絡んでき過ぎな気がするのだ。
何でこんな髭の生えたおっさんに構ってくるのだろうか。これじゃまるでBーー
(いやいやいやいや、あいつ健全な男子だった筈だし、そんなことは……)
「先生僕の話聞いてますか?」
「聞いてない。ほら、さっさと教室に戻れ。野郎はおっさんに構うんじゃ……」
酒を一口飲もうとして、唇に触れたのはーーアルミ缶ではなく、晴の唇だった。
「おまっ、何考えてんだ!!」
「先生? 野郎は女の子には使えないんですよ?」
「えっ、お前女子だったのか!?」
「はい、先生のことがとーっても好きな女子ですよ」
マジかよ。
見ていた桜が、優しく花を開いた。春の始まりだ。




