依頼
「加藤、ちょっと事務所まで来い。」
店で店長に声をかけられた。事務所まで呼ばれるのは珍しい事で、だいたいあまり良くない事だった。
女が逃げただとか、客からのクレームだとか、管理不足を指摘される事もあった。
ユウジは自分が何かヘマをしたのかと、最近の自分の行動を遡って考えながら事務所へ向かった。
「お疲れ様です。」
頭を下げると店長と共に幹部の偉方が来ていた。
「おお、加藤来たか、そこ座れ。」
「はい、失礼します。」
ソファに座ると幹部の真鍋がスーツケースをテーブルの上に乱暴に置いた。空けると白い粉の入ったビニールが綺麗に並べられていた。
「お前これ売りさばいて来い。」
プッシャーをやった事は以前あったが、ユウジは驚いていた。デリへルは儲かる商売だから覚せい剤に店が手を出すことはなかったからだ。
「店から売るんですか?」
「ああ、世の中インターネットが流行ってからか、悲しいかな、生の女を抱くよりネット上の女達とよろしくやる男が多くなって来てなぁ。客は固定が付いてるが新規が全く入って来ない。全く嫌なご時世になったもんだぜ。」
確かに以前より赤字が増えたのはユウジも知っていた。
「分かりました。俺から下の奴らに言って売りさばいて来ます。」
「加藤、分かってるだろうが。横流ししたりするじゃねぇぞ?そん時はどうなるかお前が一番分かってるだろ。」
ユウジは以前覚せい剤の横流しをした若い男を袋叩きにして片目を失明させた事がある。あの男も片目だけで済んでラッキーだったとしか言いようがない。覚せい剤が動くという事は億の金が動くという事だ。
「もちろん分かってます。」
「じゃあ任せたぞ、女で商売する時代じゃなくなったのかもなぁ。全く嫌なご時世になったもんだ。」
真鍋が二度同じ言葉を使う時は本当にうんざりしている時だ。